★中編 蛍幻夜(完) の記事一覧

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蛍幻夜 (1)

※『蓮キョ☆メロキュン推進!ラブコラボ研究所』参加作品です。


「夏といえば・・・ホタル、かぁ・・・。」

手にしていた教科書をテーブルに置くと、キョーコはつぶやいた。
窓の外からは蝉の声がかすかに聞こえている。
けれども、この都会の真ん中にある事務所では、ホタルなんて当然影も形もない。

蛍幻夜 (2)

「ありがとー!!!キョーコちゃん!俺には君が救世主に見えるよぉ~。」

キョーコの到着が伝わるとすぐ、社がはずむ勢いでやってきた。
「キョーコちゃんがいてくれてほんとによかったぁ~。今まで、どうしようかって大騒ぎだったんだよ。ほら、明日から新ドラマの撮影がはじまるでしょ?蓮のスケジュール目一杯でさ。今日以外予定がとれなくてほとほと困ってたんだ。」

蛍幻夜 (3)

「今日はありがとう。ほんとに助かったよ。」

キョーコが各スタッフに挨拶を終え、撮影が無事スタートすると、社が小声で話しかけてきた。
「いえいえ、気になさらないでください。むしろ、私のような者がお二人のお役に立ててうれしいです。」
頭を下げだすキョーコを社はあわてて止める。

蛍幻夜 (4)

「どうぞこちらへ。」

男性に従い、蓮に続いて敷地内へと足を踏み入れたキョーコは、目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。

ゆらゆらと揺らめく篝火に照らされ、幻想的な趣を見せる日本庭園。
その中を縫うように続く石畳は、打ち水なのか夜露なのか、ほのかに濡れ、灯火を鈍く反射している。