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繊月の夜 ~ side R ~

腕の中で小さく彼女が身じろいだ。

あの日以来、カインとセツで過ごす夜は、彼女が腕の中にいないと眠れない。

耳元で聞こえる規則正しい小さな寝息。
全身に伝わる優しい温もり。
それを失えば、闇に引き摺られ、どこまでも堕ちていきそうで、毎夜君の手をとらずにいられない。
君の温もりだけが、俺を確かな現実に結びつける。
こうしていられる時間が何よりも愛おしい。


この状況を君はどう受け止めているのだろう。
聡い君のことだから何か感じているにちがいない。
何も言わない俺に、君は黙って寄り添ってくれているけれど。

それは君の生来の優しさ。
俺だけに向けられているわけでもないその優しさに、俺はすがらずにいられない。
演技という言い訳と先輩という立場を隠れ蓑にして。


君のその温もりこそ、凍りついた世界に射し込む唯一の光。

俺に与えられた無二の希望。
だから、逡巡する想いを抱えながら俺は君を離せない。



腕の中で再び彼女が身じろいだ。
掠れるような吐息とともに、その頭を俺の胸元に擦り寄せてくる。

息が止まるかと思った。

眠りについているからこそ、有り得る現実。
それでも、この事実が身震いするほどの幸福感を俺に与える。


君は今いったいどんな夢をみているんだろう。
いい夢だといいけれど。


もっともっと君を感じたくて、寄せられた頭上に唇を寄せる。
君が起きないようにそっと。

これが今の俺に許される限界。




fin

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