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鴛鴦Kiss

短編をばらばらとオムニバス風に。
すべて成立結婚後前提(敦賀さんマンション住まい)です。


▽Bedroom

蓮がその日帰宅したのは、午前3時を回った頃。
さすがにキョーコももう夢の国の住人になっていた。

キョーコはキョーコで、明日は早くからロケに出るという。
だから待たずに先に寝てくれと、そう言ったのは確かに蓮。
それでも最近続いているすれ違いを、少しいやかなり淋しく思いながら、蓮は寝室へと向かった。

部屋に入るとすぐ目に入ったのは、広いベッドの中で、ちんまりと丸まるようにして眠りに落ちているキョーコ。
その場所が、いつも彼女が寝る側とは反対なことに気付き、蓮の口元が大きく緩む。
キョーコが小さな頭を重ね、抱き締めるように手を回しているのは、蓮がいつも使っている枕。
すうすうと寝息を立てている寝顔に忍び足で近付くと、蓮はそっとその顔を覗きこんだ。

すれ違いは淋しいけれど、こんな風に安心しきった君の寝顔を見られる特権が俺だけのものだと実感できるのは、何よりも嬉しい。

目の前でむにゃむにゃと口を動かす様子があんまり可愛くて、蓮はつい指先で鼻や唇をつついてしまう。
起こさないよう細心の注意を払いながら。

するとその気配を感じたのか、
「もぉーっ、やめて~。誰~?久遠・・・さん?」
目を閉じたままのキョーコの眉間に薄くシワが寄り、そんな言葉が唇から零れ落ちた。

(起こしちゃった?)

一瞬焦ったけれど、どうやら違っていたらしい。
「だめ・・・です・・・いたずら・・・しちゃ。」
もにょもにょと零れたそれは、彼女の寝言。

(・・・ほんとに、君は寝ているときまで可愛いな。)

眠っているのに小さく唇を尖らせて、そんなことを口にするキョーコがあまりに可愛くて。
寝言に返事をしてはいけないと聞いたことがあったのに、蓮はついその耳元に囁いてしまった。

「お、れ。」
すると、眉間に寄っていたシワがすっと消え、くしゃりと笑顔が浮かびあがる。
「・・・なら・・・いいです。」

そんなキョーコに我慢できなくなって。
でも起こしてしまうのはどうにも忍びなくて。
だから蓮は、そうっとそうっと睫毛の先にキスをした。
彼女を起こさない、ギリギリのキス。

「おやすみ。キョーコ。いい夢を。」

いつもとは逆側に蓮はそっと身体を滑らせる。




▽Living

ふわんと鼻を抜けたふくよかな香りに、ふっと気が逸れる。
そのタイミングを狙ったかのように、穏やかな声が肩越しに聞こえた。

「そろそろ少し休んだら?はい、コーヒー。」
明日から撮影が始まる映画の台本に夢中になっていたキョーコは、その声にあっと小さく口を開きながら顔を上げた。
間近で微笑みかけてきたのは彼女の最愛の夫。
そのやさしさと労りに満ちた笑みに、キョーコは眉をハの字に下げながら慌てて謝罪の言葉を口にする。

「ごめんなさい。せっかく2人で過ごせる貴重な時間なのに、私ったらすっかり夢中になっちゃって・・・。」
その言葉を塞ぐように、キョーコの唇に心地よい温もりが触れた。

「いいんだよ。明日から撮影なんだもの。それに今度の映画はキョーコの初めての主演映画でしょ?」
「でも・・・。」
言いかけた唇が、さっきよりももっと熱く塞がれる。
キョーコは思わず、ふと触れた蓮の腕をぎゅっと掴んだ。

「大事な仕事なのは、誰よりもよくわかってる。でも・・・。」
もう一度キス。

「根の詰めすぎはかえってよくない。」

切れ切れに投げられる言葉の合間合間に繰り返し重なる口づけに、蓮の腕を握り締めたままのキョーコの手のひらが次第に熱を帯びていく。
やがてその身体からくたりと力が抜けた。

