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陽だまり ~ side R ~

※2016/4/26加筆修正

なんとかもぎ取った今日のオフ。
相変わらず忙しい毎日だけれど、たとえほんの数時間でもこうして彼女といられることが、俺にとっては何よりの幸せ。


「こないだの撮影はどうだった?」
「今度の役はどんな役?」

ぽかぽかと暖かい日差しが射す窓際にラグを敷き、2人並んでコロンと転がり、他愛ないおしゃべりを楽しんでみる。


キョーコとの会話はたいていがお互いの仕事のこと。
プライベートでは案外無口で口下手な(!?)俺が相手でも、瞳を輝かせ、首をぶんぶん振りつつ一生懸命おしゃべりしてくれる彼女があまりに可愛くて、つい話を促してしまう。
キョーコのことなら、どんな些細なことでもすべて知っておきたいから。

いつものようにおしゃべりを続ける彼女の、鈴を転がすような澄んだ声があまりに心地よくて、つい目を閉じて聞き入っていた。
君の声をこうして聞いているだけで、溜まった疲れもあっという間に癒されていく。そこに彼女の温もりが加わればなおさら、なんだけど。……と思った耳もとにふっと淡い吐息がかかり、ドキリと胸が高鳴る。

「寝ちゃった?」聞こえてきたのは、小さなつぶやき。

どうやら俺が眠ってしまったと勘違いしているらしい。

(このまま寝たふりをして、ちょっとからかってみようか。)

驚いた顔で見つめ返す彼女の瞳も、からかわれたと気付いたとき、頬を膨らませ上目遣いでこちらをにらむ表情も、みんな好きだから。
だから、ちょっとふざけてみたくなった。
なにより頬にかかる吐息の甘さをもうしばらく感じていたくて。

(実は起きていると知ったら、いったいどんな顔をするだろう。)

悪戯をたくらむような気持ちで少しわくわくしていると、彼女の手がそっと髪に触れた。
不意打ちに大きく振れた心音がそのまま速度を上げていく。
それでも必死に寝たふりを続けていたら、やがて細い指先がさらさらとやさしく髪を梳かしはじめた。

額の生え際から耳元へ、ときおり深く差し入りながら、ゆるやかに上下する指先。
耳先を掠めていく仄かな温もりと僅かな刺激。
こうして目を瞑ってしまうと、全身がより鋭敏になるのか、心地よさがさざ波のように体内にせり上がってくるのが分かる。

―――どうしよう。

つきあいはじめたとはいうものの、相変わらず天然記念物的に純情乙女な君。
そのくせ、急にこんなことして。
ぎりぎりのところで何とかつないでいる理性のヒモが一体どこまでもつのか、試されてるみたいな気がしてくる。
こうしているだけで、もう充分限界を感じているというのに。

それでも……待って待って待ち続けて、ようやく手に入れた人だから。
大切すぎて不用意に手も出せない。
君を愛する”オトコ”としては、何とも複雑な心境だよ。

思考の迷宮に陥っていたら、ふと唇にやわらかいものが触れた。

(キ……ス?彼女から?)

あまりに驚いて、眠ったふりも忘れてぱっと目を開き、ぱちぱちと瞬きしてしまった。

「どうしたの?」

つい口にした俺を見て、君は一瞬しまった!という顔をする。
が、すぐに茶目っ気たっぷりの子どもみたいな笑顔へ表情が変化していった。
無邪気で無防備で、そして滲み始める本当に幸せそうな笑顔。

それは……俺だけが知っている君の表情(かお)。

そう思ったら、抑えようとしても抑えきれない想いが一気に溢れ出し、我ながら情けないくらい顔が緩み、笑み崩れてしまった。
そんな俺の目の前で、君はもうひとつ大きな爆弾を落とした。

「すごく幸せだったから……おすそわけです。」

照れているのか目を合わせないように少し横を向くから、耳の先まで赤くなっているのがはっきり見える。
その瞬間、ぶちりと頭のどこかで何かが切れる音がした。


今までは躊躇って止めていた指先をそっと彼女の唇へと伸ばす。
指先を通して俺の中に広がっていく瑞々しくやわらかな感触。

切ないほど愛しいソレに身悶えする。




―――ごめん。もう我慢……できそうにない。けど……いいよね?





Fin
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