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Pacing

成立後です。UP後、あれ?という部分があったので、少し変えました。


不意にぱちりと目が覚めた明け方。
巻きつく身体を解いたら、あなたを起こしてしまいそうで。
そのままじっと動かずにいた。

たぶんまだ鳥たちも寝ている、夜明け前の静かなひととき。
私の耳に聞こえてくるのは、頭の上から届けられるすぅすぅという寝息と、耳もとで奏でられるトクトクという規則正しい刻みだけ。
2つの音は、微妙にリズムがずれて音のバランスも悪くて、いわゆる不協和音に近いものだと思うのに。
不思議となぜか心地いい。

あのね。
こうしていると、ときどき気になることがあるの。

私の首の下に腕を敷くと、腕が痺れて痛くならない?
あなたよりずっと体温の高い身体を抱え込むのは、この季節には暑すぎない?
私を抱き締めようとして小さく背を丸めて寝たら、朝起きたとき身体がひどく疲れてない?

心配で……

でも――――
離れたくない。

でも――――
ずっとこうやってくっついていたい。

だって、あなたとこうしていられることが私にとって何よりの幸せだから。



ひとり、あなたを想っているときも。
心、通じ合えたときも。
いつも、いつも。
これ以上ないくらい好き、って思ってた。

でも、そんなのまだまだ序の口で。
会うたびに好きという気持ちがどんどんどんどん強くなる。
今はもう、気持ちが苦しいくらいあふれ出てきて止まらない。


――――あなたのことが大好き。



そんなことを考えたとたん、たまらなくなって。
頬を胸に押し付けた。
ほんの少しの身動ぎでも
眠りの浅いあなたはすぐ起きてしまうから。
そぅっとそぅっと、だけど。


トクトク
すぅーーすぅーー
トクトク
すぅーーすぅーー


聞こえてくる和音。
あなたのこの音を聞けるのは私だけ、だよね?

そう思うだけでうれしくて。
緩む口もとが抑えられない。
頬がカッと熱くなる。

こんな朝っぱらから、息を潜めてベッドの中で、ひとり照れている自分を自覚したら
あまりに恥ずかしくて、ひゃっと声が出かけて慌てて口を噤んで、あなたの息を確かめた。


すぅーーすぅーーすぅーーすぅーー


よかった。
まだ、ちゃんと寝てる。
私もこのまま、もう少しだけ寝ようかな。

だって今日は、珍しく二人揃ってのお休みだから。


そのとき、ふと思い出した”ペーシング”。
出演したバラエティ番組で教えてくれたそれは、
自分の呼吸を相手の呼吸に合わせるだけで、その人が無意識に好意を持ってくれるって。
たしかそんな話だった。

寝ている人に試しても意味がないのはわかっているけれど。
でも、ちょっと試してみたい。
だって………。
あなたにもっと私を好きになってほしいから。

たとえそれが無意識の世界でも。


すぅーーーすぅーーー
スゥーー スゥーー


――――お願い。もっと私を好きになって。


すぅーーーすぅーーー
スゥーー スゥーー


――――どんなに綺麗な人がそばにきても目に入らないくらい。


すぅーーーすぅーーー
スゥーー スゥー


あ…れ…………?
クルシイ。
息が……続かない?


あなたの息は私よりずっと深く長くて。
ハムスターみたいにハアハア息が短い私は、うまく合わせることができない。
頑張っても、息が続かなくてだんだん苦しくなってくる。

そんな………ぁ。

ショックの頭に『呼吸が合わない』なんてイヤな言葉まで浮かんできて。

なんだかすごく悲しい。
苦しい。
淋しい。

気が付いたら、じわりと涙まで込み上げてきて。
つい―――。
せっかく健やかに眠っていたあなたに、ぎゅっと抱きついてしまった。


「……どうしたの?」


不意に耳もとで聞こえるやさしい声。
大好きな人の大好きな甘い声。

ごめんなさい。
結局、起こしちゃった。


「ううん。なんでもない。起こしちゃってごめんなさい。」

困って見上げる私の頭を、あなたの掌がそっと包み込む。
そうして、息が苦しくなるくらいぎゅっと抱きよせて。

「離れないで。」

って囁いてくれた。


そんなに強く抱きしめられたら。
息ができなくてクルシイのに。

でも。

今はそれがウレシイ。


「あのね………。」


――――大好き。


くいくいと胸もとから耳もとまで頭をずりあげて。
あなたの頭をぎゅっと抱えて。

「離れないで。」

同じ言葉を、囁いた。


呼吸を合わせるペーシングには失敗したけど。
ペーシングはそれだけじゃないもの。

言葉そのものを合わせるのも、
同じ動作を繰り返すのも、
それもやっぱりペーシングなんだって。
あのとき、そう聞いた。

だから――――。



「離れないで。」


あなたと同じトーンで、そう囁く。


お願い。

ずっと、ずっと。
こんな風に抱きしめていて。

ずっと私を好きでいて。


ずっと。


「離れないで。」





Fin

昨日に続いての思いつき短編。校正をちゃんとしていないので、追ってこそこそ修正すると思います。

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