I LOVE YOUをもう一度  (1)

※2016/2/7改稿

「ずっと好きだった。」
19歳の誕生日、突然告げられた言葉に頭が真っ白になった。


どうして?
なぜ?

たくさんの疑問がぐるぐると頭を駆け巡るのに、答える言葉はなにひとつ出てこない。
そのくせ心の奥では何重にも鍵をかけておいた宝箱がガタガタと揺れ動き、閉じ込めた想いが今にも這い出そうともがいている。
混乱した頭は、言われたセリフをなぞるだけで精一杯だというのに。

ありえない。
そんなこと、あるはずがない。
敦賀さんが私を?

呆然自失となった私の様子を見て何か察したのだろう。
敦賀さんは切なげな瞳で私をじっと見つめ、
「突然のことで驚いたよね。ごめん。返事は急がないから、ゆっくり考えてほしい。」
そう言って去っていこうとした。

くるりと向けられた背中がかすかに震え、その影が足音とともに次第に遠ざかる。
それを意識した瞬間、私は自分の中に言い知れぬ衝動が湧き上がるのを感じた。
―――この背中を見失いたくない。
それは恐怖にも似た感情だった。

気が付けば駆足で飛び出し、私は縋るようにその広い背を抱きしめていた。
全身の力を込めて。




そのときは思ってもみなかった。
追いかけた自分を後悔する日がいつかくるなんて。




* * * * *




仕事帰りに敦賀さんの車に拉致?された私は、もう何度足を運んだかわからないくらい来ているこのマンションにきている。
「ラブミー部の京子」に夕食づくりを依頼されて来ていたときは何とも思わなかったのに、「最上キョーコ」として改めて招かれると、急にその場所が見知らぬ場所のように思えて玄関をくぐるのすら一瞬躊躇ってしまう。
“食事作り”という大義名分がないのも大きな原因だったかもしれない。

「どうしたの?さあ入って。」
玄関で立ち止まったままの私に敦賀さんが訝しげな顔を向ける。
「えっと……その、お邪魔します。」
頭を下げて靴を揃える私を見て、敦賀さんがクスクスと笑う。
「そんなに緊張しなくていいから。…あ、それとも“男”の部屋に上がるなんてキケンって思ってる?今さらだけど。」
言われてパッと頬が火照った。

今まで何とも思わずに入り込んでいたけれど、そっか。
“男性”の一人住まいにうら若き乙女が上がりこむなんて、私ったら今までなんて破廉恥なことをしてたんだろう。
焦ってぶんぶん頭を振る私を落ち着かせるように、敦賀さんがぽんと頭を撫でる。

「冗談、冗談。君が困るようなことはぜったいしないから。」
言いながら腰をかがめて、顔をのぞきこまれた。

ちょ、ちょっと待ってください!
そんなに近くから見られたら私……

「それとも…してほしい?」

夜の帝王――――ッ!!!
ボンッと頭の中で音がしたように思えたのは気のせいだろうか。
顔全体が一気に熱をもち、目の前がちかちかしてくる。
ぶんぶんどころか首が痛くなるほどぶるんぶるん頭を振りまくり、振りすぎてへたれこみそうになった瞬間、さっと腕が伸びてきた。
はわわわわぁぁーーー
まるでお姫様をエスコートするように腰を支えられ、余計に力が抜けてしまう。

「とりあえず、リビングへどうぞ。今コーヒーを淹れるから。」


*


手元から漂ってくるコーヒーの心地よい香りにようやく気持ちが落ち着いてくる。
ふぅーと肩の力が抜けたところで、ソファの隣にカップをもった敦賀さんが腰かけた。

「本当によかったの?」

不意に聞かれて首を傾げる。
言われた言葉の意味が本気でわからなくて、顔を上げた。

「俺で。」

ほんの僅か視線をそらして、言いにくそうに続けられた言葉。
そこまで言われてようやく意味がわかり、慌てて首を振った。
「そんな。だって・・・」

―――好きだったんです。ずっと前から。

そう言おうとして息が詰まる。

彫刻のように美しく整った顔。その中でひときわ魅惑的な輝きを見せる瞳が、私をじっと見つめていた。
それだけでバクバクと心臓が脈打ち、ばかみたいに身体がほてって、言葉がうまく出てこない。
できるのはただ首を左右に大きく振ることだけで…。
でも、そんな私を敦賀さんは優しく見つめ、軽く口角を上げるとそっと抱きしめてくれた。
温かい腕の中で、私は目の前の広い胸に頬をすり寄せる。

