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リンッ リンッ リンッ

ネットで見つけた書き込みを読んで、頭に浮かんだこのお話。
成立後、まだ日が浅い時期の2人をイメージしています。



リンッ リンッ リンッ


最近のキョーコのお気に入りは、蓮の家の玄関に鎮座する真鍮製のクラシカルなテーブルベル(呼び鈴)。
蓮からお土産にもらったものだけど、キョーコはそれを蓮の家の玄関に置かせてもらった。
そして部屋を訪れたとき、必ず玄関でそれを鳴らして楽しんでいる。
リンッ リンッ リンッ

その音が響いたら、キョーコが来た証拠。
キョーコだけの蓮への合図。


*


蓮がそれを見つけたのは、1週間のヨーロッパロケに出かけたときのこと。
休憩時間に辺りをふらりと散歩していたときに見つけたアンティークショプの店先に、それはあった。

(彼女が好きそうだな・・・。)

見つけたのは、100年近く前に作られたという真鍮製のテーブルベル。
やしの木に少し似た凝った作りのそれは、いわゆるベル型ではなく、小さく飛び出たハンマー部分を押して音を鳴らす仕組みになっている。

燻った黄金色がいかにもアンティークらしく、ベースに施された葉や果実の装飾は目を見張るほど細やかで、ため息が出るほど美しい。
ずいぶん昔に作られたものだというのに、ハンマーを押すたびに鳴る音色は、リンッと軽やかで澄みきっており、耳に心地よく響く。


彼女が見たら、「これを鳴らしたら、妖精さんたちが舞い降りてきそう!」なんて言いそうだな。
俺でさえ、ひと目で魅了されるくらいなんだ。
彼女はどれほどこれに心奪われることだろう。


これを見たときのキョーコのはじけるような笑顔がぱっと目に浮かぶ。
それだけで蓮の心はすんなり決まり、次の瞬間それはもう日本への長い旅路に向けて丁寧なラッピングを施されていた。


*


リンッ リンッ リンッ

澄んだ音色が蓮を呼ぶ。

キョーコだ!

久しぶり(といっても蓮は一昨日もキョーコと一緒に夜を過ごしたのだけど)に会える喜びに、思わず飛び出していきそうになった蓮の足がふと止まる。

(そうそう・・・。)

にやっと口元を綻ばせながら、蓮はテーブルに置いていた白手袋を取り上げ、すっとその手にはめた。



じつは今日撮ったとあるCMで、蓮は執事の恰好をさせられた。

しなやかで引き締まった長身の体躯を包み込む漆黒のタキシード。
ふわりと整えられた黒髪は、純白のウィングカラーシャツに艶やかに映え、蓮の凛と端正な美貌を引き立てている。
匂い立つような気品と自然にまとう剽悍な空気。
ともすれば甘くなりがちな秀麗な容姿も、タキシードときっちり締められたタイネクタイによって、きりりと引き締められる。

そんな執事姿の蓮が、白手袋をするりとそのしなやかな手にはめた瞬間、スタッフはみんな手を叩いて喜んだ。

「今どきの日本人で、そんな恰好がすんなり似合う若者なんて、敦賀君以外に思いつかないよ!」
「ほんとにかっこよすぎ!こんな素敵な執事さん、我が家にも欲しいわ~。」

口ぐちに褒めたたえるスタッフ。

あの社ですら
「お前・・・ほんとにそういう恰好するとはまるよな。キョーコちゃんに見せてやれよ。きっと大喜びするぞ。」
などとにやつきながら囁いたほど。

その言葉を聴いた瞬間、蓮の心に悪戯心がむくむくと湧き上がった。

(テーブルベルを鳴らしたキョーコの前に、この姿で現れたらいったいどんな顔をするだろう。)

「そうですか。じゃあ、この衣装買い取ります。」

真面目な顔で、あっさりそう答えた蓮に、社はにやにや顔のまま固まり、ぽかんと口を開けた。

「手配、お願いしますね。」

依頼の言葉を重ねた蓮に、はっと我に返った社はやれやれといった動作をしながら、それでもそれ以上何も言わずにスタッフのもとへと走り去った。


(こんな服を買い取ろうっていう理由、社さんはどう言い訳するんだろう。)
そう思うと、蓮の口がほんのすこしだけ意地悪気げに緩む。


(いつも、からかわれてばかりいるんですから、たまにはいいですよね。社さん。)


*


リンッ リンッ リンッ


キョーコからの呼び出しに蓮は急いで玄関へ向かった。

準備は万端。
彼女はいったいどんな顔をするだろう。


「おかえりなさいませ。お嬢様。」

玄関ホールへの扉を開け、キョーコの前に現れた蓮は、そう言うと胸に手を当てて優雅な物腰で一礼した。
艶やかな黒髪がさらりと流れ、煌めくような美貌に柔らかな微笑みが色を添える。





徒然妄想記




「れ、れ、蓮・・・さん・・・!?」

突然現れた執事姿の蓮に、言葉を失い立ち尽くすキョーコ。
その頬がみるみる赤く染まっていく。

(どうやら、気に入ってくれたみたいだ・・・。)

緩みそうになる口元を必死に抑えながら、蓮はキョーコのもとへ一歩足を踏み出した。

「お呼びいただき光栄です。」

それから蓮はキョーコの白く滑らかな手を取ると、徐に片膝をつき、その甲に優しくキスをした。

「なにかご用命がございましたら、何なりとお申し付けください。お嬢様のためなら、この蓮、いかなることでも。」

神々しい笑顔で見上げられ、キョーコの心臓は一気に高鳴ってしまう。

「え、えっと・・・」

頬を染めて立ち尽くすキョーコに、くすりと笑い蓮は言葉を即した。

「どうぞご命令を。お嬢様。」

耳朶まで真っ赤にしながら、しばらく言葉を失っていたキョーコは瞬間小首を傾げると蓮を見つめながらおずおずと小さな声で答えた。


「えっと・・・あの・・・・ギュッてしてください。・・・あと・・・・・・」

「・・・あと?」

もじもじと言葉の続かないキョーコを、愛おしげに微笑みながらじっと待つ蓮。
キョーコはぎゅっと目を瞑ったかと思うと、意を決したように口を開いた。


「・・・あ、あと・・・、ちゅーもしてもらえますか!」



(!!!!)



予想のはるか上をいくキョーコの言葉に蓮は一気に破顔すると、その身体をまっすぐひっしと抱き締めた。
それから、勢いに任せ背中と膝裏に腕を回し、そのままふわりと抱き上げる。

いきなりのお姫様抱っこに目をぱちくりさせるキョーコ。

蓮は、そんなキョーコをやさしく見つめながら、静かに顔を寄せ、目の前に揺れる薄桃色の唇に音を立てて口づけた。



「大切な、大切なお嬢様。わたしはいつまでもあなただけの忠実なる僕(しもべ)です。」






fin

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