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やくそくのつづきは外堀から

こんばんは、ちなぞです。
何年も前に書いた「やくそく」のデータをさきほど発掘したのですが、原稿をみたらUPしたお話の番外のような内容が途中まで書かれていました。
あれ?これ載せたっけ?と今みたところ、きれいにカットされていたので、数年越しに書き上げてみました。
やくそく」を読んでからごらんくださいね。



「ちょっとキョーコ!!!!ほんとなの!?」


ものすごい勢いでラブミー部室に飛び込んできた奏江にキョーコは目を丸くした。

「……って、あんた何してるのよ?何それ?なんでそんな本読んでるわけ?」
キョーコが真剣に読んでいた本があまりに予想外で、奏江はつい気を取られた。

「何って……介護福祉士の勉強?」
「かいごふくししぃ~!?どういうことよ!?あんた女優でしょ?なんでそんな資格とろうとしてるわけ?っていうか、女優辞める気?あ、それとも役作り?」
滑舌のいい奏江に立て板に水の勢いでまくしたてられ、キョーコが目をぱちくりとさせる。

「え?やだ、女優を辞めるわけないじゃない。これは……ああ、そういえば言ってなかったよね。じつはこないだひょんなことで敦賀さんに老後のお世話をする約束をしてしまって…。それで、そうだ、いざというときのために介護福祉士の資格をとっておこうって思ったのよね。ほら、今はまだ時間がとれるけど、最近お仕事もずいぶん増えてきたし。この調子で仕事が増えたらなかなか資格をとる勉強をする時間ってとれないでしょ?」

「ふうん。なるほどね……って、ちがうでしょー!もぉーっ、いったいあんたなにやってんのよぉー!っていうか、それ、それが聞きたかったのよ!あんた、敦賀さんといったいどういう約束のしかたをしたの!!??」
「え?だから、老後のお世話。」
「もっと具体的に説明しなさい!老後のお世話って、どういう会話でそうなったわけ!?」

いつもの沈着冷静さはどこへやら。すっかり興奮しきった奏江が畳み掛けてくる様に、キョーコはきょとんと首を傾げる。

「なんかこないだ送っていただいたときに、もし年を取ってもこのまま一人で誰も面倒見てくれなかったらどうしようってひどく心配されてたから、つい。もし、万が一そんなことがあったら私がお世話しますって言ったの。そしたら、じゃあ約束って、指切り……。」

指切り、という言葉に自分の小指にからまった蓮の指のぬくもりを思い出し、キョーコの顔がボンッと赤く染まる。

「なに赤くなってんのよっ!そもそも何よ、その約束。それに……あんた、それ以外にもなんか余計な約束したでしょ?」
「余計な約束?そんなの別にしてないけど……?」

不思議そうな顔でしばし視線をさまよわせたキョーコは、突然あっと手をたたいた。

「ああ、そういえば、敦賀さん “どうせなら今からよろしく”って言ってたっけ。それのこと?でもそれがどうかした?」
「どうかって……、あんた、それいったいどういう意味だと思ったわけ?」

「え?意味?お食事のことでしょ?今もときどき依頼されて作ってるけど、もうちょっと頻繁にって話じゃないかな。だってほら、敦賀さんってなんでもできる人だけど、食事のことだけはいいかげんじゃない?ほっといたら、全然食べないし、食べても栄養ドリンクみたいなもので済ませようとするって、社さんもひどく嘆いてたし。最近は仕事もますます忙しいみたいだし、しっかり食べて体力つけてもらわないと何かあったら困るものね、だから、はいって答えたの。」

「あんたってほんと……。」
呆れ顔で言葉を失う奏江に、キョーコは“どうしてかわからないけれど敦賀さんって私の料理を気に入ってくれてるみたいだしね“とさらに続けていう。
奏江は思わずはぁーっと大きくため息をついた。

「あんたってほんと鈍感っていうかわかってないっていうか……。まあ、あれだけさんざんアプローチされてても気づいてないっていうのがそもそも論なわけだけど……」
小さな声でぶつぶつと呟くと、奏江は改めてキョーコに向き直った。

「さっき社さんから、あんたと敦賀さんが一緒に住む…っていうか結婚する約束をしたらしいけどほんとかって聞かれたのよ。」


*


「れぇぇぇぇん!!!!」

足取り軽く廊下をいく蓮を、必死の形相で社が追いかけてくる。
「あれ?どうかされました?社さん。」
「どうかじゃないよ!なに涼しい顔してるんだよ。」
はあはあと息を切らしながら、社は蓮をぐいと壁際に引きずり込んだ。

「お前、社長となに話した?」
「何って……。」
とぼけた顔で首を傾げる蓮に、社は肩を落とす。
「お前とキョーコちゃんが一緒に住む…っていうか結婚とかなんとかいって、社長がやけに盛り上がってるんだよ。俺もさっき呼び出されて、もろもろ準備とスケジュール調整をしとけって……。」

その言葉を聞いて、蓮は困ったように眉をしかめた。
「社長……ったく……。」
らしからぬ言葉を吐き小さく舌打ちをする。
「やっぱり社長の勘違いか?なら訂正しておかないと…。」
蓮の顔つきを見て再び社長室へ戻っていこうとする社を、蓮の手ががしっとつかんだ。

