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Birthday Eve (前編) ~キョコ誕~

今度こそキョコ誕(のつもり。)
成立後のお話となります。前後編の予定ですが、3話になるかも?



ロサンゼルスのクリスマスは華々しすぎるほど華々しい。
ときに建物を超えるほどの高さで周囲を圧倒する大きなツリー。あちこちの広場で行われるダンスやライブのイベント。街のそこかしこから聞こえてくるクリスマスソング。さらに夜になれば、街中のイルミネーションがぎらつくほどの輝きで、街ゆく人々を映し出す。

「世間はクリスマス一色・・・か。」
スモークガラス越しにその様子を眺め、蓮は深いため息をついた。
遠い空の下にいる愛しい彼女を思い浮かべながら。


20歳で彼女と再会してから8年。
紆余曲折を経て、なんとか“ただの先輩と後輩”から”恋人同士”にステップアップさせてから、もう5年になる。
晴れて”恋人”になれた頃には彼女は一人の女性としてすっかり開花しており、誰が見ても息をのむほど美しくなっていた。
そう、悔しいくらいに。

(キョーコの良さなんて、俺だけがわかっていればよかったのに。)

そう思ってももう遅い。
彼女生来の性格も相まって、魅せられる男の数は知れず。
だが、山と築かれていく馬の骨を尻目に恋人という立場を勝ち得ていた俺は、彼女は俺のものだからと安心しきっていた。
まあ、相変わらず鈍感な彼女は自分に群がる馬の骨1本すら気づいていなかったのだけれど。

けれど、本当に安心できたのなんてほんの一瞬だった。
諸々の事情で付き合っていることを公にできなかったのも大きかったかもしれない。
二人の関係は薄々察せられていただろうに(まあ、察するように仕向けていた面もあるが)、蹴散らしても蹴散らしても懲りずに押し寄せてくる馬の骨。その中にはとんでもなく根性のあるやつも少なくなく。さすがの俺も手を焼いた。

彼女の気持ちを疑うことはなかったが、そんな状況にあって何の拘束もない”恋人”だけで我慢できるほど、俺は忍耐強くもない。
本当は彼女をどこかに連れ去って隠して俺だけのものにして、毎日ただただ愛し尽くしたいくらいだったけれど、さすがにそれは我慢した。
その代わり、ステップアップしたその日から、何とかのひとつ覚えのように、結婚したい結婚しようと言い募っていた。
それが、全部とは言わないまでも相当数の馬の骨を一気に埋没できる最も有効な方法だと思っていたから。
いや、とにかく1分でも1秒でも彼女といられる時間を作るにはそれしか方法がないと思っていたのかもしれない。

結婚となればさすがに事務所も公にせざるをえない。
そうなれば世の中のすべての人に、彼女が自分だけのものだと宣言でき、同時に自分を彼女に縛り付けられる。
俺だけの彼女。彼女だけの俺。
なんと甘美でなんと魅惑的な響きだろう。

・・・でも、あまりにも言い過ぎたのが災いしたらしい。

『もうっ、冗談ばっかり言わないでください!』

相変わらずの上目遣いで困ったように小首を傾げ、口を尖らせてそう言う彼女。
その殺人的な愛らしさにノックアウトされ俺がドギマギと言葉を失っている間に、するりと話を変えられる。
結局一度として彼女は、俺が本気だとわかってくれなかった。

ちょうど同じころハリウッド進出の機会に恵まれたのは、今思えば幸運ではなく不運だったのか。
気が付けば活動の拠点も日本からアメリカに移され、決死の想いで獲得した”恋人”という地位を活用できる機会は大幅に減っていた。
馬の骨に目を光らせようにもどうにもならないことが多くなり、仕事は順調なのにイライラと焦燥が募る。
そもそも、自分のそばに彼女がいない侘しさと寂しさに日々苛まれるようになっていた。

会いたい。
触れたい。
声を聞きたい。
抱きしめて、口づけて、その温もりを噛み締めたい。
彼女の熱を、俺のすべてで感じたい。

もちろん彼女を置いてアメリカに拠点を移したのは、俺自身が選択したこと。
彼女と別れたくないなどという理由で目標だったハリウッド進出に目をつぶることは、誰より彼女自身が一番喜ばないと分かっていたからこそ、この道を選んだ。
彼女が誇りに思える俺であるために。



ウインドウから視線を下げれば、外の喧騒は完全に遮断される。
俺はポケットからスマホを取り出し、画面を見た。
待ち受け画面は、日本とロスの現時刻がすぐにわかるデジタル時計。

ハリウッドの活動が中心になってから3年。まだ一度も彼女の誕生日を一緒に過ごせたことがない。
それどころか、ずっと続けていたジャスト0時の「おめでとう」すら、去年は言えなかった。


ロスはまだイブにもならない。
でも日本では・・・。


――――彼女の生まれた日まであと12時間。



(続く)
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