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社さんの自業自得

「あっ、キョーコちゃん!探してたんだよ!」

朝、通学前に事務所に立ち寄ったキョーコは、笑顔全開の社に呼び止められ、小首を傾げた。

「おはようございます。社さん。どうしたんですか?そんなに急いで。それにおひとりなんて珍しい。」

はあはあと息を切らしながら駆け寄ってきた社に尋ねる。

「ああ、蓮は今朝まで撮影でね、今仮眠室で休んでるんだ。俺はちょっと打ち合わせがあって・・・。
で、キョーコちゃんがこれからこっちに来るって聞いてね。これお願いしたいと思って探してたんだ!」

「・・・お願い?ですか?」
意味がわからず、キョーコはきょとんとした顔を見せる。

「これなんだけど・・・。」
そう言って社が差し出した手に載っていたのは、半円形の小さな時計。

「目覚まし、ですよね?」
「そうそう、実はこれ、一見ふつうの目覚ましなんだけど、録音ができるようになってるんだ。」
にこにこしながらキョーコに説明する。

「ああ、最近あるみたいですね、そういうの。聞いたことあります。」

「うん。それでね。ここに蓮がどっきりするようなメッセージをいれておいて・・・寝ているときにそっと聞かせたらおもしろいかなって。」
そういうと、社はにやりと笑った。

「どっきりするような・・・メッセージ?」
相変わらず不思議そうな顔のキョーコ。

「そこで、キョーコちゃんにお願いです。」
社は膝を曲げキョーコと視線の位置を合わせると、手を合わせるようにして懇願のポーズをとった。

「え?なんでしょう?」
改まったその態度にキョーコは一抹の不安を感じながら、恐る恐る尋ねる。

「ここに、ナツばりの色っぽ~~い声で、“れ。ん。・・・お・き・て”とか入れてくれないかな?」

寝耳に水!な社の言葉に呆然とし・・・それからキョーコは声を上げた。

「はああああああ!!!???
無理っ、無理ですよっ!そんなの私にはぜぇ~ったい無理ですっ!
そもそも私、色っぽさなんてかけらもないし。あ、そりゃナッちゃんは色っぽいけど。でも。あれは特別で。・・・っていうか、なんなんですか!そのお願い!?」

興奮と動揺を隠せないキョーコ。

「う~~ん。なんていうか・・・どっきり?」
「どっきり?」
「そう。蓮に仕掛けようかと思って。」
「は?いったいまたどうして?」

「・・・んっとね。ほら、蓮のマネージャーってけっこうハードでしょ?最近毎日暑いせいか、とくにきつくってさ。けっこう気分が滅入ってたんだよね。」

少々話の方向が変わる。

「はあ・・・。たしかに敦賀さんのような大スターは分刻みのスケジュールですし、それについていく社さんも大変ですよね。」

キョーコの言葉に、我が意を得たというように社がうんうんと頷いた。

「ありがとう。わかってくれてうれしいよ。でね、ストレス発散っていうわけじゃないんだけど、蓮にちょっとした悪戯を仕掛けてみたいなって思ってさ。気分転換?
ほら、蓮っていっつも冷静沈着じゃない?だからそんな蓮が飛び上がるほど驚く姿をみてみたいなって思ったんだ。
普段はやたら落ち着いて、お前いくつだよって顔してるくせに、動揺すると年相応の表情するから、面白いんだ。そんな顔を久しぶりにみたいな、って思って。」

“兄”の顔をしてそんなことを熱く語る社。
(え?でも、そんなことしたら大魔王が飛び出して恐ろしいことなるんじゃ・・・)
などと思うキョーコだったが、目の前でわくわくと好奇心に駆られている社をみると、そんなことはとてもいえない。

「でも・・・、私の声なんかで敦賀さんが飛び上がるとはとても思えないんですけど・・・。」

「いやいやいや。普段仲良くしてるキョーコちゃんの声だからこそ、びっくりすると思うんだ。」

大真面目な顔をして社はキョーコの説得にかかる。

「ほら、キョーコちゃんといえば、いつも元気で明るいイメージでしょ?
そんなキョーコちゃんが、突然色っぽい声で話しかけてきたら・・・しかも起き抜けに。そしたらぜったい蓮はびっくりすると思うんだ。間違いないよ。」

