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Afferrare la fortuna per i capelli 2

どうしよう。
どうしたらいい?

君はそんなにも不安で心もとない顔をしているというのに。

俺を大事だといってくれた言葉がうれしくて、つい顔が緩んでしまう。
こんな顔、君には到底見せられない。



* * *



「少しでも不安に感じることがあったら、いつでも電話してくれてかまわないから。」

自然と緩む口元をせめて手のひらで隠し、そう言った。


「い、いえ。そんなわけには!」

「君からの電話なら、いつでも大歓迎。たとえ困ったことがなくても、撮影の様子を聞かせてもらえたら嬉しいね。」

「無理です!時差だってあるのに。」

「もともと日本にいたって時差があるような生活だし。」

「だからといって、尊敬する先輩たる敦賀さんに、状況を考えず電話するなんて礼を失する真似はできません!」

「でも、君の相談にのることで、俺自身演技について再発見することも多いから。リアルタイムで撮影の様子を聞いておけば、演出の勉強にもなる。いつかその監督と組むことになったときにも役立ちそうだしね。だから、かまわず電話してほしいな。」


喜んだそばから始まる、相変わらずな会話に自嘲する。
まあ素直に聞き入れてくれるとは、はなから思っていなかったけれど。

それにしても・・・。
なんだか必死だな、俺。
たとえ単なる先輩扱いでも、彼女から電話をもらえる可能性が少しでもあるならって縋りついてる。

でも実際、会えないならせめて声だけでも聞きたいんだ。
その約束をとりつけてしまいたいんだ。


「あの、でしたら・・・」
「でしたら?」
「じつは今日、お願いしようと思っていたことがあって・・・・」

(お願い・・・?)

思いがけない言葉に彼女を見れば、もじもじと視線を彷徨わせ、何度も何度も唇を小さく開けては、躊躇うようにそのまま閉じている。
そんなに言いにくい“お願い”って・・・いったい何だろう?

「何?何でも言って。」

できるだけやさしい顔で、先を促してみたけれど、言葉が出てこない。
見れば指先も、何度も開いては閉じ、閉じては開き・・・そうやって握り拳を作るたび、勇気を振り絞っているようだった。
思わずその手を、いやその身体ごとぜんぶ抱き締めたい衝動にかられてしまう。

(・・・いったい何を“お願い”するつもり?)

あまりに気になって、つい俯き加減の顔を覗きこんでしまった。

けれど、そんな俺の動きに気付いているのか、いないのか。
彼女に動きはなくて。

あまりのじれったさについ、
「さっきも言った通り、君のことは本当に大事に思っているんだ。だから、遠慮せずに言ってごらん。」

ぽろりと気持ちが零れた。

(しまった・・・。)

言葉の裏の想いを少しでも悟られれば、きっと彼女は逃げ出すか、いつもどおりの斜め上な理論をぶつけてくる。
そうでなくても、聞こえなかったふりをしてあっさりスルーされるだろう。
どう転んでも、ダメージは大きい。

思わずふうと息をつきそうになった。
けれど―――。


彼女の反応は予想外だった。

「え?」

ため息をつきかけた視線の先で、みるみる赤く染まっていく目元と頬、そして首筋。
あまりにもわかりやすいその変化に目を瞠る。


ドクッ
心臓が激しく高鳴った。

(何が・・・起きた?)

あからさまな戸惑いと動揺。
思わず期待をかけたくなる特別な気配が、ごく間近からありありと伝わってきて。
息が・・・止まりそうだった。


危うく持っていた缶を落としそうになってようやく、すっかりそれを渡しそびれていたことに気付く。

どうやら・・・本当に動揺しているのは、彼女じゃない。
俺のほうみたいだ。


ゆっくり呼吸を調えながら、そっとカフェオレの缶を差し出した。

「そ、それでお願いって何?」

動揺がばれないよう、必死になる。

だって、そうだろう?
今もし君が自分の変化に気付いたら、俺が気付いたことに気付いたら、途端にきっと君は脱兎のごとく逃げ出してしまう。

それだけは・・・勘弁だ。


「言ってみて?」

俺の視線を避けたまま、大きく息を吸う彼女。
俺は黙って、君の言葉をじっと待った。


ときおり震えるように揺れる睫毛に視線を置いたまま。






(続く)

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