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キスがその答え

恋したくなるお題」様よりお題を拝借いたしました。



あれからずっと敦賀さんに会ってない。
何とか会わないで済むように必死に避けているんだから当然なのかもしれない。
でも………。
会えないことにどこか傷ついている自分がいる。


あの日――――。
おつかいを頼まれた撮影所に敦賀さんがいることを知って、思わず現場に足を向けていた。
これも演技の勉強だと自分自身に言い訳をして、気が付かれないよう影からそっと姿を見つめる。
真剣な眼差しで演技を続ける敦賀さんの一挙一動すべてを見逃したくなくて。
瞬きもせずに見つめていた。


昔の私は、好きという気持ちを原動力にがむしゃらに相手を追いかけていた。
――――あれが恋なら

今はただ、ふと触れた温もりだけを拠り所に、溢れ出しそうに募る想いをひたすら押し殺す。
――――これは愛だと思う。

クルシイ
クルシイ
クルシイ

いつまでこんな気持ちを繰り返すんだろう。
いつか終わりがくるんだろうか。
決着のつく日がくるんだろうか。

そんな想いに苛まれながら、敦賀さんの姿を瞳に焼き付けていた。
まさかそれをショータローに見られていたなんて。
気持ちを全部、見抜かれてしまうなんて。

そのショックも覚めやらぬときにされた、あり得ないショータローからの二度目のキス。
でも、その衝撃すらすべて打ち消してしまった敦賀さんからのキス。

…………敦賀さんからのキス。


思い出すたびそっと唇に指先を触れる。
途端に記憶が蘇り、頭の中がじわんと痺れ、視界が鈍く曇っていく。
何かひどく重いものが被さったような苦しさが胸を締め付け、目の前がますます滲み歪んでいくのを感じた。

クルシイ
クルシイ
クルシイ

これが愛なんだ。
苦しくて、辛くて、切なくて、やるせなくて。
それでも心のすべてが敦賀さんを求めてる。
でも………。

(敦賀さんには好きな人がいる。私と同じ名前の人。………私の知らない誰か。)

その事実に心が深く埋もれきって、窒息してしまいそうだった。



コンコン

叩かれたノックに、え?と顔を上げる。
誰だろうと問いかける間もなく、勝手に開かれた扉。

「…………う……そ。」
「うそじゃないよ。………最上さん。」


――――そこにいたのは、ずっと避けていた敦賀さんその人だった。





『避けられてる。』

間違いないと思う。
これだけ必死に追いかけても一か月近く後姿すら見られないでいるのだから。
そのうえ社さんから投げてもらった食事依頼もなんだかんだと理由をつけて拒否されている。
だからもう確実だ。

――――俺があんな風に無理やりキスしたせいで……。

「いやっ!」と叫んだ悲痛な声が耳から離れない。
全力で逃げ出していく後ろ姿が頭から離れない。
それでも彼女の姿を求めて、俺は夢遊病患者のように時間の許す限り事務所をさまよっていた。


「蓮、今日は確実に事務所にキョーコちゃんがいるから。」
食事もろくにとらなくなった俺にさすがにたまりかねたのか社さんが言った。

「お前の撮影が急にオフになったことは伏せてある。ついでに別ルートからラブミー部に仕事を依頼して、キョーコちゃんを事務所に缶詰め状態にしておいた。それでも上手く会えるかどうかはお前の運次第だと思うけど……。」

向けた瞳がよほど輝いていたのだろう。
社さんはやわらかく微笑むと、俺の肩をぽんと叩く。

「何があったのかはしらないけど、一人で抱え込むな。俺にできることがあれば何でもするからさ。って言っても、できることなんてこの程度がせいぜいだけどな。」
「ありがとうございます。充分です………。」

頭を下げて、ラブミー部室へ向かう。
できるだけ目立たないように。
彼女に勘付かれないように。

会ってどうする?もっと嫌われるだけじゃないのか。
そう思う気持ちもないわけではない。
ただ、少なくともあんなことをした真意だけは伝えたい、伝えなければならないと思っていた。

――――あのキスは一時の激情じゃない。堰を切って溢れ出した君への想いのすべてなんだ。

もう抑えきれなくなった俺の本当の気持ちを。





「敦賀さん………っ!」

突然のことに身体が竦んで動けない。
ずっと避けてきたのに。
今日だって、敦賀さんは1日中外で撮影だって確かめて、それで事務所の作業を引き受けたというのに。
それなのにどうして?
どうして敦賀さんがここに?

そんな疑問よりなにより、こうして会って、顔を見て、声を聞いてしまうともうダメだった。

「………最上さん。」

優しく名前を呼ばれればなおのこと、この1か月何度も何度も反芻してきた想いがとめどなく溢れてしまう。
胸の奥からせりあげてくる塊に押し出された涙を振り払おうとした瞬間、目の前に大きな体がしゃがみ込み、同じ高さから私を見上つめた。

「俺の話を聞いてくれないか。」
「イヤです。」
「聞くだけでいい。」
「イヤ。」
「お願いだ。」

イヤイヤと頭を振りながら、両手で耳を塞ごうとする。
その手を敦賀さんはそっと掴んだ。
触れる指先のひんやりとした感触に、言葉が止まる。

「この間はごめん。」
「謝らないでください。そんな風に言われ…「でも、後悔はしていない。」」
「え?」
「あんなことをしておいていったい何を言ってるんだって思われるかもしれない。でも君にはちゃんと言っておきたい。俺の気持ちをわかっておいてもらいたい。」

言葉を挟む余地もなく、敦賀さんが話し続ける。

(………なに………を?)

返そうとした言葉も、声が掠れて音にならない。
その合間にも、敦賀さんは一人勝手に次々と言葉を投げつけてきた。

「あのキスは一時の激情じゃない。」

(この人は……いったいなにを言っているの?)

イミガワカラナイ
ワカルワケガナイ

「あれは、堰を切って溢れ出した君への想いのすべてなんだ。」

シンジラレナイ
シンジラレルワケガナイ


「君を好きだから。だから耐えられなかった。だからあんな風に……キスをした。」

キミヲスキ?
タエラレナイ?
ダカラキスヲシタ?

思いもよらぬ言葉が敦賀さんの唇から放たれ、次の瞬間大粒の涙がぽろりと流れ落ちた。



「………ひどい。」






(つづく)
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