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続・ホワイトレディ ~ひとり占めさせて~ 前編

ホワイトレディ ~ひとり占めしたいのは?~」の続編です。


なんだか・・・いい匂いがする・・・
どこかで嗅いだ・・・この匂い・・・

ああ、そうだ。
これは敦賀さんの・・・・
(・・・敦賀さん?どうして敦賀さんの匂いが私のベッドでするの?)

深く沈んでいた意識がゆっくりと浮上をはじめ、頭の中が徐々に晴れていく。
重い瞼をどうにか開ければ、ぼんやりと霞みのように黒っぽい何かが見え、それが次第に色濃くはっきりとした形をとりはじめた
見えてきたのは、すっと通った鼻梁、引き締まった涼しげな口元、さらさらと艶やかな黒髪・・・。

(・・・黒・・・髪?)

疑問を抱えた耳元に、すうすうと規則正しい寝息が響く。
自分のモノとは明らかに違うその音。

(・・・え?)
思った瞬間、覚醒する意識とともに、ばらばらだった点と点がひとつに結ばれた

(ひいぃーーーーーっ!!敦賀さんーーーー!!!)

驚きすぎて、声も出ない。
衝撃に体がぶるぶると震える。
だって、すぐ目の前、ほとんど頬を触れんばかりの距離に、息をのむほど端正な横顔がすやすやと眠りについていたのだから。


* * *


昨夜、蓮はキョーコを連れて帰ると、すぐに彼女をゲストルームに寝かしつけた。
キョーコの顔色はそれほど悪くなく、急性アルコール中毒といった心配もなく、ただ深く眠り込んでいた。
蓮が抱き上げて、部屋へ連れて行っても、起きないほど深く。

(もともと、よっぽど疲れてたんだろうな。これは、朝まで起きないかも・・・。)

それでも目が覚めて気分が悪くなったときのことを考え、横向きに寝かしつける。
水とスポーツ飲料も用意し、蓮はベッドサイドに移動した椅子に腰かけた。
すやすやと心地よさげに眠る表情を間近にみているだけで、不思議と安らかな気持ちになる。
そうして飽きもせず寝顔を眺めているうちに、どうやら蓮は、自分もいつしかキョーコに寄り添うように眠ってしまっていたらしい。

*

(ど、ど、ど、ど、どうして・・・・つ、つ、つ、つ、つるがさんが・・・)

焦りながら周囲を見回し、キョーコはようやくここが自分の家でないことに気付いた。
見覚えのあるスタンドランプ、見覚えのあるベッドカバー、見覚えのある・・・

(つ、つるがさんのおうちのゲストルーム!?)

なぜここに?それにどうして敦賀さんが隣に?

疑問がぐるぐると頭を駆け巡り、衝撃に息を吸うことすらままならない。
けれど、動揺しながら下げた視線の、その先に伏せる寝顔がまるで絵画か彫刻のように美しくて・・・息を呑むほどあまりにも美しすぎて、そこで思考が止まった。
昨夜いったい何が起きたのか思い出すことも忘れ、キョーコの頭の中は今目の前に起きている現実でいっぱいになる。

間近にすればするほどよくわかる、神様さえ嫉妬するほどの美貌。
気品さえ漂う高い鼻筋も、吸い寄せられるほど艶やかで形のよい唇も。
閉じられた瞼を縁取る長い睫毛が、ときおり震える様子さえ・・・すべてが嘘みたいに完璧だった。

その美しさに、キョーコは吸いこまれるように惹きつけられて・・・。
つい、起こさないよう気をつけながら、パーツのひとつひとつまでもつぶさに観察してしまう。

(眠り姫・・・みたい・・・。)

ふと、幼いころ憧れていた、童話の中のお姫様を思い出す。
魔女たちの祝福を受け、世界中で一番美しく、優雅に、溢れる才能と、天使の心まで約束されたのに、悪い魔女の呪いで長い長い眠りにつくことになったお姫様。

―――そんなお姫様を目覚めさせることができたのは、たったひとりの王子様。そしてその王子様だけが、お姫様と結ばれる。

王子様のキスで目覚めたお姫様が、その人と結ばれるのはおとぎ話の常。
それが、お決まりのハッピーエンド。

(でも、このお姫様はきっと誰のものにもならない。)

だって、“敦賀蓮”だもの。
そう思って、はっと気付いた。

(“きょうこちゃん”。敦賀さんの想い人・・・。あの人だけは、ちがう・・・。)

思い至った途端、切なくて苦しくて、どうしようもできない気持ちが体中を締め付けた。

(敦賀さんは、あの人の・・・モノ。)

考えれば考えるほど、視界が歪んで、滲んで、霞んでくる。
胸の奥から重く澱んだものがこみあげて、全身が震えるほど寒くなった。

(イヤ・・・。イヤイヤイヤ!)

