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Afferrare la fortuna per i capelli 3

「携帯で・・・・」

やがて、彼女の口からぽつりと言葉が落ちた。
けれど声が掠れるほどに小さくて、最後までよく聞こえない。

(携帯?携帯で・・・?)

思わず「ん?」と耳を近づける。

「×××××××××××××××××!?」

最初のひと言を口に出したことで勢いづいたのか、ぱっと顔をあげると彼女は一気に言葉を発した。

投げられた言葉が、あまりに思いがけなくて。
固まった瞬間、跳ね上がる髪が間近まで寄せていた頬にさらりと触れた。



* * *



――――さらり

それは、そう・・・。
まるでさっきの風のようだった。


『Afferrare la fortuna per i capelli.(幸運の女神には前髪しかない)』


(幸運の・・・女神・・・?)

思わず、ハッと君を見た。
女神の姿が目の前の君にリンクし、どくんと大きく心臓が震える。

瞬間、すべての景色が時の流れを変えた。



虫眼鏡でのぞきこんだように大きくはっきりと目に映る、揺れる睫毛。
そして前髪。
吹きぬけた風が再びそれを撫で上げ、くすぐったいほどやさしい感触が俺の身体を突き抜けていった。


間近で起こるほんの僅かな動きさえ、コマ送りのように画像化し、この目にしっかりと焼き付いていく。
指先が勝手に、その映像を捉えようと動きだすのを感じた。


――――さらり


けれど、そんな自分を押しとどめるように、投げられた言葉が不意に頭の中に大音量で蘇る。


『写真を撮らせていただきたかったんです。
敦賀さんの、怒っている顔と笑っている顔。携帯に入れていつでも見られるように。』

ずいぶん出遅れてようやく認識できたそれは、俺にとって思いもよらないセリフだった。


俺の写真をほしい?
いつでも見られるように?
なぜ?
どうして?
何のために?


無意識のうちに彼女へ伸ばしかけていた手が、ふと止まる。
その指先を弄ぶように、やわらかな茶色の髪がすり抜けていくのがわかった。


「敦賀・・さん?」

俺の動揺を感じとったのか、俯いていた君がゆっくりと顔を上げた。
驚くほど間近で視線が絡み合って・・・。


「きゃっ!」
つぶらな唇から叫びが漏れた。

「うわっ。」
重なるように俺も声を上げる。


「ご、ごめん。」
「私こそ、ごめんなさい。」

同時に半歩退いて、同時に思い切り頭を下げ、ごつんとぶつけた額と額。

「「いたっ!・・・ぷっ!」」

同時に口走って、同時に噴き出した。


そうなると、もう笑いがとまらない。
2人でくすくす笑いながら、改めて頭を下げ合う。


「・・・えっと、写真だよね?」
他愛ない笑いに紛れこませながら、さりげなく話を戻した。

「俺の、ってこと・・・?」
「はい。あの・・・ダメ・・・ですか?ダメ・・・ですよね。」
「どうして?そんなことあるわけないよ。」

全力で否定する。

「お安い御用。そんなお願い、いくらでもきくよ。」
「本当ですか!?」
「ああ、でも・・・。」


どうしても聞きたい。


「・・・一体またどうして、俺の写真を?」
「え!?あ、その・・・あの・・・ですね。セラピーと戒め、と言いますか・・・。」

とたんにハッとした表情を浮かべ、もごもごと呟く君の顔が、再び赤く染まっていく。
その変化がどうにも気になって仕方ない。

「セラピーと戒め?」
「は、はい・・・。あの、だから、その・・・ですね・・・。」

「なに?」
「何かあったときや、落ち込んだとき・・・」
「うん。」

「そんなとき、たとえ携帯の画像でも敦賀さんの笑顔を見ることができたら、それだけで勇気がでてくるかな・・・なんて。」


(・・・え?)

君はいったいなんてことを言ってくるんだ。
この俺に。

この・・・俺に。

無意識のうちに手が口許に伸びていく。
視線を君に置いておくことができず、顔が固まったように膠着するのがわかる。


どうしよう。

今すぐここで君を抱き寄せたい。
そして、「写真じゃなくて、俺本人をほしがってほしいな」と囁き、キスしたい。

まさか・・・いきなりそんなことするわけにいかないけれど。


「え、えっと、じゃあ、怒った顔は?」

弾み過ぎた心をなんとか押さえ付け、言葉を続けた。

「い、戒めです!」
「戒め?」
「気を引き締めたい時は、やっぱり敦賀さんに怒って頂くのが一番自分には効く・・・な・・・と・・・。なんといっても敦賀さんは私が目標とする偉大な先輩、神様、敦賀様、なんですから!」

思わず、はぁとため息が出た。
結局・・・そういうこと、なのか。

俺が期待するような意味なんてやっぱり気のせいだった、ということか。


「やっぱり・・・ダメですか?」

しゅぷぅーと萎むようにうなだれて、けれど上目遣いにそっとこちらを見上げる。
そんな顔を見せられて、俺が断われるわけがない。
いや、そもそも断わる気なんてまったくないけれど。


「いや、そんなことないよ。いくらでも撮ってくれてかまわないから。表情もリクエストして。」
「本当ですか!?」

「ああ、もちろん。でも代わりに・・・。」

「代わりに?」

見上げる視線をしっかりと捕まえて、俺は腹いせのように小さな爆弾を投げつけた。



「代わりに、俺にも最上さんの写真をちょうだい。」





(続く)

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コメント

  • 2013/09/27 (Fri)
    12:04
    うぎゃ~m(。≧Д≦。)m

    可愛いッ!凄くっ!凄く可愛い~!(≧∇≦)
    悶えてしまいます!良いわぁ~。蓮さんてば、忍耐強いわぁ。うちなら、ぎゅうってしちゃいますね。

    へなへなっちです #- | URL | 編集
  • 2013/10/07 (Mon)
    21:33
    Re: うぎゃ~m(。≧Д≦。)m

    こんにちは~^^
    悶えていただけて嬉しいです~♪
    敦賀さん、キョコちゃん相手だからこそ忍耐強く待てたんでしょうね。・・・というか、ある意味これもただのヘタレ?w

    ちなぞ #- | URL | 編集
  • 2013/12/17 (Tue)
    14:59
    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    # | | 編集
  • 2014/02/16 (Sun)
    02:24
    Re: 初恋

    気に入っていただけて嬉しいです♪
    初恋のドキドキは、ほんと別格ですよね!
    へたれな2人の恋が本誌でも1日も早く実るよう、祈るばかりですー

    ちなぞ #- | URL | 編集

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