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旅する蓮キョ ~Blejsko jezero~


ひゃうっ!

いきなり抱き上げられて変な叫び声をあげてしまった私の耳元で、蓮さんのクスクス笑う声が聞こえる。

「そんなに驚かなくてもいいのに。」
「だ、だってボートから降りたとたん抱き上げられたから。」

抗議する私の頬をやわらかな風がさらさらと撫でる。
その風がやけにひんやりと感じるのは、顔が急に火照ったせい?
そう思ってますます熱さを増した頬にふと唇が触れた。

「このまま行くから、ちゃんと捕まって。」
言うなり蓮さんが歩き出すからバランスを崩しそうになって慌てて彼の首に腕を回す。
「もっとしっかりくっついて。」
「む、無理デス……。」

だってこんなの、誰も見ていなくても恥ずかしすぎる……。

*20160320

ここはクロアチア、ブレッド湖。
私たちは今、湖の中央にある小さな島に来ている。
船着き場からまっすぐのびる石段の向こうに佇んでいるのは古い教会。
湖畔からこの島を見たときは、おとぎの国の世界そのもののようで……思わず言葉を失って見入ってしまった。

「行ってみる?」

聞かれて勢いよく頷いた私の手を引いて、蓮さんは小さな手漕ぎボートに乗り込んだ。
「島へは手漕ぎボートでしか行っちゃいけないんだ。」
オンシーズンなら観光客でいっぱいのこの場所も、季節外れの、それも夕方になるとほとんど人がいない。
ボートも二人だけの貸切で、なんだかわざわざ誂えたみたいで少し照れくさかった。


*


「あ、あの私、自分で歩けますから。この階段、急だし……。」
「いいんだ。こうして上ることに意味があるから。それよりキョーコは階段の数を数えて。」

意味?
返された言葉の意味がよくわからなくて首を傾げたけれど、蓮さんは微笑むばかりで答えてくれない。

「この階段は99段あるんだって。それで……、いや続きは上りきったらにしよう。」

言いながら私の顔を覗き込む蓮さんの熱を帯びた視線にキュッと胸が痛くなった。
心臓がドキドキと騒ぎすぎて、真っすぐに見つめ返すこともできない。
思わず視線をそらすと、島を取り巻くエメラルドグリーンの湖面が、夕日に照らされてほんのり色づいているのが見えた。

(きれい……。)

こんなきれいなところがあるなんて。
そしてその場所に蓮さんと二人こうしていられるなんて。
今こうしていられることが何より幸せで……回した腕にそっと力を込め、私は広い胸に身を委ねた。

かなり急に見える階段を、蓮さんは私を抱いたまま軽々とした足取りで上っていく。
「きゅ、99段ですね。えっと1段、2段……。」
何を言っても下してはくれなそうだから、私は言われた通り段を数えることにした。




「……97段、98段、99段」

気が付けばそこはもう教会の入り口で、そのまま中に入った蓮さんはキラキラと金色に輝く祭壇の前でようやく私を下してくれた。

「さっきの話の続きなんだけど……。」
ほんの僅か言い淀んで、それから蓮さんは私の顔を覗き込んだ。
吸い込まれるような瞳が瞬きもせず私を見つめ、思わずこくんと唾をのむ。

「あの階段はね、新郎が新婦を抱えて上りきったら、夫婦の願いが叶うって言われてるんだ。」

新郎が新婦を?
言われた言葉を反芻しようと首を傾げた瞬間、蓮さんは急に真剣な表情を浮かべ私の手を取りひざまずいた。
そのまま手の甲にそっと唇を寄せる。

(まるで王子様みたい。ううん。王子様そのもの……)

思わず見惚れてしまった私を見上げ、蓮さんは言った。

「俺と結婚……してください。」
「え?」

息が止まるほどびっくりして。
驚きすぎて言葉もでなくて。
でも……。
胸がきゅうっと締め付けられるくらい嬉しくて。

こくりと頷いた私をふんわりと抱き締める両腕。
その温もりに守られる幸せがじわじわと押し寄せ、どうしようもなく身体が震える。
いつの間にか、いくつもの涙滴が私の眦からポトポトと零れ落ちていた。

「一緒に幸せになろう?」

伸ばされた指先が雫をやさしく掬い取る。
そして私たちは誓いを立てるように、マリア様の前でゆっくりと口づけを交わした。


"想いが叶う"といわれるこの教会の鐘の音を聞きながら。





Fin
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コメント

  • 2016/03/21 (Mon)
    07:02
    幻想的で素敵

    〜〜〜〜(≧∇≦)!!

    朝からありがとうございます。

    旅シリーズ、とても、楽しみです。
    我が輩はヨーロッパには無縁なので、憧れます!
    そこにまた、ラブラブの2人の姿が嬉しくて、凄く素敵。
    次も楽しみにしています。

    かばぷー #- | URL | 編集
  • 2016/03/23 (Wed)
    10:18
    Re: 幻想的で素敵

    おおお、楽しんいただけたみたいでほっとしました!!

    二人があまり人目を気にせずいちゃいちゃするとしたら
    家の中か、いっそ海外?と思って書き始めたお話です。
    ときどき思いついたようにUPすると思うので、
    楽しんでいただけたら嬉しいです~^^

    ちなぞ #- | URL | 編集

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