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シャツ越しに 後編

バレンタインにUPしておきながらバレンタインとは程遠いお話、最終回です。
文章ってやっぱり続けて書いていないとダメですね。直しても直してもうまくまとまらないし、辻褄が合わなくなっていく・・・自分の文章力のなさにげっそりです。
とはいえせっかくリハビリをはじめたので、引き続きいくつか思いついたネタを形にできるようがんばりたいと思います!(でもオリンピック観戦で絶賛脳みそ時差ボケ中)。

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シャツ越しに 後編
―――――――――

こつん。

(え?)

額を肩にぶつけるようにのしかかってきた頭。
間違えようのない重さを感じ、身体がピキンと硬直する。
「ありがとう。」
蓮の声がぼんやりとうつつの脳裏にこだました。
「・・・君がいてくれてよかった。」
キョーコを抱きすくめたまま、蓮はそう言って深く大きく息をついた。
熱のこもった吐息がキョーコの肩口を抜け、うなじを走り、硬直した身体を走り抜けていく。

いつしか背は、長く逞しい両腕に柔らかく、でもしっかりと包み込まれていて。
逃げることもできず、嫌だと言えるはずもなく、キョーコは蓮の心棒になったようにその場に立ち尽くしていた。
緊張に凝り固まった全身の中で蓮の顔が埋められたその場所だけが燃え上がるように熱く、熱く心を揺るがせる。
その熱に押しつぶされそうで、怖かった。
言われた言葉の真意を、探るのが怖かった。
それでいて、恐怖の底につい浮かべてしまうわずかな期待。
この一瞬が永遠に凍結されてしまえばいい、いつしかそう願っていた。


「あったかいな。」
不意にキョーコの耳もとで声がした。
音になるかならぬか分からぬほどの小さな囁きなのに、キョーコの鼓膜を直接震わせ、言葉をはっきりと伝えてくる。
それほどに、近かった。
「何があっても、こうして君が傍にいてくれたら・・・俺はきっと強くいられる。だから・・・」
背に回された腕に少しずつ力がこめられていく。
「このままずっと、俺の、傍にいて。」
すべての血液がそこに流れ込んでいくような気がした。
聞かされた耳元がドクドクと激しい音を奏で、言われた言葉をかき消してしまう。
耳から入る音より、内側から響く心音のほうがずっと大きくて。
大きくて。
大きくて。
そうしてその音が、どうにもできないほど激しく大きくなったとき―――。

着ていたシャツの薄い布越しに肩に触れていた唇が、ゆっくり文字を象るのを感じた。

『・』

『・』

『・』

(え?)
ピクンと震えた肩に刻みつけるように、もう一度繰り返されるその動作。
それはおそらく、3文字の言葉。
(な・・・に?)
何と言っているのかはわからない。
でもどうしても気になる。
(『ウ』・・・『イ』・・・『ア』・・・?)
唇の動きの真似をして。50音を当てはめて。
そうして言われた言葉を何とか探り出そうとしているうちに、やがてそれが、

『ス』

『キ』

『ダ』

そう思えてハッとした。

(そんなはず、あるわけないじゃない。)
心の中でぶんぶんと頭を振り、邪な考えを振り払おうとしたけれど、一度浮かんだ考えはそう簡単には消えてくれない。
それどころか、どんどんどんどん心の内を占めていく。

(違う。違う。違う。)
叫んでも、叫んでも、その想いが消えてくれなくて。
(ありえない。そんなことあるはずない。あるはず、ない!)
暴発するように身体を揺らし、寄せられていた厚い胸を力いっぱい押しのけた。

これ以上、この場所にいたらダメだ。
勝手な思い込みに、隠していた想いが引きずり出されてしまう。

それだけははっきり分かった。

「あ、あ、あの!私、そろそろ本当に失礼します。」
キョーコは逃げるように鞄をつかみ、玄関へと駆け出した。
「遅くまですみませんでした。まだ電車もあるし、今日は送っていただかなくて結構ですから!」
玄関先で頭を下げながら、蓮にしゃべる隙を与えぬよう先ほどと同じセリフを一気に叫ぶ。
そして、扉の閉まる重い音を背に聞きながら、キョーコは振り向くことなくエレベーターホールに向かった。



がらんとしたエレベーターホール。
閉じた扉の前で、急かされるようにカタカタと何度も下向きのボタンを押す。

(なんだったんだろう。いったい、なんだったんだろう。)
おさまらない動悸に息をとぎらせながら、頭の中を疑問符がぐるぐると駆け巡る。
(ありえない・・・。敦賀さんが私を好きなんて。敦賀さんが私を・・・好き・・・なんて・・・。)
その疑問を頭の中で文字にした途端、そんなつもりはないのになぜかどんどん視界が歪んでいった。
慌てて打ち消すようにごしごしと目をこする。
ごすり、ぬぐい、こすり、ぬぐい。
そうして行き来する手の甲が、何気なく唇に触れ―――。

