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つねの香炉に草の葉を炊く (中編)


すみません!前後編でまとめるつもりが、今日校正していたらなんだか長くなってしまい……。後編⇒中・後編の分割更新に変更しました。
お許しくださいませ。



とまあ、そんな風に思っていた数か月前。


俺は必死になってスケジュールを調整し、根回しを進め、なんとか蓮とキョーコちゃんを某テレビ局の開局60周年記念ドラマで久しぶりに共演させることに成功した。
相手役とまではいかなかったが、それなりにツーショットの多い役。
局としても力の入った作品だから、撮影期間も長いし、ロケもがっつり入っている。
合間合間にさりげなく”個人依頼”で食事作りもお願いし、ロケ先でも食事を共にして……。
そうやって二人の時間がとれるよう必死に画策した。

いいか、蓮。この機会を逃すなよ、思い切って追い込んでいけよ。
と、はっぱをかけるつもりで。

そう、はっぱをかけたんだよ、俺は。
そして………


結果空しく”いい先輩”から卒業できぬまま、アイツは打ち上げの日を迎えた。

言わせてもらうなら、蓮は決して頑張らなかったわけじゃない。
俺から見たって明らかにアイツは全力を出していた。
プライドもなにもかもかなぐり捨て、やっきになって(やけになったともいうのか?)繰り返す“虫よけ”対策&アプローチ。
まあ、微妙に虫よけのほうばかりに力を入れすぎって気もしたけれど。
それでもこれまでに比べればかなり攻めていたと思う。

キョーコちゃんの隣を定席にし、
空いた時間は傍から離れず、
周囲の誰も寄せ付けない。

先輩からの演技指導という名目を最後まで外せなかったのは惜しいところだけれど、
それでも今回数年ぶりに噂が立ったのは、その努力が実を結んだようなものだと思う。

実を結んだ……?
いや、結んでないけどさ。


とにかく言えることは………相手があまりにも難攻不落すぎるんだ。


*


「社さん………。LME的にあれは放置しておいていいんですか。」

ドラマが開局記念企画だったせいだろうか。
打ち上げは、その名目を遥かに超える大規模なパーティになった。
出演者はもちろん、スタッフ、スポンサー、局関係者、とにかく多くの人が集まっている。
その中でひときわ目を引く若い男性の一群。
その中央に困り顔で佇むキョーコちゃんを見つけた蓮は、大きなため息とともにそう言った。

「ああ………普通の女優だったら、速攻スキャンダル防止策がとられるんだろうけどな。なぜかキョーコちゃんにはそれがかからないんだよ。ほら、なんだかんだいいながら例の天然っぷりで個々のアプローチを総スルーしてるだろ。下手に事務所で策をとろうとしたら、かえって藪蛇になって面倒事が起きるんじゃないかってことらしい。」

本当は社長の”あの子については一切策をとるな。放っておけ”という鶴の一声があったというのは、蓮にはぜったい言えない秘密だ。


「それにしてもあの天然っぷり。いったいいつまで続くんですかね………。」

どこか遠いところを眺めて呟く蓮に思わず同情したくなる。いや、している。
そうだよな。
あの天然っぷりで蹴散らされてる筆頭は、実はお前自身だもんな。

「蓮。」

さっそくキョーコちゃんのもとへ歩みかけた蓮を呼び止める。
瞬間、蓮の肩がぴくりと揺れた。

「今日を逃すとしばらくチャンスはないぞ。そのつもりで全力でいけよ。」
「………社さん。」
「ん?」
「俺、ここんとこずっと全力以上の全力を出してるつもりなんですけど。」

そうだったな。
たしかにお前の言うとおりだ。

返す言葉もなく、俺は黙って蓮の肩をぽんと叩いた。
それを受けて俺を見た蓮の視線が情けないほど生気に欠けていたのは、たぶん気のせいじゃないだろう。



「やあ、最上さん。」

押し寄せる男たちに引き気味に相手をしていたキョーコちゃんに、蓮が少し離れた背後からさりげなく声をかける。

「あっ!敦賀さん!」

声を聴くなり振り向いたキョーコちゃんがさっそく小走りに駆け寄ってくる。
そりゃ、蓮に話しかけられたらキョーコちゃんとしてはたいして付き合いのない男達の相手はそこそこに、蓮のもとへと向かうにきまってる。
それにしても、満面の笑顔、紅潮した頬、少し潤んだ瞳。
どうみても恋する乙女といった風情全開なのに、いったいどうしてダメかなあ……。

蓮の身になって、俺は大きく深くため息をつく。

「いらしたんですね。よかった。」

前に立ったキョーコちゃんが小首を傾げ、それはそれは嬉しそうに微笑んでみせる。
途端に隣からカチリとスイッチの入る音がした。
………ような気がした。

思わず視線を転じれば、キョーコちゃんのいない場所ではぜったいに出ない”最上級のキラキラ笑顔”(もちろん、対スポンサー向けの人工キラキラじゃない、天然モノの超キラキラのほうだ)がこれでもかと振りまかれている。

おい、さっきの情けない表情はどこへいった。

「今日のドレス、すごくよく似合ってる。お姫様みたいで素敵だよ。」
笑顔とともに、さりげなくキョーコちゃんの心をくすぐるキーワードを盛り込むのも忘れない。

「このイヤリングも似合ってる。」
そんなことを口にながら、蓮は片手をそっと耳もとに差し伸べキョーコちゃんを覗き込む。
ぽんっと目に見えて赤くなるキョーコちゃん。

お前………ほんと今日は頑張ってるな。
うん、いいぞ。
その調子でいけ!
無責任なエールを胸に、俺もキョーコちゃんに挨拶の笑みを向ける。

「もう挨拶回りは済ませたの?」
「いえ、さっききたところなんですが、ちょっと捕まっちゃって動けなくて。」

困ったように眉を下げたキョーコちゃんを見て、蓮がさりげなく視線を背後に伸ばした。
わずかに距離を置いて、それでもしっかり様子を窺っている先ほどの男たち。
ふうん……と舐めるように氷の視線を投げかけ、蓮がソイツらを威嚇する。
途端にびくりと顔をそらす彼ら。

ほんと、お前”虫よけ”に関しては最近えげつないくらい露骨になってきたよな。

「よかったら俺にエスコートさせてくれますか?」
視線を戻したと思ったら、そう言って軽く腰を屈め片手を差し出す王子ポーズ。
さっきの威嚇顔はどこへやら、キョーコちゃんの目線を掴むなりあっさり王子顔に戻っているあたり、ほんとお前って根っからの役者だなとつくづく思い知らされる。

「あ、あの社さんは……?」

やさしいキョーコちゃんは俺のことも忘れずちゃんと気にしてくれる。
あ、でもほんと気にしなくていいから。
背後から蓮が今度は俺に向かって冷気飛ばしてるから。

「いや、俺は先にスポンサーさんのところに挨拶に行っておきたいから。ちょうどいい機会だから、キョーコちゃんは蓮といっしょに回ってきてくれる?挨拶しておいたほうが後々いい人とか、蓮はよーーーーーっくわかってるからさ。」

あ、冷気が和らいだ。

「社さんもこう言ってるし、じゃあ行こうか。」

蓮はそう言ってさりげなくキョーコちゃんの腰に手を回した。
そうして例のヤツらの方に数歩進み、彼らを含む周辺の注目が自分たちに集まっているのを確信するや否や、

「あ、ちょっと待って。髪に………。」

そう言ってその場に足を止めた。






(つづく)

後編冒頭のシーンが書きたいためだけに作ったお話です。後編は明日、同じ時刻にUPします。(今度こそホントに後編です)
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