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I LOVE YOUをもう一度  (3)

※2016/2/7改稿

「蓮。」

スタジオへ向かう道すがら、隣を歩く社さんが視線も合わせず小声で言った。
暗い廊下には誰もいない。
もちろん、だからこそ口にしたのだろう。


「やったな。」
“やった”の意味を図りかねて、返す言葉を言いよどむ。
「おめでとう。・・・で、いいんだよな?」
重ねて言われて、思わず足を止めた。
よっぽど驚き、焦った顔をしていたのだろう。
社さんは、ぐふぐふと必死に笑いを堪えている。

「あの・・・え、ええ、まあ。」
否定もできず、さりとて肯定もしにくく、曖昧に応えた。
が、目の前の顔はにたぁ~とわかりやすく崩れる。

「お兄ちゃんとしては、思いっきり安堵した。」
「しかし、どうして?」
「みてたらわかるさ。お前、顔つき変わったし。」
「え?」
「ものすごく柔らかくなった。いい表情をみせるようになった、っていうべきかな。」
穏やかな声音はどこまでもやさしい。
「もともとお前は誰に対してもそつない態度で接していたけどな。あれってかなり作ってたろ?」
あっさり言われて苦笑する。
「でも最近は、空気が変わった。」
なんていうのかな・・・と頭を傾げる。
社さん自身、どう説明したらいいかわからないらしい。

「まあ、緩んでるっていうほうが正しそうなときもあるけどさ。」
「ゆる・・・。」
「それに最近やたらとスマホいじってるし、俺に内緒で姿を消すことが増えたし。」
思い当たる節が多すぎて頭を抱えたくなる。
「ま、最終的にはお兄ちゃんの勘?」
にやりとされ、思わず
「さ、急ぎましょうか。」
会話をぶったぎった。


狭いエレベーターに2人滑り込んだとたん、会話が戻った。
「社長には?」
「いえ、まだ。」
「そうか。まあ、あの人ならうすうす察していそうな気もするが・・・折を見て話したほうがいいかもしれないな。」
遊ばれる前に、と小声で付け足され、思わず大きく頷く。
「そうですね。」
確かにへたなことをされるまえにこちらから釘を刺しておいたほうがよさそうだ。

「まあ、なにはともあれ」
よかったな、本当にと肩を叩かれ、ふうと息をはいた。
と、社さんの目が真剣な色を帯びる。

「大事にしろよ。」
「言われるまでもありません。」
「あの子はいろいろ複雑だからな。」
「重々承知しています。」
「ああ、お前なら大丈夫だと信じている。ただ・・・。」

眼鏡にかかる前髪を振り払うように、社さんはぱさりと一度頭を振った。
聡明なこのマネージャーがいったい何を考えているのか。
小さな不安が心を過る。

「いや、何でもない。俺は心からお前たちを応援してるよ。だから何かあったら相談しろよ。さぁ~てっと!」
気持ちを切り替えたように声をあげられ、俺は社さんの懸念の先を問い詰める機会を失った。


「お兄ちゃん、大事な弟分のためにスケジュール調整がんばっちゃうぞー!」




* * * * *




「急な話で悪いんだけど…。」
そんな電話をもらったのは、1月の終わりだった。

「誕生日の夜、スケジュールが開いたんだ。もしよかったらいっしょに過ごしてくれる?」
「…嬉しい。」
電話だと、少し素直になれる自分が不思議。

「どこかに出かけたりはできないけど。」
「じゃあ、腕によりをかけてバースディディナーをご用意しますね。」
張り切ってそう返したら、敦賀さんは嬉しそうに
「ありがとう、楽しみにしてる。」
と答えてくれた。


二人で過ごす特別の日。
ドキドキと煩い胸を押さえながら、私はどんなメニューにしようかと思いを巡らせた。





(続く)
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コメント

  • 2016/02/09 (Tue)
    23:13
    ヤッシー兄ちゃん

    流石ですね。
    これまで側で見守ってきてくれたヤッシーならではの喜びと・・・不安なんでしょうね。

    大人な彼が飲み込んだその言葉を聞かずにいてヨカッタのか。聞いても今の蓮さんにはどうしようもないことなのか。

    誕生日前のドキドキカップルにはもう少し幸せを感じてもらいたいですが、もう社長にバレてこそこそ交際から脱しちゃおうよ!と思わないこともないです。(笑)



    魔人 #NkOZRVVI | URL | 編集
  • 2016/02/12 (Fri)
    07:44
    Re: ヤッシー兄ちゃん

    > これまで側で見守ってきてくれたヤッシーならではの。

    ヤッシーはきっとぱあーっと思いっきり喜んだあと、いろんなことに頭を巡らせると思うのです。
    二人の未来を明るくするためには何が必要か、とか。
    だって誰よりも頼りになるお兄ちゃんだから!


    > もう社長にバレてこそこそ交際から脱しちゃおうよ!と思わないこともないです。(笑)

    社長にバレたら、どうなるんでしょうね。
    一気にお祭りか、はたまた…。

    ちなぞ #- | URL | 編集

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