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はむっと

※『蓮キョ☆メロキュン推進!ラブコラボ研究所』参加作品です。


「敦賀さん!ちょっとお時間いいですか?」

大好きな彼女との久しぶりの共演。しかも心地いい緑の中でのロケに、俺の心は知らず知らずのうちにウキウキと弾んでいた。
休憩の合図とともに、息せき切って駆け寄ってくる姿を目にすれば、その気持ちはさらに強くなる。
「もちろん。」
即答した俺に、ほわっと浮かぶ満面の笑顔。
つい抱き締めたくなって、伸ばしかけた腕を必死に抑えた。

付き合い始めて1ヶ月。
この恋は、まだ誰にも内緒だ。
ホントは今すぐ大声で世界中にこのことを公表したいくらいだけど、悲しいことに彼女に許してもらえない。
でも・・・。
そうやってこっそり俺だけを見つめてはにかむ君を見ると、こうして2人だけの秘密を味わうのも、それはそれで悪くないなって思える。
もちろん、ずっとこのままでいる気はないけどね。

「さっき、すごくいいところがあるって教えてもらったんです。」
たしかこっちのはずです、と言いながら、小走りに先を急ぐ君。
木々の緑に包まれて栗色の頭が揺れるたび、艶やかな髪が光を反射して、キラキラと輝いてみえる。
ときおり見える首筋の白さにドキリとさせられて。
振り向いて話しかけられれば、バラ色の唇が俺を誘っているように思えてしまう。
(ホントに重症だな・・・。)
苦笑しながら、後を追いかけた。


先を行く彼女について細い山道に入り、深い緑の中を登るように進む。すると突然、目の前に小さな展望スペースが現れた。
奥は急斜面になっているようで、腰丈くらいの低い手すりが据えられているのが見えた。とたんに、
「ここです!」
ふわりと花が綻ぶような笑顔を俺に向けると、彼女は手すりの方に向かって勢いよく走り出した。

展望スペースといってもたいした整備はされていず、岩がそこかしこに飛び出していたり、枯葉や小枝が降り積もっていたりと、足場はかなり悪い。
足元をまったく気にしない彼女が転んで怪我でもしないかと、はらはらしてしまう。

「こっち、こっちですよ。敦賀さん!」
俺の心配をよそに、無邪気にはしゃぐ君。
その姿に、思わず口許から笑みを零しながら近づくと、次第に俺の目にも彼女が見せようとしたものが見えてきた。
それは・・・どこまでも続くコスモスの花畑。


秋の訪れを告げる早咲きのコスモスが、やわらかな日差しに包まれながら、吹く風にさざめく。その様は、まさに1枚の絵のようだった。
真っ青に澄み切った空の下、見渡す限り広がるピンクの花の絨毯。
ゆるやかな丘陵を覆いつくすように、咲き誇る花々。
そういうものにあまり興味のない俺ですら、思わず感嘆の声をあげてしまうほど美しく完成されている。
ましてや彼女は・・・。

「うわあ~~、キレイ!すごい、すごいです!敦賀さん!みてみて、ほらっ!」

歓声を上げながら、手すりによじのぼるようにして大きく身を乗り出し、眼前の景色に夢中になっていた。
そんな子どもみたいな仕草も可愛くてたまらない。

「来てよかった、ですね。」

薄桃色の地平線を背景に不意に振り向いた笑顔は、それはもう眩いほどに生き生きと輝いていて・・・。俺は目を細めて見惚れてしまう。
そのとき―――。

!!!

あまりにも夢中になりすぎたのか、乗り出し過ぎた彼女の身体がぐらりと大きく傾いだ。
(いけないっ!)
ふらついた身体を支えようと、とっさに腰を掴みぐっと引き寄せる。

ぽふっ

反動で、彼女の身体が丸ごとどさりと、勢いよく俺の胸に飛び込んできた。
突然かかる体重に一瞬バランスを崩しそうになったけれど、両足にぐっと力を込めてなんとか踏みとどまる。

身体中に感じる、やわらかな感触と優しい体温。
ふわりと立ち上る薄いシトラスの香り。彼女の・・・匂い。
それだけで、心臓が半鐘を打ち始める。
気づけば俺は、彼女の身体を後ろから抱き締めるように抱え込んでいた。

「ほら、はしゃぎすぎたら危ないよ。もうオトナ、なんでしょ?」
子ども扱いはイヤなんです、といつも口をとがらせる君を想い出しながらそう言うと、
「でも・・・早く見たかったから。」
案の定、ぷうっと頬をふくらませる。
そんな彼女が可愛くて可愛くて、後ろから肩口に顔をのせ、ふくらんだ頬にそっと自分の頬を擦りつけた。

「わかるよ。ほんとに・・・すごくキレイだね。」

(花も・・・。君も・・・。)

そしてそのまま2人、黙って淡い薄紅色の世界に見入っていた。


「すごく綺麗なコスモス畑が見える場所があるって聞いて。どうしても・・・どうしても敦賀さんといっしょに見たいなって思ったんです。」

ためらいがちに呟く声が聴こえた。
(え?)
小さな耳朶がほんのり紅く染まっていくのが見える。
それだけで、愛しい気持ちが耐えがたく込み上げてきて、俺は衝動的に目の前のソレを、はむっと噛んでしまった。

ひゃうんっ!

