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心理テストなんて誰が考えた 5

(ここで彼女を逃がしたら、俺は一生後悔する)

あの叫び。
真っ赤に染まった顔。
そしてなにより、キョーコが思わず発したひとこと。

(もしかしたら・・・いやきっとそうだ!)
湧き上がる甘い期待を胸に、蓮は懸命に逃げ出した兎・・・いやキョーコを追いかける。

(エレベーターか?階段か?それともどこかの部屋にもぐりこんだか?)


考える蓮の耳に、バタンッという扉の音がした。


(階段だ!)

非常口の扉を開け、踊り場に飛び込んで見回すと、下へ駆け降りていく茶色の頭が見えた。


(みつけた!)


与えられた時間はほんのわずか。

その間にキョーコを捕まえ、話をしなければならない。

蓮の猛追跡がはじまった。


* * *


その頃、逃げるキョーコの頭の中は混乱の渦だった。


どうしよう。どうしよう。ずっと隠してきたのに。

どうしてあの雑誌を置きっぱなしにしちゃったんだろう。

あのページを開いたままにしちゃったんだろう。

しかも結果のところに丸までつけて・・・。

あーーばかばかばかっ!キョーコの大ばか者!!

ぜったい気付かれた!

もう恋なんて、そんなばかなことしないって言い続けてたわたしが、性懲りもなく人を好きになってしまったこと。

敦賀さんにだけは、知られちゃいけなかったのに。

ぜったい知られたくなかったのに・・・。

きっと、気付かれた。

敦賀さんを好きになってしまったこと。

どうしよう。どうしたらいいんだろう。



「最上さん、待って!」

走るキョーコの耳に蓮の声が響く。


(敦賀さん!?なぜ?なぜ追いかけてくるの?・・・ううん。それよりとにかく逃げなくちゃ!)


* * *


蓮はとにかく必死だった。

長いコンパスを生かし、ものすごい勢いでその差を縮めていく。

(彼女に言わなきゃいけない。そして、聞かなきゃいけない。本当のことを)


――――そして、蓮はキョーコを捕まえた。


あと少しで玄関という1階のカフェ前。

ギリギリのところで追いついた蓮はキョーコの腕を強く掴み、息を切らしながら話しかけた。

「も、も、もがみさんっ。お願いっだからっ、はっ、話を・・聞いて。」

「だめですっ。」

とにかく逃げ出そうとするキョーコ。


「ダメじゃないっ!」


辺りに蓮の声が響く。

その声の大きさと、そこに滲む思い詰めたような響きにキョーコはビクッと震えた。


(敦賀さん・・・どうして・・・?)



* * * * *



キョーコを引きずるようにして、蓮はカフェの少し奥、人目を避けるような壁際の席に座った。

腕を掴んでいた手は、今キョーコの手をしっかりと握り締めている。

それから蓮は、キョーコの目をじっと見つめ、ゆっくり話し始めた。


「じつはさっき、俺もこの心理テストをやったんだ。俺の相手は・・・最上さん、君。」

「・・・え?」

「結果は惨憺たるものだった。」

「あの・・・」


蓮は大きく息を吸い込んだ。


「はっきり言うね。

俺は君が好きだ。後輩としてじゃなく女性として。好きというより愛してる。

こんな気持ちになれるのは、過去にも未来にも君しかいない。

だから・・・、あの心理テストをみたとき思わず俺もやってしまったんだ。どんな形でもいいから、君の心を知りたくて。」


(敦賀さんもあの心理テストをした・・・?私の気持ちが知りたくて・・・?)

蓮の話すことがあまりにも突飛すぎて言葉がちゃんと頭に入ってこない。

(それに、今敦賀さんが言ったこと・・・わたしを・・・好き?愛してる?・・・どういうこと?)


「本当はこんな形じゃなく、もっとちゃんと、もっとロマンチックに告白するつもりだったんだけどね。でも、そんなこと言ってられなくなった。」


蓮は握っていたキョーコの手を両手でしっかりと握りしめ、そしてその瞳を覗き込んだ。


「戸惑ってるよね。でもこれだけは信じてほしい。俺が君を好きだっていうのは、嘘でも冗談でもない。本当だ。

俺はあの心理テストの全部の答えを「1」にしたいと思ってる。

もっと君と話をしたいし、電話もメールも毎日したい。君をキョーコと呼びたいし、蓮って呼ばれたい。

2人きりで食事に行ったり、買い物したり、デートもしたい。

君が喜ぶならどんなことでもしてあげたいし、君のことならどんな小さなことでも知りたい。

そして・・・なによりも君に俺を好きになってもらいたい。」


あまりの驚きにキョーコは大きく目を見開いた。

と、同時に瞳から大きな涙がひと粒こぼれ落ちる。

それをやさしくぬぐい、蓮は続けた。


「ひとつ、君にどうしても聞きたいことがある。答えは言葉にしなくていい。イエスでもノーでも首を振るだけでいいから。お願いだから、本当のことを教えてほしい。」

いい?と覗き込む蓮。

いやとは言えなかった。


「君が・・あの心理テストの相手にしてたのは俺?」


瞬きもせずに真剣な眼差しで自分を見つめる蓮から、キョーコはどうしても目をそらせなかった。

ちゃんと答えないといけない。本当のことを。

本当の・・・こと。

私は・・・この人が・・・好き。

こくんと小さくうなずく。



その瞬間、蓮が大きく破顔した。



* * * * *



(え!?蓮とキョーコちゃん!?)

カフェの片隅でうどんをすすっていた社がふと目を上げると、そこに思いがけぬ2人の姿が見えた。


(うわっ!やばいっ!蓮のやつ、キョーコちゃんの手なんか握ってるし!まったく人目も考えず何やってるんだ・・・。)

いくら社内とはいえさすがにまずいだろう、と頭を抱える社。

しかたなく食べかけのうどんをその場に置き、胃を押さえながら2人に近づく。


(ああ、俺の昼飯よ、さようなら~。)

近づくにつれ、それまで観葉植物の影になってわからなかった2人の表情が見えてきた。


これまで見たことがないほど、蕩けんばかりの甘顔で破顔する蓮。

その蓮に素直に手をとられたまま、泣き笑いの微妙な表情を浮かべているキョーコ。


(ようやく、か・・・。)

これまでの地道な努力がついに実を結んだことを、社は悟った。


(よかった。本当によかったよ・・・。)


先ほどまでの胃の痛みが嘘のように晴れていく。
ふぅ~っと大きく息を吐き、時計を確認した社は、そこで本来の敏腕ぶりをすぐ取り戻した。

そのまま平然とした表情を作り、2人につかつかと近寄っていく。



「お取り込み中のとこ悪いんだけど・・・。蓮、そろそろ時間だから。」




fin

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