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[七夕記念] 織姫を守りぬけ!?

「て、天女・・・!?」」

夕刻、早朝からの仕事をようやく終え、事務所へ戻ってきた社と蓮。
社に続き早足で中に入ろうとした蓮は、入り口で急に立ち止まった社の背中に思いきりどしんとぶつかった。

「うわっ。どうしたんですか?社さん。」
当の社は口をぽかんと開けたまま立ち尽くしている。
その視線の先に目をやった蓮は、そこにそれはもう美しい織姫・・・の格好をしたキョーコを見つけた。


丸く結い上げられた艶やかな髪。
そこには小さな野菊を挿した金色の冠が据えられている。
身に纏っているのは、赤を基調に幾重にも柄が重ねられた色鮮やかな染め模様の唐衣。
裳は織姫らしく二段になっており、踝まで届く細かいプリーツが地紋の美しさを引き立てる。
ふんわりと薄紅色の羽衣を羽織ったその姿は、天女であったといわれる織姫そのままに美しい。


「なんだ、最上さんじゃないか。社さん、あれ最上さんですよ?」
そういうと蓮はキョーコを見つめ、極上の笑顔を浮かべた。

「・・・え?あれがキョーコちゃん!!??別人に変身するのは知ってたけど、今日はまたえらく・・・。天使のとき以上の美しさだなあ。」
驚き顔のまま、社がへえ~、へえ~と繰り返す。


(本当に、なんて・・・きれいなんだ。)


そのとき、社がぽんっと手を叩いた。
「そっか。明日は七夕だもんな。それでキョーコちゃんまた社長に遊ばれてるのかぁ。」
たしかに織姫キョーコは出入りする人間を確認しては声をかけ、優雅な動作で何かを渡している。
おそらく社長から七夕指令を受けているに違いない。


「あ!敦賀さん、社さん、こんにちは。今日もお仕事おつかれさまです!」
2人に気付くや、キョーコがさっそく声をかけてきた。


「やあ、キョーコちゃん、こんにちは。今日はすっごく美人さんだねー。」
「ありがとうございます、社さん。コスメ・デ・マジックの力ってほんとにすごいですよね。それに今日はほら、キモノ・デ・ マジックの力もありますから。」
パワー倍増なんです、と言いながらくるりと回り、へにゃりと微笑むキョーコ。
この姿でのキューティーハニースマイルは破壊力抜群で、蓮は思わず口元を抑えた。

「よく似合ってるよ、最上さん。そういえば・・・織姫って天女だっったっけ。そういう格好をしてると本当に天女そのものって感じだ。」
「!!!!なにおっしゃってるんですか、敦賀さん!それは天女さまに失礼ですっ!」

声を上げたかと思うと、こんどはぽっと頬を赤らめる。

「でも・・・うれしいです。この衣装とメイクをほめてもらえて。」


(いや、衣装とメイクじゃなく、君自身がきれいなんだよ。)
蓮は思うが、あっさりスルーされるのが怖くて声に出せなかった。


「それにしてもほんとに素敵ですよね~。この衣装もメイクも。」
ふわーんと夢心地の表情を見せたキョーコだったが、すぐ「あっ」と思い出したように声を上げた。

「あの・・・敦賀さんも、社さんも、お疲れのとこ恐縮なのですが、こちらに協力していただけませんか?」
そう言うとキョーコは2人に、なにやら翼を広げる鳥の形をした紙を見せた。


「これは・・・なに?」「あれ?短冊じゃないの?」口ぐちに疑問を投げる2人。
「短冊は短冊なんですが、形をかささぎにしたものなんです。」
「かささぎ?また、どうして?」
「えっとですね。

七夕伝説でかささぎは大変重要な役目を果たしておりまして。
年に一度織姫と彦星が会える夜、2人を隔てる天の川にかささぎが集まり、2人が会えるよう、その翼で橋を作ると言われているんです。
そこで、今回はかささぎに見立てた短冊にLME社員それぞれが願いを書き、“みんなで力を合わせて願いを叶える”大いなる橋をその短冊で玄関に描こうじゃないか、という企画になったそうで・・・そのお手伝いをラブミー部が頼まれたんです。」

