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Birthday Eve (後編) ~キョコ誕~

思いのほかUPが遅くなってしまいました。タイトルは24日のことを指しているのに、もう27日…。



「もうっ、ここにいても滅入るだけだし、ケーキでも買ってこようっと。」
わざと弾んだ声でそう言って、キョーコは掛けていたコートを手に取った。

「スッピンならきっと誰も気づかないわよね。」
それでもちょっと迷って毛糸の帽子を目深にかぶり、最近よくかけている度の入っていない眼鏡へ手を伸ばす。
カタッ
隣に置いていたスマホが、自分も連れて行けというように乾いた音を立てた。
しばらく迷って躊躇って結局それもポケットに入れる。
そうしてようやく玄関の外に出たら、厚手のコートを着てきたつもりなのにまだ震えるほど寒かった。



今やすっかり人気女優となったキョーコが住んでいるのは、こじんまりとした7階建てマンションの最上階。
セキュリティを第一に、ワンフロア1戸で最上階には専用エレベーターまである高級マンションだ。
エレベーターホールには緑が随所に置かれ玄関が直接覗けないようになっている。
当然無駄な外気はきっちり遮断されているけれど、キンとした寒さに変わりはない。
室内との温度差に小刻みに震える身体を自分で抱きながら、キョーコはその場所にぼんやりと立っていた。

3階、4階、5階・・・。
もうすぐエレベーターが到着する。

♪♪~~♪♪♪~~

そのとき、ポケットから音楽が鳴り始めた。
すぐわかるその音。

(敦賀さん!)

ハッとして、ポケットに手を入れ音源を取り出す。
画面に現れる通話マークを押そうとしかけて指が止まった。
鳴り続ける音楽が、キョーコに早く出ろと急かすけれど、なぜか指が動かない。
さっき自分から掛けておいて、どうして出られないのか自分でもわからなかった。
立ち尽くすキョーコの足許から冷気がじわじわと這い上る。
止まらない震えに、視界が滲んだ。



「こんなに寒いのに、いったいどこへいくつもり?」

不意に背後から聞こえた声に、びくりと全身が波立った。
(え?)
「デートってわけでもなさそうだけど?」
(この声。)
「チャイムを鳴らしても電話を鳴らしても出てくれないのはなぜ?」
(うそ・・・。)

振り向く間もなく、後ろから力いっぱい抱きしめられた。
身体の震えをおさえつけるように、逞しい腕が体に巻き付く。
密着した身体から伝わる熱が、震えていた身体をやさしく包み、先ほどまでの冷気からキョーコをくきりと遮断した。
途端に立ち上る懐かしく愛しい匂い。

(ありえない・・・絶対にありえない。この人が、ここにいるはずがない。)

――――敦賀さん

「もう、俺のことなんて嫌いになったの?」
耳元で囁かれた言葉に、キョーコはイヤイヤをするように首を振った。


チンッ

いまだ混乱するキョーコの思考を遮るように音が鳴った。
目の前のエレベーターの扉が開いている。
その奥に据えられた鏡に映る、自分を抱きしめる大きな人影。
鏡越しの歪んだ像でもはっきりと伝わる強いオーラ。完璧な美貌、精悍で均整の取れた体躯。
間違えようがない。

「本物の・・・敦賀さん?」
「違う。」
即座に響く否定の声に焦る。

「え?」
「敦賀さんなんて、君にそんな他人行儀な呼び方をされる覚えはないよ。」
言葉とともに強引に向き直され、むさぼるように唇を奪われた。

「この唇は、そんな風に俺を呼ぶためにあるんじゃないでしょ?」
もう一度キス。
「ねえ、キョーコ。」
もう一度。
「・・・・・・蓮、さん。」
ようやく唇が離れ、嬉しそうに破顔する蓮が見えた。
蕩けそうなほど甘い笑顔がキョーコに向けられ、そしてすぐ苦しげに歪む。

「会いたかった。どうしようもなく会いたくて、会いたくて気が狂いそうだった。
でも会えばそのまま君を離せなくなる。
君がどれだけ仕事をがんばっているかよくわかっていたから、そんな無体はできないと必死に自分を戒めていた。」

真摯な瞳が瞬きもせずじっとキョーコを見つめる。

「・・・でも、限界だったみたいだ。」
気づいたら飛行機に飛び乗ってたよと苦笑する甘く切ないその声に、キョーコの胸がキュンと疼く。
同時に自分の胸に去来する、離れている間の酷く淋しかったことや哀しかったこと、壊れそうなほど苦しい想い。
でもそれもみんな、こうして抱きしめられるだけで洗い流されていくようだった。


「電話やメールがあれば平気だなんて思った自分が浅はかだったよ。むしろすればするほど気持ちが募って・・・」
思わず目を伏せたキョーコの頬を大きな手が覆い、額に額がこつんと押し付けられる。
「すべてを投げ出してしまいそうになる自分が怖くて、電話もメールもちゃんとできずにいた。」
だめだな、俺。とつぶやかれ、自分だってと言いたくてキョーコは身じろぎしたけれど、ほんの小さな隙間も許さないとばかりに抱きかかえられて、1mmも身体を自由に動かせない。