倒れこむようにバランスを崩す上半身をさりげなく抱え込むと、蓮は一度顔を離し、慈しむような視線でキョーコを見つめた。
そして、くしゃりと小さな頭をかきまぜる。

「気にしないで。こうして君がすぐに手の届く場所にいてくれるだけで、俺は何よりも幸せだから。」




▽Kitchen

広いキッチンで、ふんふんと低く鼻歌を響かせながら、キョーコは次々と料理を仕上げていく。
かつては恐る恐る使っていたキッチンも、今ではすっかり彼女のお城。
お気に入りのキッチングッズや調味料が使いやすい位置に並び、食器棚や流し台もすべて彼女仕様に調整されている。
そう、だってキョーコはもうこの家の“主婦”だから。


そんなキッチンの入口に目を向ければ、開け放した扉の辺りにさっきからちらちら動く影がある。
ひょこりと肩口が見えてはすぐに消え、またちょこりと今度は頭のすみっこが映る。
その様に、こみ上げる笑いを抑えきれなくなったキョーコは、たまらずぷっと吹き出した。
「そんなところで、さっきからいったい何をしてるんですか?」
「・・・え?」
いきなりキョーコから声をかけられ、少しきまり悪げな笑みを浮かべながら蓮が姿を現わした。

「ふふ。私が気付いてないと思ってたんですね。残念っ!ちゃーんとさっきから気が付いてましたよ。」
「気が付いたなら、すぐ声をかけてくれればよかったのに・・・。」
少し拗ねたように呟く蓮。
「だって、気付かれないようにこっそりしているみたいだったから。」
フライパンを片手に横を向き、くすくす笑いながらキョーコが答える。
「こそこそしてるつもりはなかったんだよ。ただ、キョーコの邪魔をしたくなかっただけ。」
「それなら、リビングで大人しく待っていてくれればいいのに。」

蓮にしては珍しく拗ねた口調が、何だか子供みたいで可愛くて、キョーコはわざとそう言いながら、小首を傾げ上目遣いに蓮を見た。
「だって、それじゃキョーコの姿が見えないじゃないか。こうしてキョーコが料理しているときに一緒にいられるのは久し振りだから、料理している様子を見ていたかったんだよ。」
最近は何かと擦れ違いばっかりだったからね、と言いながら蓮はゆっくりとキョーコに近づいた。
そして背後から、キョーコの両肩を抱えるようにゆるく抱き締める。
「料理をしているキョーコも好きだから。」
そんな風に小さく囁きながら。

「あ、あぶないです。火を使ってるのに。」
さっきまでの余裕たっぷりな表情はどこへやら。
頬を真っ赤に染め、慌てて目を背けるキョーコの耳朶を、蓮は肩越しにかぷっと甘噛んだ。
とたんにきゃっと小さく声が漏れる。
一緒になってずいぶん経つのに、相変わらず初々しいその姿。
思わず蓮の口元がだらしなく緩む。

「そうやって当たり前の顔をして君がキッチンで作業しているのを見ていると、なんだかすごく安心するんだ。」
「安心・・・ですか?」
「うん。そう。」
肩口でこくりと頷く蓮の髪が、キョーコの頬をさらりと撫でた。
「夢じゃないんだなって。君は間違いなく俺の奥さんになってくれたんだなって。そう思えるから。」

心からの安堵の声でそう漏らすと、蓮はキョーコの唇の端にリップ音を響かせた。
「キョーコ・・・。俺と結婚してくれて、本当にありがとう。一緒にいてくれて、ありがとう。俺を・・・。」
再びリップ音が高く鳴る。