そういうわけで、こちらに願い事を書いていただけますか?と、キョーコは2人に短冊を手渡した。


「なるほどね。よくわかったよ。それはぜひ協力してあげないとね。でも・・・織姫と彦星を結びつけるかささぎ役っていうのが個人的にはちょっと気に入らないな。」
「は?」
「彦星ならまだしも織姫・・・つまり君の恋の橋渡しをする役目なわけだ。そんな役回りはちょっとね。もっとも君と1年に1度しか会うチャンスがないんじゃ彦星だって勘弁願いたいけど。」
そう言うと蓮は、夜の帝王顔で軽くウインクした。

「な、な、な、なにいってるんですか、敦賀さん!またそうやってからかって。そんな台詞簡単に口走っちゃだめです。あなたは敦賀蓮なんですよ!
芸能界一いい男といわれ、抱かれたい男NO.1に輝く人なんです。もしわたしじゃなければすっかり勘違いするところです!!!」


(勘違いじゃないんだけどな。)

言っても無駄なので、仕方なく話を変える。


「ところでこれってまた社長企画?」

「ええ、そうなんです。社長の企画にしては今回の趣旨はわりとまともですよね。ただ・・・」
そういうとキョーコはうつむいた。


「ただ・・・もし全社員分集まらなかったら、この恰好で明日の収録にいけって言われてるんです。
この恰好はたしかに大好きですけど、さすがに明日は・・・。
だって、明日の収録って、音楽番組のアシスタントのお仕事なんですよっ。それも夏の特番。せっかくいただいた大舞台にこの恰好って・・・あり得ないですっ!」
いくらなんでもこれじゃ、悪目立ちし過ぎです・・・とぶつぶつつぶやくキョーコ。


「それを“七夕だからちょうどいいじゃないか”なんて完全に他人事で。アシスタントの分際で、そんな誰よりも目立つような真似できるわけないじゃないですかっ!せっかくメインアシスタントなんて大役いただいたのに。それも・・・生放送だっていうのにっ!」
改めて怒りがこみ上げてきたのか、だんだん口調がヒートアップしてくる。
せっかくの織姫姿が台無しだ。


「それなのに・・・全然短冊が集まらないんです。もうこんな時間だというのに。」

「それはまたどうして?」
LME社員ならみんな喜んで協力してくれるだろうに、と社がつぶやく。


「それが・・・回収していない短冊のほとんどは若い男性スタッフの方の分なんですが、みなさん声をかけても慌てた顔であっという間に通り過ぎちてしまったり、今忙しいからと立ち去ってしまったりで。
椹さんにお願いして、社内通達していただいたので、みなさん事情はお分かりのはずなんですが・・・。
それともやっぱり、わたしみたいに地味でぱっとしない織姫じゃ、みなさんのやる気も損なわれてしまうってことでしょうか。」
モー子さんが織姫様だったらきっと全然違うんでしょうね。なんで社長はわたしに・・・とキョーコの声がだんだん小さくなっていく。


(ちがう。ちがうよ、最上さん。たぶんその協力してくれないっていう男性陣は、あまりに君がきれいで照れて近づけずにいるか、事情をわかっててあえて協力せず、明日君がその格好でテレビに登場するのを楽しみにしている輩かのどちらかだ。
つまり、いつの間にか社内にも馬の骨を量産していたというわけだ)
嫉妬か怒りかそれとも両方か、表面は笑顔を保ちつつ蓮の体はわなわなと震えていた。


(しかもその格好で音楽番組に出演だって??そういえば、音楽特番のメインアシスタントに抜擢されたって言ってたものな。
ん?まてよ・・・音楽番組で特番って・・・まさかとは思うがアイツやアレも出るんじゃないか?いや確実に出るはずだ。ったく、なんだって最上さんはそんな仕事を・・・。

こんなにきれいな最上さんを見たら、アイツら場違いな恰好だとか口では言いながらきっと・・・。だめだ!そんなの許さない!とにかく絶対に阻止しなければ!!)