――――でも、それが何よりも幸せだった。

「・・・」
ふと、独り言のように蓮が何か言った。
「これ、邪魔。」
どこかふてたような声。
とたんにキョーコの頭から毛糸の帽子がカポンと外され、蓮の頭に乗せ換えられる。
そのままキョーコの髪にすっぽりと顔を埋め、蓮はその場所に何度も何度もキスを落とした。

「ああ、本物だ。華奢で柔らかくてしなやかで。ずっとこうして抱きしめたかった。キョーコ・・・俺のキョーコ。」
片手はキョーコを抱えたまま、反対の手で腕に触れ、髪に触れ、頬に触れ・・・。
ひとつひとつ大切そうにキョーコを確かめていくその顔は穏やかで満ち足りたものだった。

(本当に、本当の敦賀さんなんだ・・・。)

実感してようやくキョーコは我に返った。
「ど、ど、ど、ど」
「ど?」
「どうしてここにいるんですかーっ!」
「え?どうして?」
なんでそんなことを聞かれるのかさっぱりわからないという顔の蓮。
「だって引っ越した時にカードキーのスペアをくれたでしょ?」
「そ、そういう意味じゃなくって、だってLAにいるはずなのに。」
「今は日本にいるけどね。」
しれっと返してくる蓮の全身に目を向ける。
「それに、その恰好・・・。」

言われてキョトンと自分を見下ろす蓮は、オールブラックのタキシード。
ボタンを外しているせいで、真っ白なドレスシャツが逞しい体のラインを露わにしている。
襟元に結ばれた渋いブラウンの小さな蝶ネクタイがスタイリッシュな遊び心を忍ばせ、蓮から溢れ出る男の色香を爽やかに見せていた。
それは、どう見てもちゃんとしたパーティスタイル。

「ああ、アルマンディのパーティに出てたから。」
何でもないことのように言ったあと、ふっと顔を曇らせた。
「仕事を放り出してきたのかって怒らない?」
シュンとした声が聞こえる。
「でも、いちおうパーティで必要な挨拶は済ませてきたから。それに、仕事に穴を開けたりはしていないよ。監督の都合で今日と明日の撮影が急遽中止になったんだ。」
言い訳のように言い募る蓮にキョーコは思わずクスリと笑う。
「パーティ中に連絡をもらって、すぐ飛び出した。だから、あぁーーー!!」
突然声を上げたかとおもうと、蓮は頭を抱えた。

「ごめん。思いついて着の身着のまま飛行機に飛び乗っちゃったせいで、誕生日なのに花束ひとつもってない。」
心底すまなそうにうなだれる蓮に、キョーコはふるふると首を振る。

「ううん、そんなこと。」
何度も首を振りながら、それでもそらすことなくキョーコは潤んだ瞳でじっと蓮を見つめた。
見つめながらゆっくりと両腕を上げ、蓮の首へと回す。
「一番ほしいものをもらえたから。」

そうしてキョーコは自分から目の前の愛しい唇にキスをした。


*


ちなみに、このあと。
「誕生日プレゼントにほしかったのは俺って言ったよね。確かに言ったよね。あげるよ。俺全部丸ごとあげる。」
と蓮の結婚ごり押しが始まったのは言うまでもない。
そして、(実は本人も知らぬ間にハリウッドからオファーが殺到していた)キョーコがついにその押しに負けてしまったのも言うまでもないこと。

「まったく、あんたと敦賀さんってほんとめんどく・・・お似合いよね。」
報告を受けた奏江は、おめでとうより先にまずそう言って笑ったのだった。



Fin

ベタでスミマセン
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コメント

  • 2015/12/28 (Mon)
    20:11
    ぐはっっ!←吐血

    ちなぞ様マジック。
    いつも素晴らしくキラキラしていますが、我らが記念すべきキョコ誕祭では、キラキラも倍増。

    思わず、吐血(鼻血越え)!

    うん、魔人ここで果ててもよいですかー。←生ゴミ置き去り?


    大人な二人が、互いを求めあう感じがすてきー。
    飛んで来た蓮さんの密着具合がすてきー。
    嬉しくて仕方がないキョコさんが可愛いすぎー。

    で、オチも大好きー。

    楽しい楽しいお話を御馳走様でしたー。

    まじーん #NkOZRVVI | URL | 編集
  • 2015/12/28 (Mon)
    22:45
    Re: ぐはっっ!←吐血

    おわっ!吐血!?ヤッター!

    糖分自己補給、とばかりに頑張って書いたのですが
    ひさびさすぎて甘いのか甘くないのか自分でわからなくなっとりました。
    吐血していただけたのなら本望ですっ!

    オチも気に入っていただけてよかったー!
    ちなみに社さんは、言葉もなく砂を吐いていた模様w

    ちなぞ #- | URL | 編集

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