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雨が雪に変わるまで (4)

「…で、最近敦賀さんとはどうなってるわけ?」

敦賀さんの家から荷物を引き上げた翌週、キュララ以来3年ぶりにモー子さんと共演するCMの撮影があった。
せっかくモー子さんと会っているのに心が晴れないなんて・・・こんなこと初めて。
無理にはしゃいでみたけれど、モー子さんはそれが似非笑顔だってすぐ気づいたみたい。
触れられたくなかった話をいきなり直球で振られ、思わずサーッと顔が青ざめるのが分かった。

「なにかあったんでしょ?まったく、なんて顔してるのよ。ひと目見てわかったわ。撮影中もそんなだったら引っぱたいてやろうかと思ったけど、さすがにそこは上手くごまかしたわね。それは褒めてあげる。
にしても、あんたがそんな顔するなんて・・・いったい何があったの?どうせあの人絡みなんでしょ?」

撮影が終わり、二人いっしょの控室に戻るとすぐモー子さんは私にそう声をかけてきた。

すぐ気づくなんてさすが親友!なんてうれしかったのはほんの少しだけ。
本当は複雑。
だってぜったいに気付かれたくなかったから。


* * * * *


敦賀さんからはTBMで偶然会った日の夜、さっそく電話をもらった。

「昼は、忙しいときに声をかけちゃってごめんね。もしかしてなにかあった?あのとき顔色があまりよくなかったみたいで気になったんだ。仕事、忙しいの?」

心配してくれるその声を聞き続けるのが辛かった。

「いえ、大丈夫ですよ。あのときは本当にたまたま時間がなくて。私こそちゃんとご挨拶できず失礼しました。」
どうしても口調が他人行儀になってしまう。

「そうか・・・。それならいいんだけど。なんだか様子がおかしかったから。」

何かを感じているようだったけど、敦賀さんはそれ以上追及してこなかった。


「そうそう、こないだ話したとおり明日から海外ロケで1週間ほど日本を留守にするんだ。携帯の電波もろくに届かないような雪山での撮影でね。食事もちゃんと摂れないと思う。だから・・・悪いけど来週帰ってきたら、また食事を作りにきてくれないかな。」

耳にやさしい穏やかな声。
その一音一音をかみしめる。

「はい・・・わかりました。」

承諾の返事をして電話を切った。

でも―――――。
行くつもりはなかった。


敦賀さんは昨夜日本へ帰ってきたはず。
荷物をすべて引き上げたことにも、もう気づいていることだろう。
でも、敦賀さんからの電話が入るプライベートの携帯は電源を落としたままにしている。

ただの後輩としてちゃんと挨拶できるようになるには、もう少しだけ時間がほしいから。



* * * * *



「ほら、その顔。どう考えてもなにかあったってことじゃない。いったいどうなってるわけ?もしかして・・・あの人、ついにあんたに何かやらしいことでもしでかしたの?」

「ついに???やらしいこと???何言ってるの!?モー子さん。敦賀さんがそんな破廉恥なことするわけないじゃない!第一、私と敦賀さんはただの先輩後輩なのよ。ううん。それに、なにより、敦賀さんみたいに素敵な大人の男の人が、私みたいな地味で色気のかけらもないお子様を相手にするわけないじゃない。コスメ・デ・マジックがかかってるときならまだしも、普段の私なんて誰も女優だなんて気付かない、ただのつまんないぺちゃぱい女なんだから!」

衝動的にそこまで一気に叫んだ私は、こちらをじっと見つめるモー子さんを見て、ハッと我に返った。

「・・・ごめんなさい。でも、ほんとに何でもないの。何にもないのよ。」
言うだけ言ったら力が抜けた。へなへなとその場に崩れ落ちてしまう。

「まあ、それだけ声を出せるならまだましね。よかったわ。そんなんでも黙って暗い顔されてるよりずっといいもの。」
モー子さんがいつになく優しい顔で微笑み、それから真面目な顔で私を見る。

「あんたね・・・。昔からそうだけど、いくら無自覚っていったって限度があるわよ。“今、注目度NO.1の人気美人女優”なんて言われる今のあんたを見て、誰が地味でお子様だなんて思うのよ。ぺちゃぱいはともかく。」

はあ・・・と呆れ顔で大きくため息をつくモー子さん。

「でも・・・。」

「まあ、それはいいとして・・・。いずれにせよ何かあったっていうのは明白なんだから、さっさとぜんぶ正直に話しちゃいなさい。ほら。」





(続く)

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