音にならない叫びが耳元で上がり、思わず吹き出してしまう。
怒られちゃうかなと思いつつ、マシュマロみたいにやわらかな歯当たりがあまりに心地よくて、つい何度もはむはむと甘噛みしてしまった。

「な、な、なにするんですか。やめてください!そ、そ、それにそろそろ離してください!もし誰か来たら、どうするんですか!」
「やだ。」
「やだって・・・なんですか、それ。」
「こんなところまで誰も来やしないよ。それに、見られたって俺は別にかまわないし。」
「つ、敦賀さんがかまわなくても、私がかまうんですっ!!!」
「もう・・・いいかげん、あきらめたら?」
言いながら、ぺろりと耳朶をなめる。

はうっ!
息をのむ音とともに、今度はパーッと顔中ぜんぶが真っ赤に染まった。

「や、や、や、やめてくださーい!」

ほんとに可愛いな。君は。

「ふふっ。せっかく恋人同士になれたのに、君はちっとも変わらないね。いつまでたってもスキンシップに慣れなくて。これくらい、付き合ってるなら普通のことだよ。」
「ふ、ふ、普通じゃないです。こんなこと外でするなんて、ス、スキンシップの枠を超えてます~!それに、お付き合いしてるのはまだヒミツなんですよ。だから、やめてください~~!」
眉根を寄せて訴えるように見上げてくるけれど、俺はちっとも気にしない。


だって・・・
君の“やめて”が、本気じゃないことくらい、もうわかってる。
やめなくても君は離れていかないって、俺はもうわかってる。

だから試しにもう一度だけ、はむっと甘噛みしてみた。


「~~~っ!!」

「ん。おいしい。」
そう言ったとたん、抱え込んだ腕の中で小さな身体がびくんと跳ねて、大きく息を吸う音がした。
それから、なにやらもぞもぞと頭が動いたかと思うと・・・。

肩にかかっていた俺の指先を、彼女はいきなりかぷりと噛んだ。
「なっ・・・」
指先に走った小さな痛みよりも、恥かしがりやの君がそんなことをしたことに驚いて。
あまりの不意打ちに声も出せず、頭の中がカァーッと熱くなり、ひどく狼狽えてしまう。

「ふふふ。仕返しです。目には目を、ですね。あれ?敦賀さん、どうしたんですか?お顔が真っ赤ですよ。」
得意げな顔をしてそんなことをいうから、つい悔しくなってその鼻にかじりついた。

「いたっ!」

そう、今度はほんの少しだけ歯を立てて。

「敦賀さんって呼ぶのは、みんなが周りにいるときだけって約束したよね。せっかく2人きりになれたのに、どうしてずっと“敦賀さん”って呼ぶの?俺は淋しくってならないよ。だから、これは・・・お、し、お、き。」

大きな目をまんまるにして俺を見つめる君にそう言ってみる。

ちょっと言い訳じみてたかな。
でも、淋しかったのは本当のこと。
いつまでたっても君との距離を縮められなくて、焦燥感に心が軋ませていたあの頃のような想いは、もう二度としたくないんだ。
だから・・・呼び方ひとつにだって、距離は作りたくない。
もっともっと近づきたいし、もっともっと近づいてほしい。
我儘かもしれないけれど、そう思ってしまう。


なんて考えていたら、なんだか急にひどく照れくさくなって、

「ほらほら、景色、景色。」

無理矢理両手で、その顔を風景に向けさせた。
そうして後ろ向きになった彼女の小さな頭に、そっと顔をのせてみる。
呼吸するたびに、俺の中に取り込まれていく彼女の匂い。


いつまでも、こんな時間が続くといい。
ただ、それだけを願う。
このまま時が止まってしまえばいい、とも。


さわさわと風が吹き、波打つように花々が揺れる。
君の髪も、俺の前髪も、同じように風になびいて。
・・・そしてこの腕の中では、甘い温もりが俺の心をやさしく包み込んでいく。


昨日より今日のほうが、ずっと幸せであるように。
君さえ隣にいてくれれば、きっと明日は、今日よりもっと幸せな時が得られる。
明後日は、明日よりもっと。
そうやって・・・。
いっしょにいるかぎり、幸せな毎日がどこまでも積み重なっていく。
そうに違いないと、不思議なほど確信が持てるんだ。

だって・・・俺の幸せは、いつだって君と共にあるから。


そのとき―――。
耳元で消え入りそうな声が響いた。

「れん・・・さん。ずっと、こんな風にいれたらいいですね。・・・ううん。ずっと・・・こんな風にいっしょにいたい、です。」

その言葉に、互いの気持ちが重なっていたのを知る。

それが何よりも嬉しくて。
怖いくらいに幸せで。

「キョーコ。・・・俺も。」

情けないほど震えた声で、言葉を絞り出した。
瞳がゆっくりと上向き、引き寄せられるように視線が重なる。
すると君は、天使のような微笑みを俺に向かってふわりと浮かべてみせた。
何かを告げるように僅かに開いた唇が、後ろに広がるコスモスの色に重なって煌めき、その可憐さに釘づけになる。

俺を惑わし、俺を誘い、そして俺の心をどうしようもないほど君でいっぱいにしてしまう、その唇。

耳朶よりももっとふくよかで、もっと魅惑的で、もっと甘美なソレを・・・。
我慢しきれず俺は、はむっとやさしく啄んだ。



永遠の愛をこの胸の中で誓いながら。





fin

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