スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

鼻の頭

「最上さん、最上さん!」

私を呼びとめる声がした。

その特長ある艶やかなバリトンに、あっと思って振り向けば・・・やっぱり敦賀さん。
恐れ多くも煌めき度満点の素晴らしい笑顔を一直線に私に向け、つかつか近づいてくる。

ぞぞぞぞぞ・・・

なぜだろう。
なんだかとってもいや~な予感がして、頭を下げて挨拶しながらも、ついあとずさりした。

「どうして逃げようとするかな?」

きゃあ~~~!!ばれた~~!!そして、いきなりの魔王降臨!!??

「い、いえ、そんな逃げるだなんて。大魔、いえ大先輩を前にそんなことあるわけないじゃないですか!」

なんて言ってみたけど・・・どうせしっかりばれてるわよね。
ほら、キュラキュラ似非笑顔が輝きを増してきた。

どうしよう。
その笑顔になんだか危険な匂いを感じたんです、なんてホントのこと言えるわけないじゃない。

作り笑いをしながら、必死に言い訳を考える。
・・・だめだ。浮かばない。

「え、えっと、なにかご用事でしょうか。わ、わたし、これから収録なんですけど。」
恐る恐る聞いてみる。

「ああ、たいした用事じゃないから。すぐ終わるし。」

大先輩は、それこそ神様だって惚れこんじゃうんじゃないかというほど艶然と美しい微笑みを携え、こちらを見つめてくる。
・・・でも、正直イヤな予感しかしない。

「な、な、な、なんですか?」
怖い、なんだかとっても怖い。

「よかったらちょっとだけ目をつぶってくれる?」

は?
あの・・・なんだか私の野生のカンが、それは危ないと伝えてきてるんですケド。

「目を・・・つぶるんですか?」

「うーん。俺は別にそのままでもいいけど、でも閉じたほうがいいと思うよ。」

そう言うと、“ぜったいNOとは言わせないから”と言わんばかりの、それはもう恐ろしい大魔王の微笑みが私に襲いかかってきた。

ヒィ!

か、身体が硬直する!
う、動けない・・・。
思わずぎゅっと目をつぶった・・・その瞬間。


鼻の頭をペロリと舐められた。


「うきゃあああ!!!!な、な、なにするんですかぁ~~!!!」

叫んだ私の視界に映ったのは、すでに立ち去ろうとする大先輩の後ろ姿。
あはははっと小気味いいほどの笑い声が聞こえてくる。

「か、か、からかったんですねー!!!!」

衝撃に固まった身体を動かすこともできず、その場で叫んだ私に、後ろで手を振りながら、彼の人は答えた。

「もう、ツバつけちゃったからね~。そのつもりで~!」


・・・は?

・・・・・は?は?

・・・・・・・は?は?は?


い、い、意味が分かりません!!!

ツバつけたって、何言ってるんですか!?
その意味分かって言ってるんですか???
どういうことですか???

混乱する私を尻目に、大先輩はあっさり姿を消していった。


忘れよう・・・。
とにかくこのことは、いますぐ忘れよう・・・。


バクバク鳴ってる心臓を押さえながら、私は自分に言い聞かせた。


からかわれてるんだ。
私が呆れるほど単純で、子どもみたいに面白いおかしい反応をするから、だからからかわれてるんだ。


繰り返し繰り返しそう思いながら、なぜか頬も耳も頭の中も、身体中ぜんぶがどんどん熱くなっていくのを感じていた。


*


翌日から、ついに腹を括った蓮による怒涛のアタックが始まることを、このときのキョーコは知る由もない。




fin

スキビ☆ランキング ←参加してみました。よろしくお願いします。

関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。