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シャツ越しに 前編

お久しぶりのリハビリ作品です。
蓮誕にと書きはじめた作品がうまくまとまらず、バレンタインネタを考えても思いつかず^^;
その代りに頭に浮かんできたのがこちら。

最近起きた、タランティーノ監督の次回作トラブルがネタ元になった両片思いのお話です。

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シャツ越しに 前編
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―――本当に来てよかったんだろうか。

もう何度も訪れているマンション。
いつもなら躊躇いなくくぐる玄関の脇で、キョーコはふと足を止めた。
はぁと息を吐けば、様々な食材がたっぷり入れられたバッグの重さが細い肩にずしんとのしかかる。

―――もし入れてくれたとして、ちゃんと顔を作れるの?いつもどおりにふるまえるの?

ポケットに入れた携帯に手を伸ばせば、そんな気持ちが心に迫る。

―――でも・・・。

行かなければきっと後悔する、そう思って携帯を手に取った。


RRR、RRR、RRRRR・・・


細く長く響く呼び出し音を聞きながら、キョーコはゆっくりと息を整える。
そうすると、嫌でも昨日のことが思い出された。



* * *



「はあ?いったいどういうことだ!」

扉の向こうから怒鳴りつけるような社長の声が聞こえ、ノックしかけた手が止まった。

「脚本が流出した?だから製作中止?そんな簡単なもんじゃないだろうが!」

呼び出しを受けて訪れた社長室だったが、その場から一度去るべきかと戸惑う。
だが、続けて届いた言葉に、盗み聞くつもりは毛頭なかったけれど、キョーコはつい耳を欹ててしまった。

「くそっ。アイツにどう説明すりゃいいんだ。」

(・・・アイツ?)

社長がそんな呼び方をする相手と言えば、キョーコには蓮しか思い浮かばない。

「いずれにせよハリウッドデビューは次にお預け、というわけだな。しかたない。とりあえず、まずは状況確認だ。急ぎエージェントに連絡をとって、詳細を知らせてくれ。ああ、それと蓮をこちらに寄越すように。」

(・・・ハリウッドデビュー?敦賀さんが?でも・・・)

聞こえてきた言葉を胸の内で反芻する。

(お預けって・・・。)

気になる気持ちをぐっと抑え、キョーコは大きく息を吸うと改めて社長室のドアをノックした。


*


「・・・というわけで、これからもがんばってくれ。」

「はい。・・・・あ、あのう・・・。」
ローリィとの話を終えて立ち去る間際、キョーコは恐る恐る口を開いた。

「ん?なんだ?」
広いデスクの向こうから、ローリィが訝しげに眉を上げる。

「すみません。聞くつもりはなかったんですが。実は先ほどの・・・。」
「ああ・・・聞こえてしまったか。」
「それで、その・・・。」
「気になるのか?」

キョーコは黙って頷いた。
その表情をじっと見つめたローリィの表情がわずかに和らぐ。

「気になって当然、か。まあ、隠していてもいずれわかることだろうし。最上君ならかまわないだろう。」

そう言って社長が話し出したのは、果たして蓮のハリウッドデビューの話だった。
つい最近、ある著名な監督が内々に、次回作で蓮を重要な役でキャスティングできないか打診してきた。
アカデミー賞の常連でもある監督の作品なら満を持してのハリウッドデビューとして不足はない、ということで、事務所としても前向きに事を進めることとなった。
ところがスケジュールなどの調整に入ったその矢先、完成したばかりの脚本が外部に漏れるというとんでもないトラブルが発生した。
次回作に関しては内密に事を進めてきたにもかかわらず、関係のないエージェントから売り込みがどんどん入り始めたことでその事実に気付いた監督が激怒、急遽製作中止を決めたらしい。

「ひどい・・・。」
「ああ。だが、我々にはどうすることもできない。今の状況だと、アイツにはあきらめてもらうしかないな。」

「でも・・・。」

(ハリウッドは、敦賀さんの夢だったのに・・・。)

