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どれほどの痛みを耐え凌げば、君への想いを許されるのだろう。
どれだけの想いを噛み締めれば、君の傍にいることを許されるのだろう。

答えが・・・どこにも見えない。

片手で頬杖をつき、視界の端で小さく揺れる『セツ』の背を見据える。
そんな俺に、たぶん君は気付いていない。
だから俺は、身動ぎもせず、瞬きもせず、ただじっと君を観察し続ける。
―――飢えきった視線で。


剥き出しの白い肩
しなやかな曲線を描く細い腰
脇腹に薄く見えるやわらかそうな贅肉
意外なほどまろやかな双丘
潔く曝け出された長い脚


無防備な肢体に、心の奥に潜むもう1人の俺が舌舐めずりを繰り返す。
そのたびに俺は、第二関節に力を込め、戒めるように顎をごりごりと擦った。
ただそれだけの行為を、鈍い痛みが走るほど繰り返して、ようやく平静が保てる。

けれどその俺も・・・君から視線を外すことはできない。


(ところで、君はそこで何をしているの?今日は戻らないんじゃなかったの?)

挑発的に揺らめく彼女の後姿を眺めながら、俺は音のない声で問いかける。
さっきから君は、俺の視線に気付きもせず何かに見入っている。
ああ、そうか。
君が見ているのは・・・アレだね。


帰らない君に業を煮やして、酒に逃げた俺が悪かったのか。
帰らないと聞いて、油断していたのか。
置き忘れた3つめのコンタクトケース。
黒い瞳のコンタクトが入ったソレを疑問に思う気持ちはよくわかる。

聡明で考え深くて人の心に敏感で、そのうえ俺のことには妙に勘の鋭い君のことだ。
もうずいぶん前から、俺が何かを隠し続けていることにも気づいていたんだろう?

それでも、懸命に知らないフリをして、笑顔でやり過ごしながら。
そのくせ遠回しに俺の内側を探ってくる。
たぶん・・・俺のためを思って。
でもそれが、パンドラの箱をこじ開けることなのだとは気付きもせず。


(・・・そんなに俺のことが知りたい?)


彼女の動きに呼応するように、もう1人の俺が蠢きはじめる。
じわじわと全身を侵食するそれは、抹殺したい過去なのか。それとも、目を背けたい本心なのか。


(そんなに知りたいのなら・・・今すぐ俺のすべてを教えてあげる。)


――深い闇の源を。
―――そこに渦巻く執着を。
――――決して溶けない熱欲を。


そして・・・、狂おしいまでの純愛を。


無防備すぎる、君がイケナイ。
パンドラの箱に手をかけた、君がイケナイ。

口実ならいくらでも思いつく。
視線の先の君の肢体が騒めきを熱くすればするほど。

無防備という言葉で片付けるには煽情的過ぎるその身体が・・・イケナイ。


そんな恰好でオトコの前をうろつくんだから、確かにその身を“守る”気はなさそうだ。
でも、そんな姿を見せつけるなんて。
俺からすれば、逆に手酷く攻撃されているようなものじゃないか。


君はいったい何を考えている?


そうやって、俺を翻弄して。
揺さぶって。
焦らして。
弄んで。


それがすべて与えられた『役』を演じきるためだとでも?
そんな戯言・・・もう、通用しない。


――目には目を
―――歯には歯を
――――攻撃には攻撃を


そして・・・君には俺のすべてを。


無意識だろうと関係ない。
この甘美な罠が君が仕掛けたものである限り。
俺はそれに無様に嵌ってみせよう。


君にその代償を支払わせるために。


ああ、でも悪いけど、仕掛けられた罠に素直に嵌る俺じゃない。
どうせなら君も道連れに何処までも堕ちていこう。
蜜糸のように甘く纏わりついて離れない桎梏を、その身体に課して。


安心して。
たとえ地獄の果てまで辿りつこうとも、俺は君を決して離しはしないから。
そして、後悔する暇さえ与えるつもりはないから。

どんなに君がもがき喘ごうとも。


ゲームを始めたのは君。
けれど終わらせるのは、きっと俺。



――――いや、違う。

終わらせたいなら全部ぶち壊してしまえばいい。
君ならできる。
君だけはできる。

この、俺ごと・・・すべてぶち壊せる。


・・・そうだね。

どれほど痛みを耐え凌んでも、
どれだけ想いを噛み締めても、
どうせ許されない想いならば、
それもいいかもしれない。


そうすれば君は、罠に堕ちることなく自由に羽ばたいていける。
この俺の緊く締め付ける腕から逃げ出すことができる。


ああ、そうだ。
それがいい。
そうすればいい。


ゲームを始めたのは君。
そして終わらせられるのも、きっと君。


―――― 君、だけ。





fin

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