そのまま・・・手が止まった。

気が付けば、うっすらと塩辛いその場所に向かい、唇を動かしていた。
『スキダ』 『スキダ』 『スキダ』
何度も何度も言葉を重ねる。
甲が感じる唇の動きに、ただひたすらに気持ちを集中させて。
(ちがう。ぜったい違う。そんなはずない。)
思いつつ、それでもなぜか止められなかった。
『スキダ スキダ スキダ ・・・・・・スキ・・・』

「・・・好き。敦賀さんが・・・好き。」
漏れ出た自らの声を耳にしたとたん、キョーコの両眼から大粒の涙が一気に溢れ出た。



「最上さん。」
そのとき、不意に頭の上から響いた声にキョーコは全身を硬直させた。
身体がぶるぶると震えはじめる。
怖くて、とても振り向けなかった。
―――聞かれた。
そして、そのまま崩れ落ちるようにその場にしゃがみこんだ。

「・・・最上さん。」
繰り返し名前を呼ぶ声がする。
けれどキョーコは、顔を両手で覆い、しゃがみこんだまま動けずにいた。
蓮はそんなキョーコの後ろにゆっくりと同じように屈み、意を決したように口を開いた。
「こっちは向かなくてもいいから。俺の話を聞いて。」

「ずっと・・・。」
震えるように揺らめく声。
「君には見せたくなかった。弱い俺も。苛立っている俺も。負の感情にいいように振り回されている俺も。そんな本当の自分を、君にだけは絶対に知られたくなかった。」
言葉が途切れ、すぅと息をのむ音がした。
「・・・そんな自分を知られて、君に嫌われたくなかった。」

え、っと声を返す前に、背後から伸びてきた両腕がキョーコをぐいとひと息に抱き締める。
バランスを失ったキョーコの身体が、蓮の胸の中にすとんと背から落ちた。
「君の傍にずっといたかったんだ。そのためには今の関係でいるしかないと思っていた。君の尊敬する先輩でいさえすれば、俺はどんな男よりも君の近くにいられる。それなら、自分を隠し敦賀蓮を演じ続けるのも悪くはないと、そう思っていた。でも・・・」

再び言葉が途切れ、蓮の喉がこくりと小さく鳴った。
押し付けられた胸元から、ドクドクと激しい心音が響いてくる。

「間違っていた。俺は・・・ただ逃げていただけだったんだ。君が俺にしてくれるように、真正面から君に向き合っていなかった。君を欺いていた。それに何より・・・本当の自分を、本当の気持ちを隠していることがこんなに苦しくなるなんて、思ってもいなかった。」

そのまま食い込むほどに強く、それでいて包み込むようにやさしく抱き締められて。
キョーコはもうどうしたらいいか、わからなかった。
ただ、時折頬にあたる刺さるような冷気が、これが夢ではないと、知らせてくれた。

「最上さん。」
キョーコの耳元を名前の形の吐息が吹き抜けて消えた。
「もう無理。もう我慢できない。もうただの先輩でなんかいられない。」

さらに強く。
さらにきつく。
抱き締められる。

「俺は君が好きだ。」

―――ス・・・キ・・・ダ・・・?

「泣かせてごめん。勝手を言ってごめん。でも・・・。」

―――ドウイウコト?

「どんなに泣かれても絶対に離さない。だから・・・」

だから俺を好きになって、と囁かれた途端、キョーコの両瞳から堰を切ったように涙が溢れ出した。えぐえぐと泣きじゃくるキョーコを蓮はひしと抱き締める。

「とっくに・・・とっくに好き・・・だったん・・・です。敦賀さんの・・・こと・・が・・・もうずっと・・・前から・・・。」
「俺も。」
大粒の涙が次々と流れ落ちていくキョーコの頬に、蓮の頬がゆっくりと重なった。
「俺もずっとずっと前から君のことが好きだった。」
ひんやりと冷たくなっていた二人の頬が、互いの熱を得て少しずつ温まっていく。

「どんな・・・敦賀さんも・・・全部・・・好き・・・なんです。敦賀さんじゃ・・なくちゃ・・・嫌・・・なんです。」
「俺も、君じゃなくちゃダメなんだ。君じゃなくちゃ・・・。」
確かめるように蓮が顔を横に向けると、まだ冷たい唇がキョーコの頬に触れた。
塩辛い雫がわずかに開いた唇を伝い、蓮の舌先を湿らせる。