ゴオオオオとすさまじい勢いで“闇の国の蓮さん”が召喚され、背後で社がヒイィと音にならない悲鳴を上げている。

(さむい、さむいよ、蓮。空気が凍りついてるよ。心の中が丸見えだよ~~~ぉ。)


ただならぬ空気に、もちろんキョーコの血の気も引いている。

(なんでこのタイミングで魔王・・・?)


そんなキョーコの顔色などまるっと無視し、

「ねえ、最上さん」
蓮が、それはそれはやさしい顔つきで声をかけた。


「その短冊の束と書いてくれてないっていう人たちの名簿を貸してくれるかな。ちょうど今日はもうオフだし、協力するよ。俺が言えばきっとみんなすぐ協力してくれるから。」

(とにかく社内の馬の骨は早々に駆逐しておかなきゃいけないからな。)


が、キョーコはぶるぶると頭を振るわせ答えた。
「とんでもないです!せっかくこんなに早い時間にお仕事が終わられたというのに、敦賀さんにも社さんにもそんなことお願いできません!」

(魔王が召還されてるのに、このうえのこのことお手伝いまでお願いしたらいったいなんと言われるやら!)


「いや、大丈夫だから。今日の仕事は朝が早いだけでラクなものだったし。それに、こういうことでもないと、社員の皆さんと話をする機会なんてなかなかないからね。
敦賀蓮って俳優は、スタッフとはろくに話もしないふんぞりかえったヤツだなんて思われないようにしないと。そういうわけで俺を助けると思って、手伝わせてくれないかな。」
ね、社さんもそう思いますよね?と悪魔の微笑みを見せる蓮に、社も慌ててサポートする。


「そうそう。ぜひ蓮と俺に手伝わせて、キョーコちゃん!みんなにはいつもいろいろなことで助けてもらってるからね。蓮もたまには挨拶しとかないとさ。」


社の言葉に安心したのか、ようやくキョーコが笑顔をみせた。

「ほんとにいいんですか?社さんがそうおっしゃるのなら・・・でも・・・」
それでも固辞しようとするキョーコの手から、蓮はさっと短冊と名簿を奪い取った。
そして「じゃ、いってくるね」と言うなりスタスタと歩き出す。


「キョーコちゃん、蓮もああ言ってることだし、ここは素直に手伝ってもらうことにしたら?それに・・・今日は作業を早く終わらせて、蓮に夕食を作ってあげてほしいんだ。早朝からのロケで、あまりちゃんとしたもの食べられてないからさ。
蓮、キョーコちゃんの料理だとしっかり食べるから。」

社の言葉を聞いたキョーコは、条件反射か織姫の恰好でシャキッと敬礼した。

「わかりました!不肖最上キョーコ、お手伝いいただくご恩返しになるよう、今夜は敦賀さんの晩御飯をしっかりがっつりご用意させて頂きます!」

「うん、よろしくねっ!」
頭を下げると社はあわてて蓮のあとを追いかけて行った。


その後、社内を圧力満点の笑顔とともに闊歩する看板俳優(とその優秀なるマネージャー)の助けで、社員全員分の短冊があっという間に揃ったのは言うまでもない。



* * *



「はい、これ。さっきもらった名簿の分ぜんぶあるから。」
「わわっ、敦賀さん!ほんとに全部集めてくださったんですね。すごい!すごいです!こんなにすぐ集めてくださるなんて・・・。
お二人がいなかったらどうなっていたことかと思うと、なんとお礼を言ったらいいものやら・・・。」
「いや、いいんだよ。たいして手間はかからなかったから。じゃあ、飾り付けも終わらせちゃおうか。高いところは俺に任せてね。」

にっこり微笑む蓮。
(あとは、この姿の最上さんをいかに家に連れて帰るか・・・だな。)


そんな2人を背後から見守る社。

(蓮、お前今ものすご~くあくどいこと考えてるだろ。それ、顔に出てるから。)
小さくため息をつく。

(まあどうせ、このあと上手いことキョーコちゃんを連れて帰る策でも練ってるんだろうけどね。・・・ふふんっ。安心しろ。ちゃんと依頼済だからな。)


不敵な笑みで策を練る担当俳優を横目に、それを上回るあくどい顔つきでにやりと笑う社なのだった。





fin

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