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繊月の夜 ~ side K ~

あれから幾度こんな夜を過ごしただろう。

こうやって抱き締められていても、もう身体が硬直することはない。
眠れずにいることを気づかれぬよう、寝たふりするのにも慣れた。

今、敦賀さんに何が起きてるのかはわからない。
いや、わかりたくないというのが正しいのかもしれない。

カインを演じているせいだと何度も自分に言い聞かせた。
でも拭いきれない疑念と不安。
みつからない答え。

ただ・・・ただひとついえるのは、今の敦賀さんにとってセツ――あるいはもしかしたら私――が必要だということ。

だから私はそれをあの人に与える。
彼の抱えるものの深さに思いを馳せたとき、私にとって唯一つ明らかなこと、それは敦賀さんを失いたくないということだから。
たぶん・・・“敦賀蓮”を守るためなら私は何でもするだろう。

私という人間が新しく生まれるきっかけをくれたあの人に。
失いかけた信頼を与えてくれたあの人に。
そして名前を与えてはならないこの想いをもたらしたあの人に。



『敦賀さん・・・』

寝ぼけたふりをして胸元に顔を寄せ、音にならないよう大事な名前を呟いた。
トクトクと聞こえる心音と穏やかな香り。
ああ、また私ばかりが癒されている。


与えられた温もりを少しでも返したくて、私はそっと片手を彼の背に回す。

カチャン

心の奥でまた鍵の外れる音がした。




fin

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