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[拍手再掲] 冬空の下で

※こちらは、拍手御礼として掲載していた作品です。再掲載にあたり、加筆修正しています。


「敦賀さん、どうしたんですか?こんなところで。」

背後からかけられた声が誰であるか瞬時に悟ると、蓮は零れる笑みを抑えきれぬままゆっくりと振り返った。
「・・・もしかしてまた、お一人で台本を読んでらしたんですか?」

思った通りの姿に、蓮の笑みがさらに深まる。

「あれ?最上さん。君も今日ここで撮影?」

「ええ、そうなんです。・・・って、それよりこんな寒い日に外にいたら、風邪引いちゃいますよ。」

心配そうに眉をハの字に下げ、キョーコは階段に座る蓮の顔を少し高い位置から覗き込む。

「言われてみればそうだね。でも、1人になれるところがここくらいしか思い当たらなくて、つい。」

「つい、って・・・。敦賀さん、ホントに自分の身体に無頓着なんだから!」

両手を腰にあて口を尖らせながら、キョーコはぷりぷりと怒り出す。

けれどそんな姿も、蓮には可愛くみえてしかたない。

「あはは。だって実際、丈夫だからね。・・・って君には通用しないか。言われてみればたしかに、顔もすっかり冷たくなっちゃったな。」

「やっぱり!えっと・・・。」

蓮の言葉に、首を傾げキョロキョロ辺りを見回していたキョーコは、急に何かを思いついたようにあっと口を開くと、蓮の前に回り込み、その手を蓮の両頬にあてた。

柔らかな温もりが頬から顔全体に広がり、ほのかなキョーコの香りが鼻腔を擽る。

「え!?」

「・・・あ、えっと、ごめんなさい。あっためるものがほかに思いつかなくて。私、もともと体温が高いし、ずっとポケットに手をいれていたから、温かいかなって・・・。」

驚きのあまり蓮が見せた戸惑いの表情に、キョーコは慌ててその手をひっこめようとする。

けれどそれを逃がすまいと、蓮は即座に自らの手を重ねた。

「うん。ほんとだ。あったかい・・・。」

さりげなく重ねられた手に、わずかに力がこめられる。

そのうえ神々しいまでに美しく柔和な微笑みを間近から向けられ、キョーコの心臓がとくりと跳ねた。

思わず大きく深呼吸してみたけれど、その跳ねは止まることなく、むしろどんどん、どんどん勢いを増していく。

「あ、あの。敦賀さん・・・手・・・。」

外して下さいといいかけるのに、言葉が詰まったように口から出てこない。


「そうか。最上さんのおかげで、温まる方法をもうひとつ思いついたよ。」

キョーコの様子に気付かないふりをすると、蓮はキョーコの手を一段と強く握り締め、すっくとその場に立ち上がった。

そしてそのまま、掴んだ手を自分の腰へと回し置き、両手でキョーコの身体をぎゅっと抱き締める。


「うん、あったかい。すごく・・・あったかい。」

あまりのことに言葉を失ったキョーコのひゅうっと息を吸った音が、吹き抜ける北風に呑みこまれていった。


「ほんとに体温高いんだね、最上さん。こうしてるだけで何だかとってもあったまってくる気がするよ。」

寒さからくるのとは異なる震えが、キョーコの身体をぶるんと走りぬける。

「しばらくこうしてても・・・いいかな?」

断わるに断わりきれなくて、どうしたらいいか立ちすくむキョーコの身体を、蓮のコートがふわりと包みこんだ。

抱きしめられた両手がますます力を増して、キョーコの全身を包みこんでいく。


「わわっ、だめですっ!こ、こんな恥ずかしいの、こんなのなし!なしです!」

慌てて身体を離そうとするけれど、固く閉じられた蓮の腕から逃れることができない。

それどころか、端正な顔がコートの中のキョーコにすっと近づいてきた。

「なし・・・なの?」

眸が迫る。

この上なくやさしくて、それでいて付き刺すように鋭い眼差しから、キョーコはどうしても視線を外せなかった。

どきどきと、怖いくらいに心臓が高鳴って泣きそうになる。

そして結局・・・、

「なし・・・じゃ・・・ない・・・です。」

気がつけばそう答えていた。



その瞬間、キョーコの視界が真っ暗に閉じられた。

何が起きたのかわからないまま、蓮の香りと温もりばかりが全身を支配する。

ただ・・・。

とくとくとくと二つの心音が、早さを競い合うように鳴り響くのが聞こえた。

その音に、掠れた声が遠くから重なる。


――――好き・・・・・だ。大好き・・・なんだ。最上さん。


キョーコの心臓が、どっくんと大きく波打った。


――――俺だけに、君の温もりをちょうだい。


思わず息が止まりそうになる。

うそ、と。

どうして、と。

言いかけたそのとき。


ぎゅうぎゅうと締めつけてくる両腕が小刻みに震えているのに気が付いて。

抱え込まれた胸元から響く心音が、自分のソレよりもっと強く大きく早く打っていることに気が付いて。

そのままキョーコは身動ぎひとつできなくなってしまった。

そして・・・。

どれだけ時間が立ったろうか。



温かい腕の中で、キョーコは小さく頷くと、目の前の厚い胸に押しつけるようにその身を投げかけた。

まるで、自分がもっている温もりの全部を、その胸に伝えようとするように。

心の全部を、その胸に届けようとするように。







Fin

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