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二人の朝

本誌展開にひょーーーーと雄叫びを上げつつ、成立後の2人が過ごすいちゃらぶな朝のひとときをふと書き散らしてみたり・・・。

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僅かな空気の流れとともに、雨上がり特有の匂いがうっすらと鼻先を通り過ぎていく。
(・・・うぅん・・・・)
次第に覚醒する五感に誘われ、ゆっくりと目を開けば、やわらかな春の朝陽がベッドの彼を淡く照らしていた。
その腕にあるはずの重みはもうなく、ただぬくもりだけがぽっかりとヒト型を象っている。
慌てて顔を上げると、視線の先にそこから抜け出していった人影が窓際でカーテンを揺らしているのが見えた。

「おはよう、久遠。気持ちのいい朝よ。」
耳元をくすぐるように響く甘い声。
けれど流れ込んできた陽射しが思いがけぬ強さで彼の目を眩ませ、表情がよく見えない。
それが何だかひどく淋しくて、
「おはよう、キョーコ。」
言いながら彼は、シルエットに向かい両手をぐいと伸ばした。

「おはよう。」
もう一度朗らかにそう言うと、らしからぬ寝ぼけ眼で両腕を差し伸べる彼にくすくすと笑みを零しながら、彼女がストンと飛び込んできた。
滑り込む体躯を、失っていた大事な欠片を取り戻すように大切に受け止め、彼はそっと安堵の息を漏らしてみせる。
「やっとつかまえた。」
委ねられる身体の重みは、彼にとってそのまま幸せの重みだ。
(ぜったいに離さない。)
想いをままにつるりと心地よく滑る頬にじゃりじゃりと顎を擦り付けると、
(まるで、マーキングだ。)
ふと気が付いて、笑いがこみ上げてきた。

「痛いっ。髭が痛いですぅっ。」
わざと乱暴に顎を押し付ける彼に眉を顰めながら、彼女は顔を左右に振り腕の中からすりぬけようと大仰にもがく。
「だーめ。」
でも、腕は緩まない。
(昨日は珍しく1日オフで髭も剃らずにいたから、確かに少し伸びているかもしれないな。)
呑気にそう思いながら、なお強く彼は頬擦りを繰り返した。
彼女の憤りなど気にもせぬ素振りで。

「だーかーらー、痛いですってば。」
ワシワシと肩を揺らし頭を振って身を捩らせる彼女は、どこからともなく指先を引っ張り出すと、目の前の額をぺしりと叩いた。
「大事なお肌が擦れちゃいます。」
これでも一応女優なんですよ、なんて口を尖らせているのが丸わかりの拗ねた声。
(キョーコのこんな口ぶり、俺だけしか耳にできないよな。)
そう思うだけで、ついまた彼の口許は緩んでしまう。

「何で笑ってるんですか!わたし、怒ってるのに。」
すっぽりと収まった腕の中から聞こえてくる一層拗ねた口ぶりが妙に嬉しくて、彼は一旦顔を離すと、予告もなく目の前の唇をかぷりと摘まんだ。
「ん・・・今日もおいしい。」
満足そうに呟けば、今度は彼女が反抗するようにはぐんと唇に噛みついてくる。
「いたっ!」
「し・か・え・し。」
上目遣いにふふんと笑う姿が、小悪魔みたいに可愛くて、愛しくて。
回した腕につい力がこもった。
そのままこつんと額を突き合わせ、彼は背中からベッドに倒れこむ。
両腕一杯に彼女の重みを感じながら。
じたばたともがくその身を心ゆくまで抱き締めて。
「負けないぞ!」
ふざけた口ぶりでそう言うと、何度も何度も唇を啄んだ。

「もうっ!久遠ったら、ほんとに子供みたいなんだから!」
不意に彼女は彼の前髪をひょいと摘まみ、指先でくるくると弄びはじめた。
さらさらと額を撫でる前髪の先端と時折触れる指先が妙に心地よくて、そのままされるがままになる。
くるくる くるくる くるくる くるくる
細く開けた窓から入り込んでくる風がその動きに同調するように、リズミカルに頬を撫でていった。
くるくる さらん くるくる さらん

「ねえ、キョーコ・・・。」
瞼を閉じて、その感触を存分に味わいながら、
「どうしていつもそこを弄るの?」
何となく口にした。

え?という疑問の形に吐き出された吐息が彼の頬に吹きかかる。
「朝起きたとき、君はよくそうやって俺の前髪に手を伸ばすだろう?」
そう言われ、彼女はきょとんと彼を見返した。
「もしかして気づいていなかった?」
「えっと・・・。」

うーんと首を傾げて。
明後日の方向に視線を向け。
ひとしきり考えた彼女は、“あっ”と気づいたように口を開き・・・。
―――そして、くすっと微笑んだ。
「く、せ。」

「くせ?」
問い直す彼に、指先に絡んだ髪をくるんと回し微笑み返す。
「そう。あのね・・・。」
もう一度、くるん。
それからそのひと房をちょんと引っ張って見せた。
「この髪だけ、くせがあるの。」
あなたのさらさらの髪が朝はここだけ飛び出るように跳ねてるときがあるのよ、と彼女は続けた。
ふふんと得意げに鼻を鳴らしながら。
「きっと、私しか知らないけど。」
ちょん ちょん
「だから、私だけが知ってるあなたの秘密。」
ちょん ちょん
「ね?」

そうして少しの間を置くと、囁くように彼女は繰り返した。
「私、だけ。」

言葉とともに彼女が小首を傾げ、ふっと微笑んだ途端、彼はのしかかるようにぐるんと身体を反転させると、そのまま彼女を思い切り抱き締めた。
ぎゅっと、ぎゅっと。
ただひたすらに抱き締める。
彼女が戸惑うほど強く。
ぎゅっと、ぎゅっと。

息もできぬほどの強さで抱かれ、そのうえ開いた口唇を有無を言わさず塞がれて。
苦しさに耐えきれなくなった彼女が彼の背中を拳骨で力いっぱい殴りつけはじめるまで、ずっと―――。

彼はそのまま抱き締め続けた。



何気ない朝のひととき。
二人の時間は、ほらこんなにも優しい。



fin
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コメント

  • 2014/04/23 (Wed)
    23:18
    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    # | | 編集
  • 2014/08/27 (Wed)
    01:41
    Re: No title

    >ちょびさん
    コメントありがとうございます♪(今さらのお返事でごめんなさい)
    小さな独占欲って相思相愛の2人にとっては、幸せのスパイスですよね~。
    本誌でもはやく2人のいちゃこらをみてみたいものです(=´∇`=)

    ちなぞ #- | URL | 編集

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