自信ありげに大きくうなずく社。一方キョーコは不安げだ。

「そうでしょうか?でも・・・たしかに私に色気なんて対極にある言葉ですし、想像を絶するものではあるかも・・・しれないですけど。」

僅かに眉尻を下げながら、自分を卑下するような言葉を発するキョーコに、社は少し慌ててしまう。

「い、いや、キョーコちゃん、そんなことない。そんなことないよ。だって、ダークムーンの打ち上げのときのキョーコちゃんはそりゃもう色っぽかったもの。ナツで現れたときだって、すごかったし。」

「あれはコスメデマジックで・・・。」

「たしかにメイクの効果もあるだろうけど、それだけじゃぜったいない!」
全力で断言する。

「だってあの蓮だって、打ち上げでキョーコちゃんが登場したとき、口はぽっかり目を真ん丸に開いて、キョーコちゃんに見惚れてたんだよ。」

拳を握り豪語する社の言葉に、キョーコの胸がどきんと跳ねた。

「・・・え?敦賀さんが・・・?」
社には届かないほどの微かな声でそう呟く。

「すぐ気づいていつもの顔に戻してたけどね。俺は見逃さなかったよ、あの顔。あの顔をどうしてももう一度見てみたいんだよね~。なんていうの?いつも冷静な蓮が本気で驚いて魂抜かれてる顔。」

思わず口にした発言がほんのり示す意味に気付かぬまま、社はふふふっと笑った。

「で、でも・・・。」
「ねっ。キョーコちゃん、お願いっ!このお兄ちゃんのストレス解消にひと役買って!」
「社さんにはいつもお世話になっているし、お役に立ちたい気持ちはやまやまですけど・・・。」

「ほんと!?じゃあきいてくれるんだねっ!」

かぶせるようにそう告げると有無を言わさぬ勢いで、キョーコの手に目覚まし時計を押しつけた。

やったー!!
ガッツポーズで喜ぶ社。

「ありがとう!!・・・あ、そしたらこれ、台本ね。」
にこにこしながらそう言うと、社はひらひら~と小さな白い紙をキョーコに渡した。

『れ、ん。ねえ、起、き、て。起きてくれなきゃ、キスしちゃうから。ほら、は・や・く。』

どう見ても明らかな社の字でそう書いてある。

「・・・え?」
紙片に目を走らせた瞬間、キョーコの顔が、身体が、ピッキーンと音を立てて固まった。
「こ、こ、こ、こんなの!!!、む、む、む、むりですぅ!!!!」
再び悲鳴を上げるキョーコ。
そのキョーコに、少々あくどい顔をして社が高らかに告げた。


「でも・・・もう約束したよね。キョーコちゃん。」


* * *


その日の午後、蓮と社はロケバスに乗り次のロケ地へと移動していた。

社の隣では、蓮が腕を組んで朝の仮眠では足りなかった睡眠を補充している。
その寝顔を、にやにやと見つめる社。
そして、がさがさと荷物をあさり、例の目覚ましを取り出した。

音量は最小。
このバスの喧騒の中では、おそらく目覚ましが発するメッセージも自分と蓮にしか聞こえまい。

一度大きくにやりとあくどい笑みを浮かべると、社は蓮の耳にそっとその目覚ましをあてた。


『れ・ん・・・・・』


うわああああああ!!!!!
突然、車内に社の悲鳴が響く。
驚き慌てたスタッフが目を向けると・・・。

あの“敦賀蓮”が、なんと自らのマネージャーに抱きつき、頬をすりよせる姿がそこにあった。


その後、しばらくの間、業界に敦賀蓮とそのマネージャーのよからぬ噂が立ったのは言うまでもない。


そして・・・。



「社さん・・・。」

ひぃいいいいー!
闇の国の蓮さん!!!もう何週間続いてるんですか!!!

あの目覚まし、ちゃんとプレゼントしたじゃないかぁ~~!!!
「仕方ないですね。もらってあげます。」
とか言ってさりげない顔で受け取ってたけど、内心ウキウキだったんだろ。

知ってるんだぞ。
いつだって、荷物の中にはあの目覚ましがちゃーんと入っていることを。
ほんとはすごぉ~く嬉しかったくせに!
アレを手に入れた俺の功績を少しは認めてくれたっていいじゃないかぁ!!


だから、

だから、

だから、もう

勘弁してくれぇ~~~!!!!





fin

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