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水たまり

※『蓮キョ☆メロキュン推進!ラブコラボ研究所』参加作品です。



「最上さん。雨がひどいから送ってくよ。」

さりげなくそういわれてついうなずいてしまった。
敦賀さんと2人きりの時間を過ごすのはもうやめようと今決めたばかりなのに。

久しぶりの共演。

演技をする敦賀さんは、やっぱりとっても素敵でかっこよくて、『ああ、私には手の届かない場所にいる人なんだなあ』って実感してしまった。

この人と肩を並べられるようになりたい、そう思ってからもう何年経つだろう。
それなのに、ちっとも追いつけずにいる。

『いつか追いつくことができたら、そのときこの気持ちを打ち明けよう。』
そう思っていたのに。
たぶん・・・いつまでたってもきっと無理。


午後――――、待ちかねたランチタイムがきた。

「最上さん、今日も美味しいよ。いつもありがとう。君がいなかったら、きっと俺の食生活は破たんしてるな。」

そう言って私を見つめ、にっこり微笑んでくれる敦賀さんが、神々しいほど眩しくて、心臓がギュッと掴まれたように痛くなる。

こうした時間がもてるのが・・・いまの私にとっては何よりも幸せ。
でも・・・いったいいつまでこんなに近くにいさせてもらえるんだろう。
その先、を考えると震えるくらい不安になる。

そう、今の私が敦賀さんのためにできるのは、こうやって食事のサポートをすることくらい。
だから、どんなに忙しくてもその約束だけは続けたくて必死になってしまう。

『敦賀さん、ちゃんとご飯食べてるんですか?』
『敦賀さん、また××インゼリーを食べてたりしませんか?』
『敦賀さん、ロケ中はどんなもの召し上がったんですか?』

会うたびに食事の話をするのは、
「夕飯を作りに来てくれないかな」「お弁当を作ってくれないかな」、
そんな言葉を引き出すため。

正直・・・そんな自分に笑ってしまう。
だって、あまりにも必死だから。

でも.、どんなに必死になってもいい。
こうして敦賀さんの笑顔を、傍で見ていられるなら。


だから今日は朝から晩まで、同じスケジュールで動けると知って、飛び上がるほど嬉しかった。

どうしたら喜んでもらえるか一生懸命メニューを考え、早朝からお弁当作りに勤しんだ。
敦賀さんの好みはもうすっかり覚えてる。
どんな食材が好きで、どんなメニューだとよく食べてくれるか、いつも一生懸命観察していたから。
次に作ったとき、前よりもっと喜んでもらうために。


久しぶりに幸せなランチタイムを過ごし浮き立った心を抱え、お弁当箱を洗ってしまおうと給湯室へ向かった。
そこで耳にしたスタッフの話声。

―――敦賀蓮が、ついにハリウッド進出するって。日本には戻らないつもりらしい。

・・・え?
・・・どういうこと?
意味が分からず、凍りつく。
敦賀さんが・・・ハリウッド?
会えないほど遠くへ行ってしまう?
もう・・・もう・・・一緒の時間は過ごせないってこと?

混乱する頭を抱え、スタジオに戻る。
心の動揺を誰にも知られたくなくて、必死に演技した。
ありがたいことに、撮影中は敦賀さんと話をする時間はなくて。
私はそっと、その演技を目に焼き付けていた。


もうすぐ撮影が終わるというころ。
気が付けば、雨が降り出していた。

まるで、私の心の中みたい。

降りしきる雨を見つめたがら、そんなことを考えてしまう。
演技する敦賀さんの姿が、やけに遠い。


ついにきたんだ。
そのときが。
敦賀さんから卒業しなくちゃいけないときが。
神様はひどい。
あんな幸せな時間のあとに、こんなことを用意しているなんて。

ううん。きっとあのランチタイムが最後のプレゼントだったのかも。
神様から私への。

会えなくなるのがほんとなら、もう・・・もう・・・敦賀さんと2人きりの時間は過ごせない。
きっと悲しくて泣いてしまうから。
きっと辛くてこの気持ちを吐き出してしまうから。
だから、もういっしょの時間を過ごしちゃいけない。

そう思った。
それなのに・・・。


「最上さん。雨ひどいから送ってくよ。」
さりげなくそういわれてついうなずいてしまった。

敦賀さんのことになると・・・すぐ決心が揺らぐ弱い私。

何があっても、何を言われても、せめて笑顔でいられるようにがんばろう。


*


「実は、ハリウッドにチャレンジすることになったんだ。」
今住んでいるマンションの前まで送ってもらい、車を停めた敦賀さんは、いきなりそう言った。

やっぱり・・・。
やっぱり、本当だったんだ。

「そ、それはおめでとうございます。敦賀さんなら、きっと、きっと成功します!ハリウッドスターになったら、日本のことなんてそっちのけになっちゃうかもしれないくらい忙しくなっちゃうでしょうね。」
きっと、私のことなんかすっかり忘れてしまうくらい・・・。
心の中でそう続ける。

「ハリウッド進出は俺の目標の一つだった。だけどじつはね・・・。それが達成できたら、しようと思ってたことがもう1つあるんだ。聞いてくれるかい?」

どうしてこの人は、こんなにやさしい瞳で私を見つめるんだろう。
こんなにやさしい声で話しかけてくるんだろう。

「なんですか?」

きっと別れを決定づける言葉がくる。
覚悟を決めて、零れ落ちそうになる涙を必死にこらえながら、がんばって微笑んでみた。
私はうまく、笑えてるだろうか?