「俺を、幸せにしてくれてありがとう。」




▼おまけ <Mr.敦賀&Mr.貴島>

「敦賀くんってさ。ほんと変わるよね。」

「え?何が?」

「京子ちゃんと電話してるとき。」

「・・・京子・・・ちゃん?」

「やだなあ。そこでカチンとこないでよ。芸名が芸名だし、それに俺、君たちが結婚する前から彼女のことを知ってるんだから、そう呼ぶくらいいいじゃん。ってそうじゃなくて、電話の話でしょ?」

「・・・・・・ああ。で、変わるってなにが?」

「その一、顔が違う。その二、声が違う。その三、話し方が違う。」

「違う?」

「違うってレベルじゃないね。別人ランク。もうね。緩みすぎてて見てらんない。あんな顔晒されちゃあ、マネージャーさんも慌てるわけだよ。あの崩れっぷりは君もちゃんと自覚するべきだね。」

「じ、自覚・・・したほうがいいほど?」

「うわっ、やっぱり自覚してなかったのかー。それじゃしょうがないけどさー。イケメン俳優としてあるまじき顔だよ。あれは。正直、俳優敦賀蓮の沽券にかかわるレベル。」

「そんなに・・・ひどいのかい?」

「そんなに、ひどいね。だってさー。敦賀くん・・・ぐにゃんぐにゃんだもん。」

「ぐにゃんぐにゃん?」

「そう。ほら、敦賀くんって、もともと人当たり柔らかで紳士とか呼ばれてたじゃん。それがさ、京子ちゃん相手だと柔らかいどころか、ぐにゃぐにゃのゆるゆるのでろでろになっちゃうんだよねー。」

「ぐにゃぐにゃの・・・ゆるゆるの・・・でろでろ・・・。べ、別に・・・いいじゃないか。相手は、妻、なんだし。」

「あーもう、妻っていうだけで赤くなるなよー。新婚って時期はとっくに過ぎてるだろう?」

「そうか・・・。そんなに、違う、のか・・・。」

「ほら、ぶつぶつ言わない。っていうか、話聞いてる?まったく京子ちゃん絡みの話をするとすっかり変っちゃうんだもんな。敦賀蓮のイメージ丸つぶれ。ま、そういう敦賀くん、俺は嫌いじゃないけどね。・・・にしても、くれぐれも気を付けてね。」

「気をつけるって何が?俺は別に、どこの誰から何と言われようと気にしないけど。」

「いやね、君の沽券に関わるってだけじゃないんだ。そっちもたしかに重要だけどさ。」

「ほかにいったい何が?」

「こっからが本題。ほら、ただでさえ、京子ちゃんは結婚してからもどんどんキレイになってるって、大注目されてるだろ?そのうえ、あの“敦賀蓮”に、こーんな崩れ切った顔をさせてるってことで、京子ちゃんにますます興味持っちゃう輩が少なくないんだよ。」

「君も・・・か?」

「ふへ?」

「君も興味を・・「あー、ないない。俺、人のモノにはまったく興味もたないから。第一、興味があったらこんな忠告しないって。」

「・・・それもそうだな。」

「でしょ?まあ、言いたくないけど蛇の道は蛇って感じで、いろいろ話が伝わってくるんだよねー。中には結婚してても構わない奴とか、敦賀くんにヘンなライバル心もってる奴とかいてさ。敦賀くんが聞いたら青筋立てそうな話もちらほら聞くわけ。」

「・・・・・・」

「うわっ、今青筋立ててどうするんだよ。勘弁してよ~。せっかく教えてあげてるのに。まあ、俺がわざわざ忠告するまでもなく、敦賀くんなら鉄壁の守りを見せてくれるだろうけど。ま、一応ね。」

「・・・・・・ありがとう。」

「おっ、珍しく素直!いいね、いいねえ。そういう敦賀くん、大好きだよ。・・・っと、時間時間。それじゃ、俺行くから。くれぐれも俺の忠告、忘れないようにね!じゃ、また!」





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