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雨が雪に変わるまで (5)

先月、非公式ながらハリウッドからオファーがきた。

“敦賀蓮”の演技を認められ、監督から直接指名された準主役級の役どころ。
ようやくこの時がきた、そう思った。

カインを演じきり、自身の闇から抜け出せた後も、俺はハリウッドという壁に向かってあがいている。
1人の演技者として、そしてクー・ヒズリの息子として、立ち向かい、そして乗り越えていかねばならない大きな壁。
一度は挫けたその壁に再び挑めるチャンスがついにきたのだ。

まだ確定というわけではないがほぼ決定というこの話を受けるか否か打診され、即座にOKした。
壁を乗り越える自信は・・・もうある。

撮影は来年の春から秋にかけての約半年だという。
それを知ってまず頭に浮かんだのが最上さんのことだった。

かつて決して抜け出せないと思っていた俺の闇が彼女によって振り払われたように、彼女の心の傷も悲しみもいつかきっと癒される日がくる。
だとしたら、彼女を癒すのは俺でありたい。
そう望み、俺は彼女の傍に立ち続けた。

3年をかけて少しずつ縮めてきた2人の距離。
立場は相変わらず“尊敬する先輩”のまま。
いまだにラブミー部員の最上さんが、恋や愛という言葉を聞くだけで逃げ腰になるのも相変わらず。
けれど、この3年の間に少しずつ確かに何かが変わり始めているのを感じていた。

今ではゲストルームに彼女の荷物が当たり前のように置かれている。
食事を作ってくれる回数はもちろん泊まっていくことも増え、次第にこの部屋にいることが最上さんの中で“日常”になりつつある、そう思えるのが何より嬉しかった。

いっそこのまま俺のものになってくれればいいのに。
何度もそう思った。

3年間、秘め続けた想いは、もう俺の心を引きちぎりそうなほどにまで大きくふくらんでいる。
けれど・・・。
下手に行動に出てすべてを失ってしまうのが何より怖くて、これまで足を踏み出せずにいた。

いつまでも今までのようにいられないことはよくわかっている。

ある日、彼女の傷が癒えるときがきたら。
ある日、俺が今の状況に耐えきれなくなるときがきたら。

すべてが変わるその瞬間が、ゆっくりとしかし着実に近づいているのを感じていた。


本人はまったく気付いていないけれど、わずか3年の間に最上さんは驚くほどきれいになった。
花が開花するようにどんどん美しくなっていくその周りには、とんでもない勢いで馬の骨が増え続けている。
なかには手強い輩も多い。
そんな最中に半年も離れていたら、いったいどうなることだろう。

もし俺がちょっと目を離した隙に、誰かが彼女の傍に入り込み、すべてを奪ってしまったら・・・。
考えただけで恐怖に震える。

もう限界、だった。

ぜったいに離したくない。
彼女の隣は誰にも譲れない。
譲りたくない。
たとえ一瞬でも。

こんな想いを抱えたまま半年も離れて、果たして自分が正常でいられるのか。
正直、自信がなかった。


だから――――考えに、考えに、考えに、考えて。
好きだと言おうと決めた。

3年の間に縮んだ距離に少しだけ自信を持てていたのもある。
とにかく約束がほしかった。

どういう形でもいい。
彼女に俺を選んでほしかった。


決心してすぐ、誰にも言わずに俺はこっそり指輪を用意した。
まだ婚約指輪でも結婚指輪でもないけれど、大事な想い出を込めたアイオライトの指輪。

最上さんが成人を迎える今年の誕生日、俺は彼女にこの指輪を贈ろう。
そして、彼女の前にひざまずき、隠してきた真実を打ち明け、君の隣は誰にも渡したくないと、何が起きようといつまでも君を愛し守り続けると約束しよう。

そう、決めた。



それなのに・・・。






(続く)

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