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邪心

※タイトル変更
ひどい頭痛でPCを見るのがツライ&頭が働かない(いつものことだけど)のWパンチで連載原稿が思うように進まず……。
お茶を濁すようで恐縮ですが、さらっと書いた敦賀さんの独白的短編をお届けします。



俺が春の陽だまりって呼ばれているのは知っている。
でも、俺がそうなら君はきっと真冬の陽だまりだ。


陽光の暖かさを、春の陽だまりよりもずっとずっと大切に感じられる場所。
そこにいるだけで幸せを感じられ、冷え切った身体を抱えた誰もがそこに行きたいと願う場所。
そんな真冬の陽だまり。

それが君だ。

君のそばにいるだけで。
君の笑顔をみるだけで。
君と言葉を交わすだけで。

ひび割れた心が癒されると感じた人がどれだけいるか。
たぶん君はわかっていない。

そして俺が………

どれだけそれを独占したがっているか
君は全然わかっていない。


*


今夜も、いつものように夕食を作りに来てくれた君。
食後の珈琲を二人で楽しんで。
まだ時間が大丈夫だからと、古い映画をみはじめたときにかかってきた俺宛の仕事の電話。
少し席を外して戻ってみたら、いつの間にか君はリビングテーブルにうつぶせになって眠りこんでいた。

そういえば、最近出演しているドラマが画にこだわる監督のせいで撮影が押して大変だって言ってたっけ。
今やなかなかの売れっ子になった君のことだから、スケジュールも相当詰まってきているだろうに。
それなのに今でも依頼すればわざわざこうして夕食を作りに来てくれて………。

(ごめんね。でも、我儘かもしれないけどそれでも君に会いたいんだ。)

申し訳ないと思う心の裏で、そう食い下がる俺がいる。
だって、こうでもしないとなかなか二人の時間が作れないから。

(二人の時間、か。………恋人でもなんでもないのにね。)

すうすうと寝息を立てる君を見つめながら心の中で呟けば、自然と自嘲の笑みが零れ出た。
それを振り払うように持ち上げた手が、ふと君に伸びる。

「んんっ―――」
僅かに開いて、誘うような吐息を漏らす桜色の唇。
そこに触れたいと希う私欲とのせめぎ合いが始まり、
惑う心につけ込むように、今ならばれないと悪魔が囁く。

(ほら。恋人でもなんでもない男の部屋で、こんな無防備な姿を見せたらだめだよ。)

――――ましてや君を好きな男の部屋で。


………と。

まだ触れてもいないのに、まるで俺の声が聞こえたかのように君の眉がぐいと寄った。
そのはずみか、はらりと落ちた前髪。
驚いて、ふれかけた指をそのままにじっと見守っていたけれど、相変わらず君は規則正しい寝息を重ねていて。
思わずふうと安堵の息が零れた。

そしてそのまま、そうっと、そうっと君の寝息を確かめるように指先を向ける。
落ちた前髪が瞼にかかっているのが気になるのか、寝入ったまま何度も眉を寄せる君。
けれどまだまだ起きそうにない。
でも、髪が睫毛に触れるたび見せる表情があまりにもイヤそうで。

だから………。
しかたなく………。
その髪をつまんで元に戻した。

まだ君は身じろぎ一つしない。

あと、もうひと房。
まだ落ちている髪をつまもうとして――――ふと、やわらかい頬に薬指が触れた。

はっと息が止まる。
途端にどくどくと湧き上がる欲望。

その頬をこの掌で包み込みたいと。
その唇にとめどなく口づけたいと。
その身体を心置きなく抱き締めたいと。

君とこうして過ごすたび、心に浮かぶのを止められない浅ましい煩悩。
それを打ち捨てて平常心を保つのがどれほど大変なことか。

君にはきっとわからない。

心の中で大きくため息をつきながら。
俺はただ、すやすやと微睡む君の幸せそうな寝顔を眺め続けた。


――――それが今の俺に許されるぎりぎりの距離だから。




いったいどれだけそうしていただろう。
さすがにもう起こさないといけないと思いつつ、
この時間を手放せなかった俺。

あまりにも君が深く眠っているものだから。

声もかけずに、頬をつついてみる。
肩をゆするのでなく、鼻をつまんでみる。
それでもまだ君は目を覚まさない。
まるでわざとそうしているように。
起きようとしない。


だから―――――悪魔がもう一度囁いた。


『こんなところで寝ちゃう君がいけないんだよ。』
そう心の中で呟いて。

『まだ目を覚ましませんように。』
そう心の底から願って。


ありったけの勇気と覚悟とともに、静かにそっと口づけた。




――――なんて…………。


君の傍にいるだけで、ひび割れた俺の心には温かい光が染み入ってくる。
ずっとそう思っていた。
冷え切った俺の心を癒す、本当の陽だまりの温かさを、君だけが持っていると。
そう信じていた。

でも、違った。

君の唇の温かさと
そしてたとえようもない甘さは
そんな想いを遥かに凌駕する、輝きと温もりと甘さと幸福に満ちていた。
満ち溢れていた。


――――ああ、俺はこんなにも君を愛している。




ただ悲しいことに。
俺を癒せるのは君だけなのに。
君が癒せるのは俺だけじゃない。

君の周囲には、傷つき冷え切った心が次々と集まってくる。
森の中にぽっかりと現れた真冬の陽だまりに、我先に集まる鳥や獣たちのように。
君はそのすべてを拒まず受け入れ、癒していく。

俺だけじゃない。
俺だけじゃ………ない。


わかっていても。
心が痛い。
痛くても、捨てられない。
捨てられる、はずがない。

決して独り占めできない、この陽だまり。

それならせめて、俺はようやく手に入れたこの場所を守り抜こう。
先輩という名のもとに、君が一番心を許してくれる場所。
どんな男よりも、君が一番近づいてくれる場所。
俺はこの場所をぜったいに手放さない。


そう――――。
たとえそれが俺の願う形ではないとしても。


手に入れる幸せは、失くす不幸せと隣り合わせだ。
失くすくらいなら、初めから手に入れられなくていい。


だろう?


だから俺は、誰よりも浅ましい願いをもう一度心の奥に閉じ込める。
悪魔の囁きに再び負けて、すべてを失うような目に遭わないように。
閉じ込めて、抱え込んで、誰にも見せず隠し続ける。



―――――君のすべてを俺だけのものにしたいという強い想いを。







Fin


敦賀さん、悶々とさせてごめんなさい。

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コメント

  • 2016/06/07 (Tue)
    20:10
    これまた、きゅんきゅん。

    --ましてや君を好きな男の部屋で・・・

    ・・・で?  ・・・・で?  ・・・・・・・で?



    何をしようというのかね?

    なんて、滅茶苦茶焦りました===!!

    (↑今、脳内暴走特急に付き、すみません)

    またまた、好きなフレーズです。こんなせりふ直に言えないけど、言って欲しいと思うのはファン心理でしょうか?

    切ないねえ・・・蓮さん・・・。

    かばぷー #- | URL | 編集
  • 2016/06/09 (Thu)
    16:03
    Re: これまた、きゅんきゅん。

    > 何をしようというのかね?

    ふふふ。
    そこで何もできないのが、真の「へたれ」ですよ。

    敦賀さんのセリフ、気に入っていただけて良かったですー♪
    ほんと、壁際でもべッド上でもどこでもいいんで、がっつりキョコちゃんを追い込んで、耳もとで囁いてもらいたいもんです。(「今すぐどうにかしてあげようか」みたいに冗談にせず、ね!←ここ重要)

    ちなぞ #- | URL | 編集

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