「ちょっと待ってください。」


*


「えええええ!!!!なにそれ!!!!」

奏江の言葉にキョーコが叫び声をあげた瞬間、コンコンとノック音がした。
慌てた二人がドアに顔を向ければ、そこにいたのは噂の主本人。
「敦賀さん!!!!!」
キョーコが駆け寄り、くっと見上げる。
「な、な、なんか変な噂が出てるらしいんですけど…。」
まさか自分と一緒に住むとか、ましてや結婚なんて噂、口に出すのもおこがましく、キョーコはその先をもごもごと口ごもった。…が、
「君と俺が一緒に住むって話?」
あっさり返され、思わず顔を上げた。
「ほんと先走りしすぎだよね。社長にも困ったもんだよ。」
うんうん、と大きくうなずきかけて頭が止まる。
「えっと、先走り?」
「そう。」
「先走りってそのう……そういう言い方だとまるで私と敦賀さんの間になにかあるような……。」
不思議そうに聞き返したキョーコのそばにずいと詰め寄り、蓮はにっこりとほほ笑んだ。

「やくそく、したよね?俺のことよぼよぼになるまでずっと面倒みてくれるって。」
「あ、あのもしおひとりだったらっていうのが抜けてるかと……。」
恐る恐る話すキョーコの声に蓮は少し小首を傾げてみせる。

「俺が結婚しなかったらって言ってる?それなら大丈夫。」
大丈夫ってどういう意味だろうとさらに考えるキョーコに蓮はそっと顔を寄せた。
「あのとき俺、ちゃんと今からって言ったよね。」
同時に繰り出されたのは天使……のような悪魔の微笑み。
「末永くよろしくって挨拶もしたし。」
手をしっかりと握られ、ずんずんと近づいてくる顔。
「指切りもした。」
握りしめた手を口もとに寄せ、小指にチュッとキスを落とす。
ひいっと息をのむキョーコの顔が、瞬く間に真っ赤に染まった。

「ねえ、最上さん。ううん、キョーコちゃん。一生そばにいて面倒見てくれる大事な人のことをなんていうか知ってる?」
「か、家政婦さん?」
さりげなく蓮がつけくわえた“大事な”というひとことはどうやらキョーコの耳を素通りしたらしい。
蓮は少し肩をすくめると、
「そうじゃなくて…それが誰よりも大好きで何よりも大事な人だったら?」
付け加えた。

「……え?」
キョーコの身体がピキンと固まる。
その耳もとに唇を寄せ、
「お嫁さん。」
囁くと蓮は、長い両腕でキョーコの身体を力いっぱい抱き締め迷うことなくキスをした。
その瞬間、ただでさえ赤かったキョーコの顔が湯気が立ちそうなほど真っ赤に染まる。
「そういうことだから、よろしくね。」
「あ、あ、あ………」
あうあうと言葉にならないキョーコに蓮のくすくす笑いがとまらない。
それでいて急に真面目な顔になったかと思うと、
「いや?」
小首を傾げ覗き込まれたうえ、捨てられた子犬のような瞳でそういわれ、キョーコの胸がずくんと高まる。
想いを封じ込めてぐるぐると厳重にかけていた箱のカギが、その瞳と抱き締められた両腕から流れこむ温もりでとろとろに溶けていくのがわかった。

「いやだなんて、そんな……。」
「じゃあ、いいよね。」
赤く染まった頬と潤んだ瞳を見れば、キョーコの気持ちはおのずと蓮にも伝わる。
(指切りをしたあのときの反応に、もしかしたらと思っていたけれど、やっぱり……。)
確信と喜びで胸がいっぱいになり、思わずキョーコをぐいと抱き締め、蓮はもう一度キスをした。
「言っておくけど、今さら撤回なんてさせないよ。」と囁きながら。

(えっと、どういうこと?敦賀さんが私を?私のことを?)
繰り返されるキスの衝撃と大好きな温もりに抱き締められる現実、何度も囁かれる「好きだよ」という言葉。
考えて、考えて、考えるうちにキョーコの頭は限界に達し……ぷつっと意識が途切れた。


コホンッ
部屋の隅から聞こえてきた、小さく咳をする音。
複雑な面持ちの社。
わなわなと震える奏江。
どちらもそれぞれ、驚きと怒りで言葉を失っている。

「というわけなので、今日は彼女と失礼します。」
そんな二人に華麗に微笑み、くたんと力を失ったキョーコの身体をしっかりと抱きしめたまま蓮はすっくと立ち上がった。



―――そして数分後。

「れええーーーーん!」
「つるがさんっ!」
ようやく我に返った二人の叫びが響き渡るころにはもう、蓮はキョーコを抱え車に乗り込んでいた。
誰も見たことがないほど幸せに満ちた満面の笑みをキョーコに向けながら。



そして、社と奏江の叫び声を聞きつけたローリィが、さっそく記者会見の準備をはじめたのはいうまでもない。





Fin
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コメント

  • 2016/03/15 (Tue)
    17:12
    うっほ~い

    さすが策士の蓮さん。何気なくだるまやのお二人にも根回ししていそうですよね。ハッピーホワイトデー!

    へなへなっちです #- | URL | 編集
  • 2016/03/16 (Wed)
    22:40
    Re: うっほ~い

    > へ○○○○ちさま

    超鈍感娘にはこれくらいの勢いでいかないと
    きっといつまでたっても進展なしと思うのですー。

    さすがの敦賀さんも
    「いつ攻めるの?」「今でしょ!」ってな勢いで
    とにかく根回しばっちり、外堀埋めまくりでいったんじゃないでしょかw

    ちなぞ #- | URL | 編集

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