『コトノハグサ』シリーズについて

「言の葉種(ことのはぐさ)」とは、和歌を示す言葉で、ほかに話のたねという意味もあります。
その言葉通り、こちらは古今集や万葉集などの和歌をモチーフに、1話完結(基本)のショートストーリーを綴ったシリーズです。

あくまでもモチーフなので歌の内容とは全く異なるストーリーになるかもしれませんが、お許しくださいませ。
また、元が元なので切ない雰囲気の作品が多い傾向にありますので、どうぞよろしくお願いします。

思ひつつぬればや人の…

「最上さん、君を愛してる。心の底から・・・君だけを・・・愛してるんだ。」
黒く濡れた瞳が、瞬きもせず私を見つめる。
紡がれる言葉に、息を・・・飲んだ。
目を逸らそうとしても、どうしても逸らすことができない。
これは夢だと思った。

私の身勝手な想いが見せた―――――ひどい夢だと思った。

夜昼といふわき知らず・・・

「思ひつつぬればや人の・・・ 」の蓮sideとなります。

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照れたようにはにかむ笑顔も。
花のように綻ぶ満開の笑顔も。
小さく口元を緩めるだけの微笑みも。
すべて俺だけのものにしたい。

唇を尖らせて子供のようにすねる顔も。
むうっと頬をふくらませて怒る顔も。
誰にも見られぬようひっそりと涙する顔も。
全部俺だけに向けてほしい。

どんな表情も、どんな感情もすべて・・・。

思はじと言ひてしものを…

今年いくつめかの台風が近づいているらしい。
みるみるうちに空が暗くなり、吹く風も次第に強さを増している。

そのとき、ひときわ強い風がサアーッと耳元を吹き抜け、短く切った髪が大きく乱れた。
風に遊ばれる髪で視界が遮られそうになり、慌てて髪を押さえる。
目の前に立つ人の演技を一瞬でも見逃したくなくて。

そう、瞬きする間さえも惜しいから。

月はただむかふばかりの…

「思はじと言ひてしものを・・・ 」の蓮sideです。

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赤信号で止まった車の窓から、ぼんやりと霞む月が見える。
薄く、水滴が滲んだような光の膜に包まれた小さな満月。

月に暈がかかると雨が降る。
そう教えてくれたのは誰だっただろう。

雨を降らす月・・・。
その言葉が何だか矛盾しているように感じて、思わずくすりと笑いが零れた。