―――好きです。大好きです。

心の中で何度もそう叫んでいることを、どうかわかってもらえますように、と。
そう願いながら。


*


「キョーコって呼んでもいい?」
そうして抱きしめられた腕の中でさりげなく、けれど恐る恐る問いかける声を聞いた。
NOなんて言えるはずもない。

「キョーコ。」

本当に心から大切そうに敦賀さんの口から零れ出た”キョーコ”という響き。
他の誰とも違うその響きに、鼓膜が震えドキドキが止まらなくなった。
どうしたらいいかわからず敦賀さんを見上げたら、困ったように目をそらされる。
(え?私、なにかいけないことをした?)
それた視線を追ってもう一度のぞきこんだら、敦賀さんは手を口にあて「参った」と呟いた。

(・・・?)
思わず首をかしげてしまう。
(私、何かした?)
とたんにぎゅっと抱きしめられ、ひぃっと背筋が伸びあがった。

「ほんとに君は無自覚なんだから。」

後頭部を押され、胸に顔を押し付けられる。
「え?」
そっと見上げると、ようやく見えた敦賀さんの首筋が真っ赤に染まっていて。
「・・・反則だ。」
ひとりごとのように呟く声がした。


反則?
それに・・・無自覚?
やっぱりなにかいけないことをしたんだろうか。


「あ、あの。私何か敦賀さんに悪いことをし・・」
ましたか?と続けようとした言葉は、ますます強く抱き締められたせいで音にならなかった。

強く、強く。
軋むほど強く抱きしめられる。

やがて耳もとでふぅーっと大きく息をはく音がして、
「キョーコ、愛してる。」
くぐもった声が聞こえた。

その言葉に頭の中がカァーッと炎上し、たまらず身を捩らせ・・・る暇もなく、髪に落とされたキス。
相次ぐ甘い攻撃になすすべもなく、身体からくたりと力が抜けていくのを感じた。






(続く)
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コメント

  • 2016/02/04 (Thu)
    01:44
    管理人のみ閲覧できます

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    # | | 編集
  • 2016/02/05 (Fri)
    11:53
    >み○○さま

    コメントありがとうございます^^

    > タイトルからして波乱は確定事項

    あはは。たしかに波乱確定なのがタイトルからわかっちゃいますね!
    キョコちゃん&敦賀さんには途中辛い思いをさせてしまうかもしれません(汗
    最後はハピエンを目指していきたいなあと思っていますが、どうなることやら…。
    ゆるゆるとした連載になると思いますが、読んでいただけたら嬉しいです。

    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2016/02/09 (Tue)
    23:00
    なんでしょうか。

    この初々しさ大爆発な二人は!

    恋人としての接触と反応に、二人とも脳が沸騰しまりくりですね。

    にやにやが止まりませんでした!

    ( ̄∇ ̄*)ゞへ



    魔人 #NkOZRVVI | URL | 編集
  • 2016/02/12 (Fri)
    07:38
    Re: なんでしょうか。

    こんにちは!
    にやにやしていただけてよかったです~。

    > 恋人としての接触と反応に、二人とも脳が沸騰しまりくりですね。
    脳が沸騰wまさに!
    恋愛オンチな二人だけに上手くいっても
    いや上手くいっただけに最初はお互い顔を見るだけで心臓バクハツするんじゃないかって気がします。

    ちなぞ #- | URL | 編集

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