「最上キョーコさん、ずっとずっと前から俺は君を愛してます。どうか俺と結婚を前提に付き合ってくれませんか?アメリカと日本で少しの間、離れ離れになってしまうけど、でも俺は必ず君の元に帰ってくるから。だから、約束してほしいんだ。俺だけのただ1人の人になってくれることを。」

よく理解できなかった。

敦賀さんが私を好きだなんて。
愛してるなんてありえない。
そんなことあるはずないのに・・・。
きっと、からかってるんだ。

ひどい!ひどい!ひどい!

混乱した頭を抱えて、自分の気持ちの動揺を敦賀さんに悟られたくなくて、車から飛び出した。

雨の中を、走って、走って、走って・・・。
その先に見つけた小さな公園に飛び込んだ。

誰もいない公園。
真ん中に大きな大きな水たまりができていて・・・。
勢いが止まらず、あっと思ったときには足を滑らせていた。

「危ない!」
後ろから信じられない声がする。

うそっ!敦賀さん!?と思ったその瞬間。
ふわりと何かが私の腰を引き寄せ、頭をぐっと抱き締め・・そして転んだ。

ビシャンッ!
すごい音がする。


こんな私を助けるために、代わりに敦賀さんが水たまりにしりもちをついていた。
2人して、泥だらけの水たまりに座り込んでいて・・・服にも、顔にも、そこら中泥だらけになっている。

「だいじょうぶ?」
息がかかるほど間近な場所から、心配そうに私をみつめる敦賀さん。
その表情に、胸がきゅーっと痛くなって。
どうしたらいいかわからなくて。
小さくこくんとうなずいた。

「よかった。最上さんが無事ならいいんだ。君は俺にとってほんとに大事な人だから。」
そう言ってにっこり微笑みかけられて、どんどん、どんどん顔が熱く、赤くなっていくのが分かる。

「俺がからかってるとか思ったんでしょ?それで、驚いて逃げ出した。でも違うよ。俺、本気だから。」
どうして?
どうしてわかったの?

「本気で、君だけを想ってきたんだ。もうずっと何年も前から。」
心臓が飛び出すような言葉とともにいきなり強く抱き締められた。
腕も、背中も、おしりまで、ぜんぶ。
ここも、ここも、ここも・・・みんな敦賀さんに包まれてる。

「最上さん。君の気持ちを教えて。」
恥かしくて、恥ずかしくて、どうしたらいいかわからない。

「答えないと、勝手にイエスって受け取るからね。」
もう、離さないから。
小さくそう呟く声がきこえる。

ほんと・・・?
ほんとなの・・・?

信じて・・・いいの?


「うわっ、泥がしみこんできた!」
急に敦賀さんの慌てたような声が上がった。


・・・・そういえば、水たまりで転んだんだった。

見上げれば、敦賀さんの端正な顔中に・・・頬にも、おでこにも、鼻の頭にまで泥がはねていて。
思わずクスリと笑ってしまった。
「ああ、よかった。笑ったね。ずっとそうやって笑っていて。できれば俺の隣でずっと。」
言いながら笑う口元にまで泥がはねている。
やだ。
この人はどうしてそんな赤面するようなことをさりげなく言えるんだろう。

「敦賀さん、泥だらけですよ。」
なんといったらいいかわからなくて、つまらない言葉を返してしまう。
そんなことが言いたいわけじゃないのに。

「うん。なんだかパンツの中まで泥水が染みこんできたみたいだ・・・。」
情けなさそうな顔をしてそんなことを言う姿には、いつものかっこよく決めた敦賀さんは欠片もなくて、つい笑い出してしまった。

つられたように一緒に笑い出す敦賀さん。
2人して、笑って、笑って、笑って、笑ったら―――――、
なんだかいつまでも、ぐじぐじと後ろ向きにばかり考えていた自分がばかばかしくなった。

「わたしも、ずっと前から大好きでした。」

目の前の瞳を見つめてそう言ってみる。
一瞬驚いたような表情を見せた敦賀さん。
でもすぐにその端正な顔が近づいてきて、私のおでこにそのおでこがふれた。

あったかい・・・。
触れた場所から流れ込んでくる温もりに、高鳴る鼓動が止まらない。
どうしたらいいかわからずにいたら・・・なぜか涙が一筋零れ落ちた。

すっと手が上がり、長く綺麗な指先がその涙をすくい取る。
それが嬉しくて、破顔する敦賀さんの鼻の頭についた泥を、私もそっと拭い取り・・・そしてそこにそっと唇を寄せた。