不意に思い知らされた。

(好き・・・なんだ。)

本当はずっとずっと前から心のどこかで気付いていた想いに。

(私・・・どうしようもないくらい敦賀さんのことが・・・好き・・・だ・・・。)


*


そんなキョーコの心の動きなどまるで気づいていないかのように蓮はすやすやと寝息を立てる。

(・・・少しだけ。)

認めてしまった瞬間から、どうしようもないほど溢れてきてしまった好きという気持ち。
その想いに突き動かされるように、キョーコはそうっと指先を目の前の唇に伸ばした。

(お姫様を起こすキスをする資格は・・・。)

ぷにゅんと触れた唇は、やわらかくてあたたかくて。
なぜかひどく胸が痛む。

(私のじゃ・・・ない。)

この唇も、その睫毛も。
穏やかな声も、幸せな匂いも、温もりも、吐息も、やさしさも。

(みんな、みんな、私じゃない誰かのモノ。)

苦しくて苦しくて、思わずぎゅっと目を閉じた・・・・・・そのとき、いきなりぐっと手を掴まれた。

ひゃうっ!

突然のことに息が詰まる。

「おはよう。お酒はもう残ってない?頭が痛かったり、気持ち悪かったりもしない?」

当たり前のような声で言われて、キョーコは弾けるように飛び起きた。

「だ、だ、だ、大丈夫ですっ!」

そのまま一気に逃げ出そうとしたけれど、手をしっかりと握られて逃げられない。

(どうしよう。どうしよう。どうしよう・・・。)

ただそのひと言がぐるぐると頭の中を回り続ける。

息の仕方が分からない。
背けた顔を戻せない。
逃げ出したい。
今すぐここから、逃げ出したい。

・・・けれど、できなかった。
キョーコの右手は蓮にがっしりと握られている。

「落ち着いて。一度ゆっくり深呼吸したら?そのままだと過呼吸になるよ。」

艶やかな声が耳元で響いた。

いつもどおりのやさしい声色に、おそるおそる視線を向ければ、蓮は寝乱れた前髪をさらりとかきあげ、ゆっくりと半身を起こすところだった。
そんな仕草のひとつにも、隠しようもない男の色香が零れ落ち、キョーコの胸が大きく跳ねる。

「いつのまにか、俺まで寝ちゃってたみたいだな。」

なぜか握られた手はそのままで、そこから伝わる温もりがキョーコの体を火照るほどに熱くする。

「ねえ、最上さん。」

急に名前をよばれ、逸らしていた視線をキョーコはつい合わせてしまった。
まっすぐ真摯にキョーコを見据える黒壇色の瞳。
その中に自分だけしか映っていない、ただそれだけの事実がキョーコの胸を昂らせ、煩いほどに心音を高鳴らせる。

「昨夜のこと覚えてる?」

(昨夜・・・?)

そう思った気持ちがそのまま顔に出たのだろう。
蓮はひどくがっかりした顔をしてみせた。

「やっぱり・・・覚えてないか。まあ、いいや。」


「あの・・・敦賀さん。それより手を・・・。」

握られた手のひらから、自覚したばかりの想いが全部伝わってしまいそうで、キョーコは必死の想いでそう言った。
けれど蓮は素知らぬふりで聞き流す。

「ん?なに?」

握った手にさっきよりももっと強く力を込めながら、小首を傾げながら、蓮はキョーコを覗きみた。
吐息の色も確かめられそうなほど、ますます近づくその距離に、キョーコの頭はカァーッと沸騰してしまう。

クスッ

真っ赤に染まったキョーコの顔を認め、嬉しそうに微笑むと、蓮は握っていたキョーコの手をそっと持ち上げ、その甲にやさしくキスをした。

「改めまして・・・・・・おめざめですか?お姫様?」

「お、お、お、お姫様は敦賀さんのほうです!」

蓮の行動に混乱が頂点に達し、キョーコは思わずそんな言葉を返してしまった。
きょとんとする蓮。

「俺が・・・お姫様?」

「だ、だ、だって、すごくキレイだったから。」

ゆでダコのように真っ赤な顔をしてどもりながら答えるキョーコを、目をぱちくりとさせながら蓮は見つめる。
それからふわりと、あらゆるものを虜にするほど眩しい笑顔を浮かべた。

「君のほうがキレイだよ。それに可愛い。」

「ば、ばかなことを!」

「・・・ちっともばかなことじゃない。少なくとも俺の目には君が世界中の誰よりもキレイで可愛くて素敵なお姫様に見えるもの。」

(たぶん俺だけじゃないだろうけど・・・)という言葉は心の奥に呑みこんだ。

「そんな君が、俺は愛しくて愛しくて大切でならない・・・。」

言いながら体を起こし、蓮はやさしくキョーコを抱き締めた。



「な、な、なにするんですか!からかわないでくださいっ!」


密着する体を両手で押し退けるように突っぱねると、キョーコは必死に体を離そうとした。






(後編に続く)

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