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おめでといんたびゅー (5)

息抜き小出し連載、ようやく結末です。
最後は少し長めで。


「敦賀くんさあ・・・・・・。」

テレビから聞こえてくる、同じ声が楽屋に響く。


「予定日より数日早く産気づいて入院って聞いた途端、貧血起こして頭から倒れそうになった君の巨体を支えてあげたのは誰?」

とたんに蓮の喉がこくんと揺れた。

「ほら、口に出してちゃんと名前言って。」
「・・・・・・・・・貴島くん。」

「で、焦ったマネージャーさんがその件で走り回ってる間に、事態が事態だしってことで撮影の中断を監督に説得したのは誰?」
「・・・・・・・・貴島くん。」

「で、電話片手にへたれこんで使い物にならなくなった君のために、車を飛ばして病院まで連れて行ってあげたのは誰?」
「・・・・・・・・貴島くん。」

問われるたび、蓮のからだがどんどん小さくなっていく。

「だよね?じゃあ、さっきの話に戻るけど・・・そもそも、このインタビューだって、正直言うと敦賀くんのことを考えて受けといたんだよ。」

そう言って貴島はテレビ画面を指差した。
もっとも中はすでに次の話題に移っていたが。

「もし君がここに現れたら、いつまでたってもマスコミが放さなかったと思わない?だからほら、こうやって俺が報道陣引きつけてたわけ。」

はあ…というため息の音。

「その間に、君は裏口からさくっと病院抜け出せたでしょ?ま、いくらなんでも、それくらい敦賀くんだってちゃんと分かってるよね?」

「し、しかし・・・・・・。」

「報道陣を俺にひきつけておくには、多少のリップサービスくらいしないとダメだと思わない?」

「それはそうかもしれないけれど・・・・・」

「俺ができるリップサービスなんてたかがしれてるじゃん。だからああいう発言になったわけだけど。」
貴島がぐいっと蓮を真正面から見つめ直した。

「・・・で、何が不満だって?」
「・・・い、いや・・・・なにも。」

「むしろお礼を言われて然るべき、だよね?」
「う・・・うん。昨夜は・・・・・・・・とう。」

ぶつぶつと呟くような蓮の声。

「え?なに?」
「・・・・ありが・・・とう。」

「よく聞こえないんだけど?」
「・・・ありがとう。」

「言葉だけ?」
「・・・・・・貴島君、本当に・・・ありがとう。」

蓮の頭がゆっくり下がる。

「いやあ、天下の敦賀蓮に頭を下げられるって気持ちいいね~。どら焼きもおいしいし、今日もいい撮影できそう!」

にやりと笑ってあっさりそういうと、貴島は突然蓮に向かい正座をし直した。

「おっと、忘れてた。何はともあれ、改めまして新米パパ、おめでとうございます!結果的に安産だったみたいだし、京子ちゃんも赤ちゃんも元気で何よりだったよ。」

齧りかけのどら焼き片手に、改まったようにお辞儀をする貴島につられ、蓮も膝をついてもう一度頭を下げる。
やりとりからのその流れが妙におかしくて、固唾を飲んで見守っていた社の肩から一気に緊張が抜けた。

(“イイ男揃い踏み”だっていうのに、何だかコントみたいだよな。)

「まあ、君はさ。俺なんかのつまらない発言に気を取られる暇があったら、生まれたばかりの娘さんのことや大事な奥さんのことをまず考えるべきだね。
・・・そうだ!で、娘さんにはいつ会わせてくれるの?敦賀くんとキョーコちゃんの子供だもん。美人間違いなしだよね~。いやあ、今から将来が楽しみだなあ。」

伝説の美少女の誕生!なんちゃって・・・と妙にワクワクした口調で貴島が呟いていると、
「・・・貴島くん。」
下げた頭の位置はそのままに、顔だけ上げて蓮が口を開いた。

(お、おい、蓮・・・)

微妙に流れる不穏な空気。

「ん?」
「今回の件は本当に感謝してる。いくら頭を下げても下げたりないくらいだ。この恩は絶対に忘れない。でも・・・、でも娘は、娘は君には・・・ぜったい会わせないから!」

力強く宣言するその様に、社は大きなため息をついた。

「あはは~。さっそく娘溺愛の親バカっぷり発揮?いやいや、無駄無駄。君がそう言ったって、あの律儀な京子ちゃんが、頼んで会わせてくれないわけないじゃん。」

うぐぐと言葉を呑みこむ蓮の様子に我慢の限界を超えたか、社がぶはっと吹き出した。

(ここ数年の間に、気が付いたらこの二人もすっかり仲良くなってたよな。)

などと思いつつ。



「まあさ、落ち着いたらお祝いもって遊びにいくからよろしくね。」
気が付けば3個めのどらやきを頬ばり、ひらひらと手を振る貴島。

「さ、蓮。そろそろ行くぞ。」
潮時だとばかりにポンポンと肩を叩き、社は脱力する蓮を引き摺るように楽屋から追い立てた。

「あ、そうそう、敦賀くん。」
そんな二人を追いかけるように、貴島がとぼけた声を掛けてくる。

「俺のターゲットって基本“大人の色気を備えた女性”だからさ。娘ちゃんについては、少なくともあと20年は安心して大丈夫だからね~。」

途端に蓮の身体が動かなくなった。

「む、す、め、“は”?」
掛けられた言葉にさっと振り返る。

「貴島くん、それどういう意味?」

再び楽屋にずんずんと足を踏み入れようとする蓮の腕を、社はぐいと引き寄せた。
「蓮、ホントにもう時間だから。からかわれてるだけなのに本気で怒るなよ。」

(いやほんといい加減にしてくれよ。にしても、とっさによく気が付くよな。娘“は”なんてさりげないひと言に。まあ、たしかに・・・)

結婚・妊娠を経て、ますます女らしく、ますます美しさに磨きのかかったキョーコの顔をふと思い浮かべる。
今のキョーコは、少女のころの初々しい可愛らしさはそのままに、貴島のいう“大人の色気”も備えた稀有な魅力に溢れていた。
"たしかに貴島さんがひとこと言いたくなるのもわかるよなあ"、と蓮の前では絶対に死んでも口にはできないことを考えながら、社は全力で自らの担当俳優を楽屋の外へと引きずり出したのだった。





Fin
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コメント

  • 2014/10/12 (Sun)
    12:11

    うははははは。へたれんどころかダメダメじゃないですか… 娘さんが少し大きくなってこのエピソードを聞いた時に、パパだめぢゃん、貴島さんって頼りになるよね!なんて言われたらどうするんでしょう… 蓮キョファミリーと独身貴島さんは永く付き合いそうですよね。

    へなへなっちです #- | URL | 編集
  • 2015/11/27 (Fri)
    22:14
    Re: タイトルなし

    うふふ。
    きっと敦賀さんに娘ができたら、何があっても貴島さんには近づけないと思います!
    あ、もちろん奥様もw
    私の中では、貴島さんはすっかり敦賀さんのいい親友になってます♪

    ちなぞ #- | URL | 編集

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