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エイプリルフール!

超ベタなエイプリルフール小話をがっと仕上げました。
4/1にUPできないかと焦って書いたのでいろいろ至らぬ箇所があると思いますがお許しを!



告白するとしたら今日。
そう決めていた。

ずっとずっと想い続けて、いつはじけてもおかしくないくらいふくらんでしまったあの人への想い。
心の奥の一番深いところに鍵をかけて封じ込めて、なかったことにするつもりだったのに、何かといえば顔を合わせ、言葉を交わし、ふと身体が触れることすらある今の環境ではとてもそんなこと守れるはずもなく。
ふわふわと浮上した箱からあふれ出た想いは、いつの間にか私の身体を埋め尽くしていた。

(いっそ口に出してしまえれば楽になるのかも。)

そんな風に思いはじめてしまうほどに。


だからといって、本気の告白なんてできるわけがない。
そんなことをして、せっかく築いた仲のいい先輩後輩の仲を壊してしまうのは嫌だった。
ううん、ちがう。
どんな形であっても、あの人とつながっていたい。
そのつながりを、告白なんてして失ってしまうのが怖かった。


だから選んだのがこの日。

―――4月1日。

今日なら何を言ってもすぐに「なあんて、エイプリルフールですよ。」って言ってしまえばそれで終わりにできるから。
どんな顔をされても、そう返せば冗談で済ませられるはずだから。

よしっ、行けっ!私!
ぱっと言って、さくっと冗談にして、とにかくこのやるせない気持ちだけでもすっきりどこかへやっちゃえっ!



「おはよう、最上さん。」
ぼんやり考えに浸っていた耳もとに、今まさに考えていたその人の声が聞こえ、私は飛び上がるように顔を上げた。

「えっ!?敦賀さんっ。」
がっと顔を上げた、そのごく間近に煌めく漆黒の瞳がまっすぐ私だけを映していて。
そのことを認識したとたん、さっきの気合はどこへやら。
心臓が破裂しそうにバクバクがなりはじめる。

「どうしたの?そんなにびっくりした顔をして。もしかして昼寝でもしてた?それにはまだちょっと早い時間だけど。」
クスクス笑いながらそう言われてしまったのも、日が真上を過ぎかけたこの時刻なら当然かもしれない。
や、それより……。

「敦賀さんこそ、どうしたんですか。こんな時間にこんなところに。」
今、ここで会うなんてまったくの想定外。
心の準備がまだできていない。
だから必死に呼吸を整える。

「こんな時間って今、何時だっけ?」
「何時って、ちょうど12時になったところです。敦賀さんこそ、今お昼寝にはちょっと早いっておっしゃったくせに。」
「そうか。12時を過ぎたのか……。ああ、それでどうしてここにいるのかって?」
「ええ、だって今日は撮影「あのね……」」

かぶせるように言葉を挟み、敦賀さんは私の顔をぐいと覗き込んできた。

やだ……。
近すぎる……。

「君に逢いたくて。」

――――え?

固まる私の目の前でふふっと笑うその笑顔は神々しいほど美しく、春の陽だまりの暖かさを感じさせ、それでいて夜の帝王と言いたくなる色香も漂わせていて……。
もう何が何だかわからなくなるくらい極上の微笑みに息をのんだ瞬間、頭の中でぼんっと音が聞こえた気がした。
たぶん今、私の顔は怖いくらい真っ赤になってる。

「な、な、な、なにを、なにをい、い、言い出すんですか!」
叫んだあとに、ようやく気づいた。


ああ、そうか。
これは敦賀さんの“エイプリルフール”だ。
私をからかって楽しんでいる。
前にもあったじゃない。こんな風にからかわれたことが何度も。
それなら、ちょうどいい。
今がきっと最大のチャンス。


気を取り直して、敦賀さんに向き直る。
ほんの少し勇気をつけるために、“ナツ”と“セツカ”を纏わせて。

「嬉しい。」
染まった頬はそのままに、小首を傾げ、瞳を潤わせ、むかえる瞳をじっと見つめ返す。
その瞬間、敦賀さんの喉がこくりと疼くのが見え、私の中の”ナツ”がニヤリと笑った。

よしっ、いける!
がんばれっ、私!

「敦賀さん、私、あなたのことがずっと好きだったから。」

どくんっ
どくんっ、どくんっ、どくんっ

ああ、でも―――。
どんなに“ナツ”を、“セツカ”を纏わせても。
それでもその言葉を口にする瞬間はやっぱり“キョーコ”でしかなくて。
清水の舞台どころか、富士山のてっぺんから飛び降りるくらいの気持ちだった。

それなのに……。

「俺も最上さんのことがずっと好きだったよ。」

あっさりそう返されたうえに
「俺たち、両想いってことだね。じゃあ、このままつきあっちゃおうか。」
そう言ってあろうことか、敦賀さんは私の唇に………。

チュッ

――――え?


