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雨が雪に変わるまで (2)

(・・・いやだ。いやだ、いやだ、いやだ!)

蓮の笑顔を認めた瞬間、キョーコの胸の内に言いしれぬ寂しさと不安がこみ上げてきた。

(このままここにいちゃいけない)
恐怖が心を支配する。

「あ、あの・・・ごめんなさい。前の収録が押してたせいでちょっと急いでるんです。本当に申し訳ないのですが、こちらで失礼しますね。」


いぶかしげな蓮の視線を笑顔で振り切り、気持ちが顔に表れぬよう必死にその場を繕ったキョーコは、そのまま全力でその場を逃げ出した。


廊下を駆け抜けながら携帯の電源を落とし、頭の中で何度も何度も蓮の笑顔を思い返す。

(敦賀さん、神々スマイルしてた・・・。あのヒトに・・・。)
胸の奥がひどくざわざわする。


(深見・・・恭子さん・・・。そっか。あのヒトなんだ。あのヒトが敦賀さんの“キョーコちゃん”だったんだ。)
不思議なくらいストンと腑に落ちた。
(でも、まさか誕生日まで同じだったなんて・・・。)



ショックだった。
けれどもっとショックな出来事が収録後に待っていた。
“坊”の姿で、再び蓮に出くわしてしまったのだ。
逃げ出すに逃げ出せない状況のなか、蓮は“坊”に告げた。


「来月、告白しようと思うんだ。」
(・・・え?今、なんて?)
「彼女の20歳の誕生日に告白する。君のおかげでようやく決意できたよ。今まで相談にのってくれて本当にありがとう。」
(・・・う・・・そ。)


「そ、そうか。ついに決意したか。がんばれよっ、敦賀君。僕も親友として応援してるからな。大丈夫。君ならきっと上手くいくよ。」
動揺する心を必死に抑えながら作り声でそう返すのが、キョーコにできる精いっぱいだった。



* * * * *



―――いつか、こんな日がくるとわかってた。


初めて“坊”が恋愛相談を受けたときから、ちゃんと覚悟はしていたつもりだった。
それなのに・・・自分でも思いがけないくらいショックだった。


なぜそんなにもショックなのか。その理由を考えるより先に、まず思い浮かんだのは敦賀さんの家のこと。
「私・・・敦賀さんの家にいろんな荷物を置いたままにしてる。」
いけない、と思った。


敦賀さんが何年も片思いした相手“キョーコちゃん”がこの部屋に入ったときに誤解を招いたりしないよう、完璧に自分の形跡を消し去ってしまわねば。そうしないと、敦賀さんに・・・恩を仇で返した後輩として、憎まれてしまう・・・。
それだけはいやだったから。


「ただの家政婦でも、誤解の種になっちゃうかもしれないものね」


あなたと敦賀さんの邪魔はしないから・・・・・・。
ただ・・・せめて、仕事場で挨拶を交わせるくらいの後輩でいることだけは許してください。


頭に浮かぶあのヒトの笑顔にそう願いながら、冷凍庫に保存していた料理ストックをすべて保冷バッグに詰め、私はその家を後にした。



明日、この手に持った鍵を松島さんに返せば・・・すべてが終わる。




(続く)

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コメント

  • 2014/10/17 (Fri)
    22:48
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