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我妹子に恋ひて乱れば… (社→キョ)

社⇒キョという変則SSです。
苦手な方は、ここでUターンをお願いしますm(__)m

ちなみに桃色は一切ありません!
しかもやっしーの独白です。
どうぞご理解のある方のみお進みくださいませ。

――――――――――――――――――――


蓮、お前は知っているか?
なぜ、俺がいつまでもコンタクトでなく眼鏡を使っているのかを。
なぜ、簡単に外せる眼鏡をどんなときにもなかなか外さないのかを。


妹子に恋ひて乱ればくるべきに 掛けて搓らむと我が恋ひそめし
(万葉集 湯原王)


(こいつは、すごい役者になる。)
この仕事に就き、初めてお前に出会ったあの日、俺はそう直感した。
そして、こう願ったんだ。
(こいつを一流の役者にしたい。)

だが、お前を一流の俳優にするには、俺もマネージャーとして一流にならなければならない。
まだ駆け出しのお前と、LEMに入社したばかりの俺。
ゴールはまだまだ先に見えた。
だから俺はマネージャーとしてお前のために全力を尽くすため、素顔の自分は封じ込めることに決めたんだ。


パブリックな俺とプライベートな俺。
マネージャーとしての俺と普段着の俺。
その切り替えを素早く行うのに、俺はこの眼鏡を利用した。

なぜって?
芸能界というこの虚構に彩られた世界が、まるでガラスを通してみる世界のように感じられたからかもしれない。
眼鏡というアイテムを通し、端からガラス越しにこの世界を見つめることで、これからはそれが俺にとって唯一のクリアな現実なのだと、素顔の俺の現実などごくぼんやりとしたものに過ぎないのだと、そう受けとめようと決めたんだ。

―――この眼鏡が、素顔の俺を現実から遮断する。

だがそんなことを続けるうち、知らない間に自分でも眼鏡を外せばプライベート、かければ仕事という心の切り替えができるようになっていた。

だからたぶん・・・素の俺をお前は知らない。


あれから3年。
マネージャーとして俺はお前を必死にサポートし続けた。
お前は期待通りの成長を続け、着実に一流俳優への道を駆けのぼる。
そんなお前をいつの間にか兄のような気持ちで見守るようになっていた俺。

圧倒的に多いマネージャーとしての時間に押され、素の俺はいつのまにかほとんど顔を出さなくなっていたから、正直自分でも眼鏡の俺こそがもう本当の俺なんじゃないかと思いはじめていたのかもしれない。
お前に兄のような感情を抱いたのも、それが原因かもしれない。

そのせいだろうか。
お前が恋をしたと気づいたときも、素直に応援したいと思った。
相手が彼女だと知り、応援できる相手でよかったと安堵した。

まさか・・・。
まさか、あのときはこんな日がくるとは思わなかった。


あの日、バスタイム中にキョーコちゃんからの電話を受けた俺は、相当油断していた。
眼鏡を外すことで、自然にマネージャーとしての俺が失われていたことに気付かなかった。

だから、とっさに出てしまった電話の向こうのキョーコちゃんの声がいつまでも心に残り、思い浮かんだ悲しそうな横顔が頭について離れないと気づいたとき、初めて「やばい」と思ったんだ。

―――いや。正確にはそうじゃない。

本当はもっとずっと前から心の奥底で感じていた。
お前に負けないくらい、あの子を大切に想う気持ちが、確かに俺の中にあることを。

それは、妹のようにじゃない。
それは、お前を応援するためじゃない。
それは・・・俺自信が抱えた個人的な感情。

ただ、存在を認めようとしていなかっただけ。


本当に、最初は近所に住みついた子猫とおんなじように、ただ可愛いと感じるだけの妹みたいな女の子だと思っていたんだ。
嘘じゃない。
それが・・・いつからだろう。
お前に会わせるためにしていたことが、本当は自分が会いたいためにしていたことだと気づいたのは。


「女の子はあっという間に大人になる。たかが4つの年の差なんか気にしてお前が目をそらしていたら、その隙にどこかの馬の骨に横から攫って行かれる」

俺がお前に言った言葉だ。
でも本当は・・・それは心の奥の片隅に隠れた素の自分が、俺自身に言った言葉だった。
そして、たかがとはいえない9つの年の差を気にして自分の気持ちに見て見ぬふりしている間に、さっさと恋心に観念したお前に先を越された。

いや、違うな。
お前はけっしてどこかの馬の骨なんかじゃないし、攫っていかれたわけでもない。
横で見ていればわかるよ。
最初からずっと彼女とお前は、お互いをひたすらに見つめ合ってた。
ただ、本人たちだけが気づかないだけで。

そう――――
俺が・・・認めたくないだけで。


かつてお前に言ったあの言葉を、俺は今身をもって実感している。

真っ青な空を見上げ、まっすぐ射った矢がやがて己に落ち、突き刺さるように。
あの言葉がそのまま俺に突き刺さって抜けない。
どんなに胸が苦しくても。どんなに切なくても。

だが、お前がその視線を彼女からそらさない限り、
差し伸べる手を引き戻さない限り。
俺は、このガラス越しの世界に留まり、この矢を甘んじて受けとめよう。
そうすれば、俺自身に歯止めをかけ続けられるはずだから。

曖昧な世界でしか生きられない俺の恋。
それをクリアな世界へ持ち込むことは決して許されない。
そう・・・決して。



それでも、ひとつだけ言わせてくれ。


蓮。お前がハリウッドを目指していることはよく知っている。
お前の力なら、オファーがくるのも間もなくだろう。

アメリカ行きが決まったら、もう俺の手は必要なくなる。
お前は俺の元から、ここから旅立っていくことになるはずだ。
そのときもし・・・

―――もし、お前が彼女に何の約束もしていなかったら。


俺はこの眼鏡を外し、彼女の手を取るために全力を尽くす。

だから、それまでに絶対に彼女を捕まえてくれ。
お願いだ、蓮。

・・・お願いだ。



―――そして俺は、今日もいつも通りに眼鏡をかける。





我妹子に恋ひて乱ればくるべきに 掛けて搓(よ)らむと我が恋ひそめし 
(もしあなたに恋をしたことで心の糸が乱れたら、その糸を糸車に掛けて撚(よ)り直せばいい、そうすれば元に戻すことができるから。そう思いながら、私はこの恋を始めた。)



寝られぬをしひて我が寝る…」に続きます。

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