スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Heart rate


思いつきで一気に書いたので校正なしですがお許しを。いちおう成立後です。


石灰色の雲が幾重にも重なった曇天の空にぼんやりと朱が滲む。
その色を映した海の上を時折ゴォーッと音を立てて風が通り過ぎ、そのたびに波頭を白くうねりだしていった。

4月も半ばを過ぎたというのに、今日はひどく肌寒い。
誰もいないのをいいことに俺たちはしっかりと手を繋ぎ、寄せては返す波打ち際を歩いていた。
どうということのない景色も、決してよいとはいえない空色も、それでも君といればひどく美しいものに思える。
握りしめた指先から届く温もりが、たまらなく愛しくて。

ずっとこうして手に手を取って歩き続けていけたらいい。
そう心から願った。

ふと横を見ると、いつも薄紅色に輝いている唇がほんの少し色を失っていて。
ああ、さすがにちょっと寒かったかな、と思った瞬間。
何かを感じたように君が俺を見上げ、ふわりとやさしく微笑んだ。

たまらず俺は握っていた手を引き、君の身体を抱き締め、そしてキスをした。
冷え切った唇に俺の温もりが少しでも流れ込んでいくように。

「はうっ」

きゅっと身体を固くした君は、瞬く間に頬をバラ色に染めて。
困ったように身を震わせる。
そんな君をみていたら、ますますこの腕の中から離せなくなって。
俺は何度も何度も唇を重ねた。

触れるだけのキスと、もう少し深いキス。
最後はくたりと力を抜けた蟀谷に口づけ、「好きだよ。」と囁いた。


いつまでもこうして二人いられたら、どんなに幸せだろう。



*



いつのまにか日はすっかり沈み、切れ始めた雲の裂け目にいくつもの星が姿を見せる。
その光がやけに儚く頼りなげに見えたのは、今日の空模様のせいだろうか。

「私、きっと敦賀さんより先に死んじゃうと思うんです。」

突然そんなことを言いだした彼女に、俺はぽかんと口を開けた。
それは相当間抜けな顔つきだったと思う。
けれど隣の彼女は噴き出すでもなく、いたって真面目な顔つきで空を見上げていた。

「どうして?」

返した途端、びくんと肩を震わせ俺を仰ぎ見る君。
その震えはたぶん寒いからじゃなく、俺の声に氷点下の空気を感じたせい。
でも、仕方ないだろう?
俺がこれっぽっちも考えたくない、聞くだけでぞっとするようなばかげたことを君が言い出したんだから。

「だって聞いたんです。ヒトが一生に脈を打つ回数は決まっているんだって。」

だから?
それが君の寿命といったいどう関連するわけ?
いや、そもそも俺より先に死ぬとかなんとか。
そういうことは、たとえ冗談でも口にしてほしくないよ。

イライラと思うことはいろいろあるけれど、言葉に出したら感情が溢れ出て君を怖がらせてしまいそうで、ごくりと息を飲み込んだ。
そんな俺をどう思ったのか、君はまだ空を見上げたままこちらを見ない。

「私……、敦賀さんといっしょにいるといつもドキドキするから。ずっとずっとドキドキしているから。」

……え?

「人よりずっと早くずっとたくさん脈打って、早死にしちゃうかもしれないなって。」

黙ったままの俺に困ったように早口で君が話を続ける。
次々と紡ぎだされる君の言葉が、今俺の心臓をどれほど強く打ちつけているかなんて気が付きもせず。

「だってほら、敦賀さんとこうしていっしょにいるだけでこんなに心臓がドキドキしてる。」

その果てに君は俺の手を掴み、そのまま自分の胸へと持っていった。
まだ触れたことのないその場所に、俺の手が当たり前のようにあてられて、俺の心臓はひときわ強く跳ね上がる。

ちょ、ちょっと待って。
そんなことされたら俺のほうこそ心臓が……もたない……
ただでさえ、君の言葉に動揺を隠せずにいるのに。

「ね?私のほうがすごくドキドキ……あれ?」

きょとんと首をひねり、それから何かに思い至ったように小さく口を開くと、君はみるみる耳の先までぱあーっと赤く染まっていった。
そうして恐る恐る上目遣いに俺を見上げる。

だから、そんな風に見られたら俺はますます………。
思わず空いていた手を額に当て、俺はあさってのほうを向いた。

「えっと……、敦賀さんも同じくらいドキドキしてる……みたい?」

みたい、じゃなくてそうなんだ。
わかっているのかいないのか。
この天然小悪魔はときおりこうやって何気ない振る舞いで、何もかもどうでもよくなるくらい俺の心を鷲掴みにする。
いや、わかってやってるんじゃないのは明白なのだけれど。
だからこそ、ちゃんとわからせないといけないよな。

「ねえ、聞こえる?俺の鼓動。」

ぎゅうと胸元に押し付けた栗色の髪に顔を埋め、俺はそっと囁いた。
小さく小さく頭が頷く。

「そんなんで死んじゃうなら、俺のほうが君よりずっと早い。」

今度はイヤイヤをするように頭が揺れる。

「だから、それなら……」



――――死んじゃう前に、一緒に世界一幸せになろう?








Fin

まあ、それでも鈍感×曲解娘のキョーコちゃんが敦賀さんの言葉の意図をくみとれるはずがないわけですが。

スキビ☆ランキング ←参加してみました。よろしくお願いします。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。