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[拍手再掲] 君が一番

※こちらは、拍手御礼として掲載していた作品です。再掲載にあたり、加筆修正しています。


「・・・です。」

「え?」

何て言われたのかよく聞き取れなくて、思わず聞き返した。

ここはキッチン。

今、俺は彼女の隣りで料理の手伝いをしている。



「それじゃ、さっそく作りはじめますね。」

家に来るなり、カバンからエプロンを取り出した最上さん。

「俺もなにか手伝うよ。」

1分でも1秒でも長く彼女のそばにいたくて、そう言った。

最近はいつも口にするその台詞。

最初こそ固辞していた彼女も、近頃は素直に受け入れてくれるようになった。

もっとも・・・、俺ができることはごくごく限られているのだけど。


正直自分でもけっこう何でもこなすほうだと自負してきたが、どうやら料理の才能だけはしっかりと母

の血を受け継いでしまったらしい。

“料理”と名のつく作業に限って、ほんのちょっとしたことすらどうも上手く運ばない。

おかげで彼女も、たいしたことはまかせてくれなくて。

今も、やっているのはただ“半熟たまごの殻をむくこと”。

まあ俺としては、とにかく彼女の傍にいられればそれでいいから、べつにそれがどんなことだろうと構

わない。

言われたことを、淡々とこなすだけだ。

・・・なんて思っていたのだが、これがなかなか難しい。


「ゆでたあとすぐにしっかり冷やすと、ほら。つるんと殻がむけるんですよ。」

そう教えてくれた彼女の手にかかれば、たしかに“つるん”とむける殻。

ところが、俺がやろうとするとなぜか殻に“身”がついてくる。

そのうえ、少しでも力を入れれば、相手がやわらかすぎて勢い余りぶにゅっと潰し割ってしまう。

この作業を頼まれるのは、もうこれで3度目になるというのに。

今日も相変わらず苦戦中。

すると隣からくすくす笑う声が聞こえてきた。


「・・・です。」

「え?」


殻を剥くのに集中しすぎて、せっかくの彼女の言葉を聞きそびれてしまったから、慌てて聞き返した。

「可愛いです。」

すると彼女は、くすっと笑みを浮かべながらそう言った。

(え?・・・俺のこと?)

思わず自分をかえりみる。


190cmという、この国では少々でかすぎる筋肉質のガタイ。

不本意なほど、やたらと実年齢以上に見られるこの老け顔。

どう考えても、「可愛い」なんて言葉には似つかわしくない。

だから・・・

「どこが?」

思わず本気で聞き返すと、君は可愛く小首を傾げながら答えた。


「そうやって一生懸命ゆでたまごの殻をむいてる姿、でしょうか?何だか遊びに夢中になってる子どもみたいで可愛いなあって・・・。」

言いかけて、あっと口を塞ぐ君。

「可愛いなんて・・・失礼でした?」

しまったという顔をするから、慌てて否定する。

「ううん。そうじゃなくて・・・。」


可愛いなんて、言われたのは初めてで。

しかも、愛する彼女からそんなことを言われるなんて衝撃で。

素直に喜ぶべきなのか、それとも・・・。

どう反応したらいいのか分からなくて、戸惑って困ってしまう。


そんな俺を見て、彼女がまたくすりと笑う。

「そうやって困ってる姿も可愛いです。」


照れたように微笑む、その笑顔がまぶしくて息をのむ。

ほんのり染まった頬のピンクがあまりにも愛しくて胸が痛くなる。

視線のすべてが吸い寄せられてしまうほど・・・


そう、君こそ・・・。

誰より何より、可愛くてたまらない。

やっぱり、君が・・・一番可愛い。



そんな想いにとらわれて、

「最上さんのほうが、ずっとずっと可愛いよ。可愛くて、愛しくてならないよ。」

ついぽろりと本音がこぼれ出た。


「・・・え?」


流れる沈黙。

固まる君。

でも、その顔は耳まで見事に赤く染まっていて。


(ああ、たまごなんか、むいてる場合じゃないな。)



むきかけのたまごをキッチン台にそっと置き、俺は桜色に煌めく彼女の頬に、そっと掌を伸ばした。






fin

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