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[拍手再掲] 直して下さい

※こちらは、拍手御礼として掲載していた作品です。
拍手ページのうちのひとつを久しぶりに入れ替えてみました。



「敦賀さん!」

うしろから掛けられたその声に、喜びを隠せない顔で振り向けば、荷物を両手に駆け寄ってくる君が見えた。
真っ白なニット帽を目深にかぶり、息せき切って走ってくる君。


「おひさしぶりです!」

そう、君に会うのは何週間振りだろう。
地方ロケとスケジュールの立て込みで、ちっとも君に会えずにいた。
だから一層、こうして会えると嬉しさが込み上げる。


「本当にひさしぶりだね。」
歩み寄り、その手の荷物を持とうとしたら、

「あ、あの、すみませんっ。」
遮るように声を掛けられて、手が止まった。
拒絶に近い言葉も行為も、君からは一切うけとりたくないんだけど・・・

「え?何?」
恐る恐る聞いてみる。


すると、君は息せき切ってこう言った。

「帽子、直していただけますか?」

走ってきたせいだろうか?
言われてみれば確かに、せっかくかぶっていた帽子が鼻先近くまでずり落ちている。

「前が見えなくなっちゃって。」

スンスンと鼻を鳴らすような動きをしているのは、もしかして何とか自力で帽子を上にあげようとしている?
そんなが仕草が可愛くて、ついくすくす笑ってしまう。

「もうっ!笑ってないでお願いします!」
「ごめん、ごめん。今、直してあげるね。」
答えた俺の声に向かって、君は顎を突き出すように顔を上げた。


そう――――。
まるでキスをせがむみたいに。


帽子の下からのぞく唇が桜色に輝いて、翳りを知らない宝石のように見えて。
俺は思わずこくっとツバを呑みこんだ。

「動かないでね」
そっと指をのばせば、君はぎゅっと唇を閉じる。
たぶん、同じように瞼もぎゅっと閉じているんだろう。

小さく寄ったシワの端が垣間見える眉間辺りでニット帽をひょいとつまんだら、小指に君の鼻先がぶつかった。


あ。


その文字の形に小さく動く唇。
それと同時に、君が零した甘い甘い吐息の欠片が、指先をすりぬけていったような気がした。



ねえ・・・?
もし今、俺が突然キスをしたら。
君は・・・どうする?

逃げ出さずに・・・いてくれる?


いつかその唇に躊躇いなく触れられる日がくることを願いながら。
俺はそっと、ニット帽を元に戻した。

心に浮かぶ疾しさと必死に戦いながら。




fin
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コメント

  • 2016/01/11 (Mon)
    18:33
    うふふ

    この拍手のお話、好きです。

    躊躇いなく触れられる日がくるのが先か、我慢できずに触れちゃうのは先か。

    もうこの際(←)どちらでもいいから、蓮さん頑張って!

    と思って読んでました。(‘▽’)ノ

    まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集
  • 2016/01/12 (Tue)
    11:07
    Re: うふふ

    ありがとうございますー。
    久々に読み返して、自分もけっこうコレを好きだったのを思い出しましたw

    > 躊躇いなく触れられる日がくるのが先か、我慢できずに触れちゃうのは先か。

    我慢できないほうに一票!

    ちなぞ #- | URL | 編集

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