背中に回された腕に力がこもり、びしょ濡れになった頭を大好きな人の指先がやさしく掬う。

「ああ、うれしいよ。このまま一生泥だらけでもいいくらい・・・幸せだ。」

その言葉に、涙がもう一筋零れた。



――――憂鬱な雨空の下、誰も通らぬ公園で、泥だらけの2人が幸せそうにいつまでも微笑み合っていた。




* * *




ぐっしょりと濡れた頭から雨の雫が瞳へと流れ落ち、キョーコはハッと気付いた。

「敦賀さん!どうするんですか。こんなに濡れてしまって!」
気がつけば、泥だらけどころか全身びしょ濡れになっていた2人。

「最上さんこそ、ずぶ濡れだよ。ほら、シャツが身体にはりついて・・・大変だ。」
そう言うと蓮は、キョーコを自らの身体でひっしと包み込んだ。
濡れて張り付いた服が身体の線を露わに見せる、キョーコのその姿が誰にも見られることのないように。

きゃっ!

我に返っていたキョーコは、蓮の態度に思わず悲鳴を上げてしまう。
瞬く間に赤く赤く色づく頬。
その様子が初々しくて可愛くて、蓮は濡れた頭にその顔を擦り寄せた。

「でも・・・俺はずっとこのままこうして君を抱き締めていたいくらいなんだけど。」

「だ、だ、だ、だめです!す、すぐに身体を乾かさないと。風邪を引いちゃいます!敦賀さんは、大事な芸能界の宝なんです。お一人の身体じゃないんですよ!大切にしなくちゃ!」
キョーコの叫びを聞きながら、悪戯っ子のようにクスリと笑う蓮。

「そうだね。もう俺一人じゃなく・・・最上さん、君のものでもある。」

蓮の答えに、ピーッと音を立てそうな勢いで、キョーコの顔が真っ赤に染まった。
「な、な、なにをおっしゃるんですか!」

「だって・・・とっくの昔に俺の心は君に奪われてるんだから。こうなった今、心だけじゃなくこの身体も、俺のすべてが・・・ぜんぶ君のものだよ。」

ふふっと笑いかける蓮に、顔に集まっていた熱が今度は一気に全身に回り、飛び上がりそうになる。

「つ、つ、敦賀さん!じょ、冗談を言ってる場合じゃありません。とにかく濡れた身体をどうにかしないと!」

冗談じゃないんだけどなあ・・・と小さく呟きながら、「最上さん、君もずぶ濡れだからどうにかしないとね。」と言い、蓮はその手でキョーコを立たせた。


「と、とにかく、うちにいらしてください!タオルもありますし、シャワーもありますから。」
キョーコの言葉に蓮の瞳がキラリと光る。

「・・・いいの?行っても?」
「いいのって・・・。ほかにどうしろっていうんですか!そんなにずぶ濡れのまま、お帰りいただくわけにいきません!」
キョーコ自身、正直自分が何を言っているのか冷静に考えているわけではない。
とにかく、蓮をこのまま濡れ鼠にしておくわけにはいかない、それだけを思っていた。

「あ!でもお車が!」
「ああ、大丈夫。君の家の前の通りは、駐車禁止になっていないから。もうこんな時間だし。朝まで置いていても大丈夫じゃないかな。」
「でも、あんな高級車・・・危ないです。」
「大丈夫。気にしないで。それより・・・ほんとにシャワー貸してくれる?」
「はいっ!もちろんです!風邪など引かないように、ちゃんとしっかり温まってください。」
言いながらキョーコは蓮の手を引き、自らのマンションへとずんずん歩き出した。


(この子は・・・ほんとに分かってるのかな。俺が今彼女の家でシャワーを浴びるってどういうことかって。
着替えは持ってないし。彼女の家に、俺が着れるサイズの服があるとはとても思えない。仮に服を洗ってもらうとしても・・・乾くまでどれだけ時間がかかることか。
そのまま裸で待っていろとでもいうんだろうか・・・。
それに・・・、この状況じゃ彼女だってシャワーを浴びる必要があるだろうし。)

とたんに蓮の頭にさまざまな策略がよぎる。

(こうしてしっかり気持ちも通じ合えたんだ。約束がほしいっていう俺の気持ちも、ちゃんと伝えたよね。
最上さん・・・俺、もう我慢しないよ。いいね。覚悟してね。)

引かれた手をぎゅっと握り締め直すと、その手を勢いよく引き寄せ、蓮はそのままキョーコを両手で抱き上げた。

「急いだほうがいいよね。このほうが早いから、行くよ!」
キョーコの背と膝裏にその手を回してしっかり抱き直すと、蓮はまっすぐキョーコのマンションに向かって駈け出した。


自らの大切なお姫様をその腕に抱えて。


そして・・・その胸に大いなる野望を抱えて。





fin

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