「約束の印。」
言われても、いったい何が自分に起きたのか頭の中がついていかない。
わかるのは、触れた唇の冷たさと耳朶に感じる吐息の熱さ。

「ずっと前から、君を好きだった。いや、愛していた。」

続けざまに聞こえた甘やかな声がうわんうわんと頭の中を反響し、身体の隅々まで熱と鼓動を行きわたらせる。
そのせいか視界が急激に白みを帯びてきて。
霧がかかったようになったその場所から「いいよね?」と囁くような声がした。
何のことかよくわからないまま希うような声色につい頷けば、頭を振った勢いで目の前が一層白く霞みはじめる……。

回転速度を急激に落とした脳が、それでも必死に考える。


ああ、そうか。
これって逆襲なんだ。
エイプリルフールだからって私が調子にのってふざけているから、敦賀さんの逆襲に遭ってるんだ。
―――悪い冗談、やめてください。
なんて今日に限って言えるはずがない。
そんなこと言ったら、告白じみたセリフを最初に言った私だって“同じ穴のムジナ”、なんだから。


でも。
だけど。
だからって。
こんなのって………。


『そんな"嘘"は聞きたくないっ!!』


「嘘じゃないよ。」
耳もとでそんな声が聞こえたような気がして、ハッと我に返ったら………なぜか社長室にいた。
そして隣には敦賀さん。



「そういうわけで、発表は明日以降、なるべく早めでお願いします。いいよね?」

社長となにやら話していた敦賀さんが、いきなり私を向いて言う。
いいよね?っていったいなんのこと。
社長はなんでにやにや笑ってるの?
頭を傾げつつ、とりあえず頷いてみる。

「おうっ、じゃあさっそく明日にでもやるか。しかし、まあいつまでもたもたしてるかと思ったら、いきなりこれかよ。」
「社長にどうこう言われたくないですね。とにかく善は急げといいますから、今のうちにさっさと……。」

さっさと?

「あ、あのう………さっさとっていったい何のことですか?」

恐る恐る声をかけた私を、二人がぱっと顧みる。
その顔、その表情。
なんというか……イヤな予感?

「もちろん俺たちの交際宣言だよ。」

にっこり微笑み、私の身体をぐいと引き寄せる敦賀さん。
引き寄せる?
引き……寄せ……る?

「きゃああああああ!!!!!!!!!!」

全力で声をあげた私を見て、社長が思いっきり笑いはじめた。

「あはははは!!!!ようやく現実に戻ってきたか。にしても、いきなり悲鳴とは穏やかじゃないな。おい、蓮。お前、まさか強制なんちゃらとかじゃねーだろーな。」
にやにやとからかう口調に、敦賀さんがいかにもイヤそうに眉を顰める。
「そんなわけないでしょう。もちろん”合意の上”です。ねえ、最上さん?」

合意?
ぽかんと口を開けた私にて、敦賀さんがゆっくりと微笑んだ。

「付き合おうって言ったよね?そして君は頷いた。」

頷いた。
たしかに……頷いた、記憶は、ある、けれど……。

「ようやく君と心が通じ合って。そのうえお付き合いOKの返事までもらえてうれしくて、さっそく社長に報告をしたんだ。そうしたら社長も喜んでくれてね。公式に交際宣言をしようってことになった。」

なった、って?
えっとそれって……?

「つ、つ、敦賀さん……あれは………エイプリルフ「エイプリルフールの冗談だとでも言うつもり?」」
かぶせるように言われた言葉にコクコクと頭を縦に振る私を、敦賀さんの黒曜の瞳が追い詰める。
「あのね、最上さん。」
それはそれは楽しそうな、でもどこか少し意地悪な眼差し。
「エイプリルフールってね。嘘をついてもいいのは午前中だけなんだって。」
そんなの知りません!と言いかけた唇を伸びてきた人差し指がそっとおさえる。
「あの発言はもう、午後になってからだったよね。」
「で、でも……」
「異論は認めないよ。ああ、ちなみに……俺が言ったのもぜんぶ真実。」

……真、実?

「ねえ最上さん。ううん。キョーコちゃん。」

私の名前を呼ぶその響きが、古い記憶をふるふると揺らす。
これはそう、以前聞いたそのままの音。
まさか……、まさか敦賀さんがあのとき呼んだキョーコちゃんって………。

「俺のこと嫌い?」
思わず、ぶんぶんと首を横に振った。
「じゃあ……好き?」

その質問には答えられない。
でも……。

困って俯いた顎を大きな掌がくいと持ち上げる。
見上げた先にある黒曜の瞳は、答えを聞くまで逃がさないという強い意志を滲ませていて。
目を逸らそうとしても逸らせない。
だから……。
困って。
どうしようもなくて。
首を縦に小さく傾げた。

「それじゃわからない。ちゃんと言葉で聞かせて。」

口もとに寄せられた形のいい耳。
その耳が私に本当の気持ちを問いかける。

「本当のことを聞かせて。」

もう、"嘘"なんてつけるはずがない。

「好き……です。」

だから仕方なく本当の気持ちを声にした。
音にならないくらいの大きさで。



ぐはぅっ!



そのとたん、強く強く抱き締められて。
急激な酸素不足で、また景色が白く濁っていく。
遠のく意識の向こうで聞こえてくるやけにはしゃいだ社長の声。

「金屏風か!いや、それは結婚会見にとっておいて……だとすると桜の季節に合わせて花でも散らすか。おっと、散らすのはよくないな。なら……。」

待って!待ってください!
そんな、私、まだ……。

言いかける私を包み込むこの香り、この温もり。
どうしてこんなに心地いいんだろう。

「キョーコちゃん、好きだよ。」

そのうえ、ふわふわと遠のく意識の中で今度は大好きな声まで聞こえてきて。

「愛してる。」

ああ、もしかしたらこれって夢なのかな。
ずっと心の奥底で願っていたすごく幸せな夢。
ああ、そうかも。
きっとそうだ。
私、今夢を見てるんだ。

それならこのまま身を任せても……ちょっとだけなら、きっと許されるよね……。

「敦賀さん、私も大好きです。」

なんて言っても許されるよね……。




―――結果。

翌日からとんでもない大騒ぎの"渦中の人"と化す私が、このときそのまま意識を手放してしまったことを後でどれほど後悔したことか……。
それは、また別のお話。






Fin
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