「最上さん・・・。」

蓮は唇をそのまますっと滑り落とした。


チンッ


そのとき、遮るように到着の合図が鳴り、エレベーターの扉が開いた。
1階から運ばれてきた冷気が我先にと飛び出し、代わりの乗り手を探して二人にまとわりついてくる。

けれど、10秒経っても。
20秒経っても。
代わりに乗り込む者はなく。


やがて――――――。
エレベーターは呆れたように扉を閉め、来た時と同じようにゆっくりと去っていった。



互いの温もりに守られ、動かぬ二人をその場に置いて。





fin
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コメント

  • 2014/02/18 (Tue)
    00:39
    きゃああああ (///∇//) ありがとうございます

    ああもうっ どうしましょう!
    ドキドキが収まりません (///∇//)
    こんな告白劇になるとは!
    なんとキュンキュンな「シャツ越し」の告白!
    そうきましたか!うっとりでございます。私はやっぱり
    ちなぞさんの紡がれる世界が大好きなのだと再確認いたしました。

    書き続けていないと..に、激しく賛同でございます
    やはり一旦立ち止まってしまうといけませんね。私も
    すっかり迷子になっております^^;
    時節柄お忙しいと思いますが、無理のないペースで
    続けていただけるとうれしいです

    ねこ #- | URL | 編集
  • 2014/02/18 (Tue)
    04:27
    Re: きゃああああ (///∇//) ありがとうございます

    > ねこさん

    コメント早くてびっくりしましたー。
    ドキドキしていただけたなら大成功♪
    いやあ、このシャツ越し部分。書きながら自分でも唇の動きがどのくらい読み取れるのか何度も試してたのですが、客観的にみたらアホですね。私w
    でも、敦賀さんで妄想するととっても素敵になっちゃう!不思議!
    キョコちゃんで妄想すると可愛くて悶えちゃう!不思議!

    > ちなぞさんの紡がれる世界が大好きなのだと再確認いたしました。
    何よりも嬉しいお言葉をありがとうございます。
    そう言っていただけると、書く気力が高まってきます。
    お互い迷子から脱して、カツカツ歩いていけるようがんばりましょう~(o^-^o)
    ねこさんのお話も楽しみにお待ちしております♪(例のお話のつ・づ・き♪)

    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2014/02/18 (Tue)
    10:37

    っっっ!! 萌えました。悶えました。良かったです!(≧∇≦)っ!

    へなへなっちです #- | URL | 編集
  • 2014/02/18 (Tue)
    11:05
    Re: タイトルなし

    > へなへなっちさん

    久しぶりのお話でドキドキしてたのですが、喜んでもらえてよかったですヽ(´▽`)/~♪
    またぜひ遊びにいらしてくださいね♪
    おまちしております!!

    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2014/02/18 (Tue)
    18:38
    きゃぁぁぁ!!

    ニヤニヤが止まりませんっ!!
    やっぱりちなぞさんの世界観が大好きですー!!!!
    風月はもうちなぞさんの虜でございますっ!!

    呆れたように閉まったエレベーター♪
    最高ですっ!!
    甘酸っぱくて良かったですー!!

    風月 #- | URL | 編集
  • 2014/02/18 (Tue)
    20:17

    シャツ越しはなんと唇とは!!きゃー!!
    囁かれてるときは唇の動きは見えませんしね。感じとるなら…となれば、ですね!
    蓮さんは伝えるつもりなく、弱音のようにこっそり告白したんでしょうか…?←そしてキョコさんの反応で追っかけ?

    エレベータ前の告白も、蓮さんの正直な告白にドキドキでしたー!

    霜月さうら #- | URL | 編集
  • 2014/02/18 (Tue)
    20:54
    Re: きゃぁぁぁ!!

    > 風月さん

    ニヤニヤしていただけて嬉しいです~♪
    自分の言葉で自分らしい世界を描けたらと思っているので、「世界観が大好き」は最高の褒め言葉です!
    コメントありがとうございました♪

    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2014/02/18 (Tue)
    22:22
    Re: タイトルなし

    > さうらさん

    ドキドキしていただけてよかったです^^
    おっしゃるとおり、伝えるつもりなし(でもついぽろり)⇒反応で追っかけ、のつもりでした。
    あえてその辺はわかりにくく、読んだ方のイメージで、と思ったのですが、ぴったり正解さすがです!
    ちなみにキョコちゃんのぽろり告白が敦賀さんに聞こえていたかどうかは、ご想像にお任せしますー♪

    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2014/03/08 (Sat)
    23:09
    素晴らしすぎます!

    なんと美しい心情劇。そしてこのエレベーターがいいですね。映像が目に見えるようです。
    本編もこうあってくれたら…ってそれはいわない約束か。
    素敵な時間をありがとうございました。

    ナポリタンMAX #- | URL | 編集
  • 2014/03/11 (Tue)
    18:10
    Re: 素晴らしすぎます!

    > ナポリタンMAXさん

    素敵なお褒めの言葉をいただき感激です(=´∇`=)
    本編も今はドキドキの展開ですねー。
    斜め上展開がお得意の仲村先生が、二人の恋をどうまとめていくのか、超気になります!!

    ちなぞ #- | URL | 編集

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