不測の事態が憎らしかった。

「まったく、アイツも運がない。運命の女神に見放されているな。」

「そんなことありません!敦賀さんは神様に愛されている人です!」

思わず反論したキョーコに、ローリィはにやりと笑った。

「とにかくそういうことだ。だが、これは内密の件だ。よろしく頼むよ。」

そういうと話は終わったとばかりに背を向ける。
キョーコは座を辞するしかなかった。

パタン

ドアの閉まる音を聞きながら、ローリィは誰ともなく呟いた。

「まあ、アイツにとっては、君こそ運命の女神だろうがな。」



* * *



ただ心配で、ただ顔が見たかった。

映画のことを聞いたとは言えない。
ましてダメになった、なんてこと。
知っているなんて言えるわけない。

だからなおさら心配で、なおさら気掛かりでならなかった。
今頃敦賀さんは・・・、という思いに1日中捉われていた。

蓮の中にどこか脆いものがあることを、ヒール兄妹を演じたとき以来キョーコは漠然と、けれどはっきり感じ取っていたから。
胸の奥から押し寄せる不安に、どうしても“会いたい”という気持ちを抑えることができなかった。

(私に出来ることなんて、何もないのに。)

分かっていても、とにかく会いたかった。



「・・・もしもし?最上さん?」

電話の向こうから涼やかな声が聞こえ、キョーコはハッと我に返った。

「こ、こんばんは。突然すみません。あの、ですね。」

CM撮影が予定より早く終わって、帰りに近くを探検していたら、新鮮な野菜を揃えているいい八百屋さんを見つけたんです。
これも美味しそう、あれも美味しそうと調子に乗ってつい買い込んでしまい、気が付いたらけっこうな量になっていました。
せっかくの食材だし、もし敦賀さんのご都合がよろしければ、夕食を作らせていただけないかと思って・・・。

ずっと考えていた言い訳を、ひと息に告げる。

(こんな説明、無理があったかしら。)

思った耳元に、フッと息を漏らすような小さな笑いが響いた。

「ありがとう。うれしいよ。」






(続く)


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コメント

  • 2014/02/14 (Fri)
    19:31
    ありがとうございます^^

    意味深なタイトルに この先どうなっちゃうんだろうとドキドキです
    続きを楽しみにおまちしております

    ねこ #- | URL | 編集
  • 2014/02/15 (Sat)
    00:53
    ちなぞさんのお話〜!!

    また読めて嬉しいです♪
    更新ないかなぁ?っとちょこちょこ覗いておりました( *´艸`)
    蓮様のハリウッドデビューが延期になってしまったんですね!
    続きも凄く楽しみですー!

    風月 #- | URL | 編集
  • 2014/02/15 (Sat)
    14:11
    No title

    蓮さんを心配して行動しちゃったキョコさん。きっと蓮さん気落ちしているところにキョコさんとはホントに女神様かもしれませんね!

    霜月さうら #- | URL | 編集
  • 2014/02/16 (Sun)
    02:35
    Re: ありがとうございます^^

    >ねこさん

    さっそくのコメント、本当にびっくりしました!
    (こっそりUPしたので誰にも気づかれないと思ってたのに^^;)
    久しぶりに書くと、どうもうまく流れがつかめなくて困ります。
    リハビリ作品ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2014/02/16 (Sun)
    02:36
    Re: ちなぞさんのお話〜!!

    >風月さん

    おわぁ。わざわざこんなところまでありがとうございます!
    こんなにすぐに風月さんに読んでいただけたうえ、感想コメまでいただけて、幸せです~(=´∇`=)
    メロキュン復活でお忙しい中、わざわざこんな僻地までありがとうございました。
    (メロキュン書きたいと思いつつ、ネタがさっぱり思いつきませんでした 汗)
    風月さんのお話もいつもひっそりこっそり堪能させていただいております♪
    ゆるゆるリハビリしていこうと思っているので、またよかったら遊びにいらしてくださいませ^^


    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2014/02/16 (Sun)
    02:42
    Re: No title

    > さうらさん

    こんばんは。さっそくコメントありがとうございます♪
    気落ちしている敦賀さんにキョコちゃんを与えたら、いったいどうなっちゃうことやら・・・ですよねw

    ピグ庭でいろんな方とお会いして、おしゃべりしているうちに、久しぶりに文章を綴る気力が出てきました。
    と、いいつつこんなレベルで恐縮です(汗
    さうらさんの馬車馬的?更新力&なにより文章力を分けていただきたいですー。
    お忙しいことと思いますが、お体大切に。続き妄想も楽しみにお待ちしてますね!(こんなところに書いてごめんなさい)

    ちなぞ #- | URL | 編集

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