Afferrare la fortuna per i capelli 4

「代わりに、俺にも最上さんの写真をちょうだい。」

投げ込まれた爆弾に、ぱちぱちと瞬きを繰り返す君。
その口元が、声も出さず3つの文字を象った。

“わ ― た ― し ― ?”と。


「そう。最上さん、君の、写真が、ほしい。」

視線をそらさず、ちゃんと伝わるようにひと言ひと言区切りながらもう一度言うと、俺の言葉を繰り返すように唇が動き、次の瞬間、君の顔が一気に朱に染まった。


「俺だけに笑う、俺だけの君の写真を、ね。」



* * *



「・・・な、な、何のためでしょうか?」

裏返ったような、悲鳴に似た声で君が言う。

「俺を元気づけるため。」

「は?意味がよくわか・・・「最上さんに会えなくて淋しい気持ちを、せめて慰めるため。」」


驚きと混乱からなのか。
ひゅうという、空気が抜けるようなヘンな音が、君の口から漏れ出る。
そのまま涙目になって、ぷるぷる震える姿が小動物みたいで可愛すぎて。

思わず、ぷっと吹き出した。


とたんに彼女の眉尻がくっと上がる。

「かっ、からかったんですね!ひどいっ!」
叫びながら、振り上げたその手首を・・・。

俺はがしりと掴んだ。


「はっ、離してくださいっ!敦賀さんが悪いんですからっ!」
「いやだ。」
「どうしてですかっ!?」
「だって、からかってなんかいないから。」
「は?」
「大事なことなのに、勝手に誤解されても困るから、ちゃんと聞いてくれるまで離さない。」

まして当分会えないならなおのこと、だ。

「うそっ!」
「嘘じゃないよ。これから先2ヶ月も最上さんに会えないなんて、耐えられないくらい淋しい。」

落ちついた声でそう言った俺に、君の身体がぴたりと動きを止める。
そして君は、俺に手首を掴まれたまま、顔を背け俯いた。


「本当に・・・からかうのは・・・やめてください。」

押し殺すような声が零れ出る。
その拍子に、

・・・さらり。


君の手首を掴んでいた指先に、再び髪が触れた。


『Afferrare la fortuna per i capelli.(幸運の女神には前髪しかない)』

―――そう、チャンスは、今しかない。


さっきのように逃しはしない。
絶対、に。
逃してあとから後悔するような真似は、もう二度としない。


俺はそっともう片方の手を、彼女のこめかみにあてた。
とくんとくんと伝わる脈動。


「からかってなんかいない。ふざけてもいない。」
ひと言ひと言、噛み締めるように話しかける。

「君に会えないのは、俺にとって何よりも辛くて、淋しいことなんだ。」

手のひらを通して、君の身体がびくりと震えるのが分かった。

「本当はね・・・」

掴んだ手首に、さらにぐっと力を込める。
絶対に逃げ出されたりしないように。

「・・・写真なんかじゃその気持ちを紛らわすことなんかできないくらい。」



「毎日、毎日・・・君に会いたいし、君の声を聞きたい。君の名前を呼びたいし、名前を呼ばれたい。そうやって、誰よりも近い場所で君を感じていたいんだ。」


動かない彼女。
それをいいことに、こめかみから頬に左手を滑り落とした。
やさしい温もりに、愛しさが込み上げてくる。

「写真はあげる。メールだっていつでも送って。電話も遠慮しないでかけてほしい。でも、それだけじゃ嫌なんだ。それだけじゃ足りないのは、俺のほうなんだ。我慢できないのは、俺なんだ。」


もしここで逃げられたら・・・いや、考えるのはよそう。
チャンスの女神は、確かに俺に微笑んでいる。


「だから写真だけじゃなく、君を・・・。」


彼女の前髪をひと房、さりげなく指先でつまみながら、俯いたままの顔をそっと正面に向けさせた。
これからいう言葉を、きちんと目を見て君に伝えられるように。
君が曲解することなく、俺の至情を認めてくれるように。



「君の全部を、俺にちょうだい。」


ぜったいに、逃がさない。
この幸運の女神は俺のもの。

俺だけの・・・モノだから。




「好きだよ。最上さん。誰よりも。何よりも。」




―――さらり


やわらかな髪を、指先にそっと巻き付けた。
これでもう、簡単には解けない。
この手の中から、女神はもう逃げられない。







「君が・・・大好きだ。」





Fin

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コメント

  • 2013/10/06 (Sun)
    09:49
    やっぱり

    ちなぞさん大好きですー!!!!
    素敵なお話をありがとうございますー!!

    風月 #- | URL | 編集
  • 2013/10/07 (Mon)
    21:34
    Re: やっぱり

    おおお、こんなところまでわざわざお出でいただきありがとうございます!
    私も風月さんのお話大好きですー!!!
    新連載の続きも、楽しみにお待ちしてますね♪

    ちなぞ #- | URL | 編集

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