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トコシエトセツナ

コトノハの続きを書いていたのですが、原稿を誤って削除し真っ青に。
気持ちがくじけ、先日ちらりと降った雪を眺めながら考えたSSSを形にしてみました。



見上げた空の彼方から羽毛のような雪片が舞い落ちる。
切れかけた電灯に照らされてひらひらと頼りなげに降るそれは、桜の花びらにも似て。
ひどく刹那的に思えた。

桜の花びらが落ちる速度は、秒速5センチだと聞いたことがある。
それならこの雪花は、秒速何センチで落ちてきているのだろう。

思いながらそっと隣を見ると、君も同じように空を見上げていた。
「……敦賀さん。」
吐き出された白い息が俺の名前を象る。
そのまま留めておきたいと願う間もなくそれはしじまに溶けていき、そのことが妙に惜しくてひっそりと唇を嚙んだ。

「きれいですね。ほら、あそこ。」
嫋やかな指先が示した先は、そこだけなぜか周囲から隔絶されたようにぼうっと明るく照らされていて。
一秒ごとに数を増していく雪花が、さらさらと淡く輝いている。
そう気づいていて、
「ん…どこ?」
わざと膝を折り、目線を君の高さに合わせた。

近づく頬。感じる吐息。
触れているわけでもないのに温もりが身に迫る。
とくとくと奏でられる心音が、君のそれと重なればいいと心の奥で切に願った。

「なんだか……。」
彼女の声が、いつになく近くから聞こえる。
その声に合わせ、幾片かの雪花が風もないのに落ちることを忘れたように上向きに伸びあがり、そして幻のように消え失せた。

「切ない……。」
消え入るような言葉の響きに、思わず隣に目を向ける。
相変わらずまっすぐ上を向いたままどこか遠くを見つめる彼女こそ、雪よりもなお儚さに満ちていて。
今にもその姿が消えてしまいそうな錯覚に陥り、息をのんだ。
不意に訪れた言い知れぬ恐怖。
瞬きひとつできない、する気になれない、その刹那―――。
行き先を求めてさ迷うように漂うひとひらが、彼女の睫毛にふわりと着地した。

驚いて目を瞑る君
思わず伸ばした指先。

触れたとたんに雪花は跡形もなく消え失せ、俺の指先にはただ君の温もりだけが残る。

―――失いたくない。

隠していた想いが、感情が、どうしようもないほど強く深く湧き上がった。

「最上さん。」
たまらず名を呼んだ俺に、君がはっと顔を向ける。

間近に震える睫毛を見つめながら。
俺はその唇にそっと触れる。
ふんわりと淡い感触。
それだけで、冷えきった俺の唇が瞬く間に君の温もりを奪い、ゆるやかに熱を帯びていく。
熱く。こらえようもないほど熱く。


雪が舞う。


いつの間にか秒速5センチを遥かに超える早さになって。
次から次へと降りつのる。
その雪ひとひらすら、君に触れることをもう許せなくて。

俺は、呆然とする君をまるごと抱きしめた。



もう離さない。
離せるわけがない。



俺はただひたすらに君を抱いた。



恋はときにこの雪花のように刹那的だ。
でも、愛は違う。
そう。
降る雪がいつか消えても、降らせた空が変わらずそこに在り続けるように。


約束する。


俺はきっと君を永遠に愛し続ける。



いつまでも。

―――いつまでも。






Fin
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