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I LOVE YOUをもう一度  (2)

※2016/2/7改稿

立春を過ぎても大気の冷たさは変わらないどころか厳しさを増しているように感じていたけれど、晴天の今日窓から差し込む光は明るく、遠からぬ春を予感させる。
そのことに気づいただけでキョーコの心は不思議と浮き立った。


始まって久しい春ドラマの撮影。
今日用意された楽屋は2人部屋で、キョーコは妹役で共演している美香と同室だった。
おっとりとした見た目に反し、中身は意外とちゃきちゃきしている彼女は、3つ下の16歳。
子役出身で、キョーコの3倍くらい芸歴が長い。
にもかかわらず先輩風を吹かすようなこともない朗らかな彼女と、キョーコは撮影を重ねるうちに本当の姉妹のように仲良くなっていた。


「もうすぐバレンタインですねえ。」
「美香ちゃんはどうするの?」
「うーん、とりあえず共演者の皆さんとスタッフさんにはチョコをあげる予定ですけど・・・。あ、京子さん。どうせならいっしょにどうですか?義理はできるだけ負担を軽くしたいし。」
両手を合わせ、”お願いっ!”のポーズをとる美香に、
「もちろんOK。参加1名よろしくね!」
即答し、二人で顔を見合わせてくすくす笑った。

(バレンタインはいつも手作りのお菓子を配っていたけれど、今年は……やめたほうがいい、よね。)

*

「これが今度出るドラマの台本?」
「ええ、そうなんです。意外とセリフが多くて大変で。」
「よかったら相手しようか?」
「うわあ、助かります!」



「ねえ、これってラブシーンだよね?」
「ええ。だから、すごく緊張していて。」
さすがにこの年齢の若手女優だと、ちょっとしたラブシーンが要求されても仕方ない。
「ふうん……。」
「えっと敦賀さ…「気に入らないな。」」
「え?でも。」
「ねえ、いっそ俺が出ちゃおうか、このドラマ。で、キョーコの相手役になっちゃう。」
冗談めかしてそう言いながら、台本をぺしっと指先でつまはじく。

「な、な、なにするんですか。」
「だってこれ、どこかの男がキョーコを抱きしめるわけでしょ。」
「そうですけど。」
「納得できない。」
「そ、そう言われても……。」
困り顔のキョーコを見下ろし、蓮がはあっとため息をつく。

「こうやって俺のいないところで君に近づく男が多すぎて…心配だよ。」
あまりにも不安げなその顔に、キョーコは思わず噴き出した。
「そんな近づく、だなんて。これだって台本だから相手役の方もしかたなくやってらっしゃると思うし。敦賀さんが心配するようなことなんて、何もないですよ。」
「君は本当にわかってないな。」
大きな手がそっと髪を撫でる。

「本当にわかってない。」

*

「ちなみに京子さん、本命はやっぱり手作り?」
いきなり聞かれ、キョーコはびくりと肩を揺らした。
「ほ、本命って。」
「あ、やっぱりいるんだ。京子さんって恋愛偏差値も恋愛温度も低そうなのに。」
さらりと言われ、気が焦る。
否定しなきゃと思ったときにはもう遅かった。

「あ、大丈夫。誰かに言ったりしないから。」
にっこりと微笑まれ、ふぅと息をついた。
「美香ちゃんこそどうなの?」
「うーん。本命はねー。今はとくに、って感じかなあ。」
「こういう業界にいるとかっこいい人に出会う機会も多いでしょ。」
「敦賀連とか、貴島秀人とか?」
突然想い人の名前がでて、びくりとする。
「たしかにイケメンだけど…。ああいう抱かれたい男ランキング上位の人たちって私からみるとちょっとね。おじさん、かな。」

おじさん……?
敦賀さんがおじさん…?
た、たしかに20代前半には見えないかもしれないけど、でも…。

「どうせフェロモン系ならこっちのほうがいいかも。ほら。」

見せられたのは、雑誌に載っていたモノトーンの広告写真。
有名ブランドのメンズラインの広告らしい。

荒涼とした大地を背景に画面の端に若い男が俯き佇んでいる。
僅かに見える横顔は国籍不明の甘い顔立ち。
その表情は厳しく、周囲を拒絶するような独特の雰囲気を醸し出している、
上げた片手で押さえている髪は水を浴びせかけられたように濡れそぼり、乱れ、額に張り付いている。
一見華奢に見えるほど引き絞った身体が纏う、鍛え上げられた筋肉。
しなやかなその躰は、彫刻のように美しい。

「へえ~、美香ちゃんってこういう人がタイプなんだ。」
「タイプっていうか…きれいだなあって。」
「たしかにきれいだけど…。」

―――やっぱり、敦賀さんのほうがずっとずっときれい。

そんなことを思いカッとなった頬に気づき、慌ててキョーコは立ち上がった。

(でも・・・。)
ふと振り返り開いたままの雑誌に目を遣る。

(たしかにいい筋肉の付き具合かも。)




(続く)
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コメント

  • 2016/02/09 (Tue)
    23:07
    あらあら

    振り返ってまで確認だなんて、蓮さんに見られたら大変ですね。(笑)

    2話ではまだラブラブなんでしょうが、なんとなく暗雲の気配がただよい出してきましたねぇ。←1話で予告されているのもありますが



    まだ気配のみですが・・・どうなるのかドキドキしながら読み進みたいと思います。

    魔人 #NkOZRVVI | URL | 編集
  • 2016/02/12 (Fri)
    07:39
    Re: あらあら

    どんな暗雲が訪れるのか。
    どう晴らしていくのか。

    まだまだこれからのゆっくり展開になると思いますので
    期待?してお待ちくださいませ~。

    ちなぞ #- | URL | 編集

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