始まりの合図のキス

恋したくなるお題」様よりお題を拝借いたしました。



なに、これ。
どういうこと?
いったい何が………何が起きているの?


敦賀さんの唇が私のそれに触れてる。
触れてるっていうか、これって………。
これってキス?
キス、だよね?

「………もう限界だ。」

苦しげに呟く声が聞こえる。
意味が、わからない。
どうして?
敦賀さんは一体何を考えて、どういうつもりでこんなことをしているの?

頭が混乱しすぎて身動ぎひとつできない。
その合間にもキスはどんどん深くなり、身体の力が抜けていく。
好きなのに。
好きだから。
拒めない。

そのとき――――――。

「………キョーコちゃん。」

一瞬唇が離れ、吐息と共に吐き出された霞のような囁き。


きょうこちゃん?
今、きょうこちゃんって言った?
きょうこちゃんって………。
昔、耳にした敦賀さんの好きな人の名前、だ。
私と同じ名前の………人。

ズキッ!

突き刺すような痛みが胸に走る。
その痛みから逃れるように、必死に顔を捩った。

「……いやっ!」

(身代わりなんてイヤ!)

想いが口から飛び出し、一気に涙が込み上げる。
そのまま全力で敦賀さんを押しのけた。

(……え?)

思いがけないほどあっさり、反動もなくいとも簡単に押しのけられる大きな身体。
驚いて顔を上げた瞬間、敦賀さんと視線が合う。

「ごめん。こんなつもりじゃ………。」

漏れ出た謝罪の言葉。
瞳に浮かぶ僅かな逡巡。
はっと顔を歪め、敦賀さんは1歩、2歩とよろめくように後ずさった。

(ああ、やっぱり。)

あの時と同じ。
私とその人を、“間違え”たんだ。


ズキンッ!


もう一度。
さっきよりもっとずっと強く胸に痛みが走る。

キスされたことよりも、”自分じゃない”というそのことが何よりもショックで、私は思い切り背を向けてその場から逃げ出した。





(つづく)

七夕に向けてなにかできないかなあ、と思ったのですが、なかなか創作の時間がとれず。
そんななか少しずつ書き溜めていたお話をぽつりぽつりとUPしたいと思います。(確実に七夕のタイミングは逃しますがw)
10個のタイトルに合わせてストーリーを考えていくという、私にとってはなかなかハードルの高い"お題拝借"。
ちゃんとまとまるよう祈りつつ……。
長編のカテゴリにしていますが、一話の量が少ないので全体的には中編くらいの長さかな?

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