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ACT.193 黒の息吹 続き妄想 (後編)

ネタバレ有りの身勝手妄想です。
ネタバレNGの方は、スルーしてくださいね。
宜しくお願いします。

※本ブログ開設時点で、コミックも発売済のため、限定扱いしていません。


くっくっくっ

唇を噛み締めたキョーコの耳許で、嘲笑に似た響きが低く畝った。
無防備な細腰に長い腕が回され、厚く引き締まった胸板にこれでもかというほど引き寄せられる。
重なり合った薄衣の向こうから、じわじわと伝わるヌルイ体温。
閉ざされた空間に、僅かな身動ぎが生み出す衣擦れの音と漏れ出る呼気だけが、軋むように鳴いていた。

「お前は俺だけを・・・感じて生きていけばいい。・・・・・・永遠に。」

再び紡がれた言葉に、背筋がぞくりと震えた。

(それは・・・いったい誰の言葉?)

期待とも恐れとも言い難い感情がキョーコを取り巻く。
その間も、しなやかな身体はキョーコを全力で強く熱く包み込んでいた。
盛り上がった肩の筋肉、鍛えられた厚い胸板、引き締まって割れた腹筋、すらりとそれでいて力強い腕。
全身に纏わりつくソレを、頭の中でひとつひとつ順番に確かめ・・・キョーコは、こくんと小さく息を呑んだ。


もし、この人がそれを望むなら。
私はきっと、持てる何もかもを捧げてしまうだろう。

この言葉が、捩れた感情の一片から生まれた戯れに過ぎないとしても。
きっと答えは同じ。

それなら、私がショータローに、
自分のためには、この人の優しさだって利用すると言い切ったように。
この人も、私を利用すればいい。
自分を・・・取り戻すために。

気の迷いでも。
捌け口でも。

それでも、べつに構わない。
だって、すべてを受け入れると私は決めたのだから。


(でも・・・、それでこの人は本当に救われるの?)



不意に身体が軽くなり、支柱を失ったキョーコは軽く蹌踉めいた。
見上げれば、誰とも知れぬ男は腹を抱えて笑っている。

それはそれは楽しそうに。
大きく身体を揺らしながら。

ふと、『空笑い』という二文字がキョーコの脳裏に浮かんだ。

その言葉を察したかのように、突然笑いが止む。
向き直った眸は相変わらず何処までも昏く、底知れぬ闇が満ち溢れていた。

―――虚空の深淵。


「本気にしたの?最上さん。俺が君に何かするとでも?
・・・そんなこと、するわけないだろう?」

訝るキョーコに、春の陽だまりを感じさせる優雅な笑みが向けられる。
それは、確かに見覚えのある“敦賀蓮”の微笑み。

(敦賀さん?これは・・・敦賀さんなの?)

けれど、眸に残る空虚な色は隠せない。

見落としてはいけない。
見失ってはいけない。

何処からか警鐘を鳴らす声が聞こえ、キョーコは瞬きもせず蓮を見つめる。

向けられた眸の奥に微かに去来するもの。
それは哀しみ?不安?恐怖?あるいは―――絶望?

「嘘つき。」

口を突いて出たキョーコの言葉に、蓮が明らかにたじろいだ。
それを認めるや、無意識に後退りする大きな身体に、キョーコの痩身がじりじりとにじり寄る。

「敦賀さんは、嘘つきです。」

そう口走った声が、まるで他人のモノのようにキョーコの耳にこだました。
一歩踏み出すごとに、霞み、歪む視界。
でも・・・

(泣いちゃいけない。)

感情を露出しないよう歯を食いしばり、さらに大きく一歩を踏み出した。

―――その瞬間。
見据えていた眸に、何かが反射してキラリと光った。


(・・・涙?)


何が起きているかよく理解できていなかった。
それなのに、
気がつけばキョーコは自らの意志で蓮の胸に飛び込み、引き締まった体躯を両手で力いっぱい抱き締めていた。
そのまま精一杯背伸びをして、抱きかかえるように蓮の頭を胸に引き寄せる。


私は何があっても貴方から離れない
貴方が誰であろうと。
貴方がどんな過去を抱えていようと。
私は絶対に離れない。

だから・・・。

「本当のことを話して下さい。」
壊れやすい貝殻のように整った耳に向かい、囁くようにそう告げる。

貴方がこれまでどんな道を歩んできたのだとしても、
この先どんな道を進むのだとしても、
私は貴方を追って、常夜の闇のその先までも、ひたすらに追い続ける。
たとえそれが・・・
そう、刹那な愚者の群れの中へ墜ちる道だとしても。

だから・・・。

「何があっても、ちゃんと受けとめますから。」

だから・・・。

「私を信じて下さい。」

―――私に、あなたの全てをください。


がくりと蓮の膝が崩れ落ちた。
引き摺られるように、キョーコも膝を落とす。
そして・・・。

闇に怯える子供のように震えはじめた蓮の身体を、キョーコは我が子を見守る母のように優しく強く抱き締め続けた。



・・・カチッ

何処かで微かに、時計の針が進む音が聞こえた。






Fin

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