スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼誰時(かはたれどき)

瞼越しにやわらかい光を感じ、閉ざしていた目をゆっくりと開けた。
締め切ったつもりだったカーテンの隙間から薄い陽射しが漏れている。
開けた瞳にその光が直射し、思わず顔を背けた。

逸らした視線の先に映ったのは、栗色の髪と白く細い肩。
朝を迎えても君がそこにいてくれたことに、安堵のため息が漏れる。

「うぅん・・・」

俺の胸元でくぐもった寝声が聞こえた。
上げた声などどこ吹く風で、無防備にすやすやと眠りこむ君。
その君をこのままずっと腕の中に閉じ込めておきたくて、光が当たらないようにそっと、でも少しだけ力を込めて抱き締め直した。
無意識にいやいやをするように首を振られ、心がきゅっと締め付けられる。
けれどそれからすぐ君は、居場所を見つけたようにその顔をぐっと俺の胸に押しつけてきた。


痛いほどの幸福―――――


乱れた髪のひと房すらも愛おしくて、たまらずそこにくちづける。
それだけで、自分でも驚くほど鼓動が早まるのがわかった。
ふと見遣れば、シーツからはみ出た肩先に見える薄紅色の小さな傷痕。
そう、それを刻んだのは夕べの俺。
早くも薄れはじめたその紅色が、昨夜の記憶をフラッシュバックのように蘇らせる。
無自覚に誘う君の潤んだ瞳、やわらかい唇、しなやかな肢体、そして零れる息の熱さ・・・。
俺だけに与えられたその全てが思い出され、いまさらのように体が熱くなった。


俺の・・・ものだ。


込み上げる想いを押え切れず、薄い花びらのような痕跡にもう一度唇を寄せる。

もっと強く。
もっと鮮やかに。

その痕をより確かなものにしたくて、きつく吸いついた。
思わぬ刺激に君が体を震わせる。
その震えにようやく唇を離すと、そこは再び鮮やかな赤に染まっていた。
我ながら子供じみていると思う。
どんなに痕をつけても、それが俺のものだと示す証になるとは限らないのに。
それでも、こうせずにいられない。

いくら触れても足りない。
触れるたび、もっと欲しくなる。
君の全てを。

捕えても、捕えても、気持ちが加速し続けるんだ。


そのとき・・・
眠っているはずの君の手がすっと動き、抱き締めた腕をきゅっと掴んだ。
俺の胸に擦り付けられた唇が、何か囁くように動くのを感じる。

―――――アイシテマス

そう動いたように思えたのは、俺の気のせいだろうか。
いや、違う。
胸元から伝わる君の鼓動の早さが、その疑問が空振りでないことを教えてくれた。
たまらずその髪に顔をうずめる。
君だけの甘い香りが鼻孔をくすぐって、そして俺の中に消えた。


どうかもう暫くこのままで。
二人で甘く温かい夢をみよう。

ずっとずっと一緒に。
このまま同じ夢をみつづけよう。




fin

スキビ☆ランキング ←参加してみました。よろしくお願いします。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。