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ACT.193 黒の息吹 続き妄想 (前編)

ネタバレ有りの身勝手妄想です。
ネタバレNGの方は、スルーしてくださいね。
宜しくお願いします。

※本ブログ開設時点で、コミックも発売済のため、限定扱いしていません。


投げ捨てられた携帯が、机の足にぶつかりカタンと音をたてる。

その乾いた音がキョーコの鼓膜に響いた次の瞬間、無防備な身体は冷たい壁に押し付けられていた。
両手首を纏めて掴まれ、頭上で押さえつけられれば、もう身動きはとれない。

「俺とお前、2人の世界にこんなもの必要ないだろう。」

一対の仄暗い眸がキョーコを捉える。
狂気を孕んだ刃のような眼差しは、光の破片すら届かぬ常闇の世界だけを見据えているように思えた。
眸色は、もがけばもがくほど深みに嵌るドロドロの底なし沼に似ていて・・・。
絶望という名の深淵に少しずつ沈みながら、身動きできぬほど絡め取られていく未来を予感させる。
その恐ろしさを悟りながら、キョーコは既に自分がどうにも抗えない力に魅入られてしまったのを感じていた。

囚われたのは“セツ”なのか。
それとも“最上キョーコ”自身なのか。

自分でもよくわからないまま、ただ目の前に浮かぶ漆黒の空洞を見つめ返した。
この上なく優雅で、あり得ないほど端正な顔立ちは、表情を失ってなお美しい。


カツンッ

思い出したようにキョーコが踠いた弾みで、押さえていた蓮の手首が壁に打ち付けられる。
壁に何かが当たる金属音とともに、澱んでいた気が大きく揺らいだ。

その音を合図に、キョーコの両手を張り付けるように押さえていた片腕が、するすると滑らかに落ちていく。
身体のラインを確かめるように、腕を擦り、肩を撫で、首筋を掠り、鎖骨を辿る・・・耽美な指先。
しなやかな動きになぞられるたび、キョーコの全身に甘やかな痺れが走る。
ぞわぞわと背筋を這い上るその感覚が示す意味を、しかしキョーコは理解していない。

不意に、空いていた大きな掌が赤みを帯びた頬に触れた。
硬直した身体がぶるりと揺れる。
その震えを感じ取ったのか、正面の顔が唇の端を歪めて不器用に笑った。

「逃げようとしても、無駄だから。」

逃げる気など・・・ない。
この人はどうしてそのことに気付かないのだろう。

俯いたキョーコの口許には乾いた笑いしか浮かばない。
愚の骨頂―――
そんな言葉が頭を過り、霞んで消えた。

(まるで、蟻地獄に自ら嵌る蟻みたいね・・・。)

自分が何を考えているのか、自分でもわからなかった。



素肌に触れる指先は凍りつくほど冷たいのに、なぜか触れられた痕は滾るような熱さを発する。

「にい・・・さん・・。」
“セツ”が、堪えきれず声をあげた。

その様子を冷たく見下げ、
「兄さん・・・か。ばかばかしい。」
男は吐き捨てるように言う。

頭の芯がすっと冷えた気がした。
張り詰めた静寂と重苦しいほどの緊張が、2つの身体の僅かな隙間をすり抜けていく。


カインでもない、BJでもない、ましてや敦賀さんでもない。
だとしたら、これは・・・いったい誰?


眸で問いかけるキョーコの首元に、男は引き込まれるように顔を埋めた。

「俺が・・・怖いか?」

そう喋る唇が、キョーコのうなじを探るように蠢く。
吐き出された吐息が、首筋を舐めるように滑り落ちた。


(・・・怖い?)
キョーコは黙って首を横に振る。
(怖いわけがない)


この人が誰であろうと、怖いだなんて思うはずがない。
この中に“敦賀さん”が在るならば―――。

この人が誰であるかなんて、そんなことどうでもいい。
この中に“敦賀さん”が在るならば―――。

私はただ、全力でこの人のすべてを受け入れよう。
そう・・・それが今、彼を守るために私ができる唯一のことだと思うから。





(続く)

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